抵抗に電流が流れる(電圧がかかる)と、温度が上昇します。
この温度上昇は抵抗の定格電力によっても変わりますし、同じ定格電力でもリード抵抗とチップ抵抗で変わります。
今回はこの「抵抗の温度上昇」について説明します。
『抵抗の温度上昇』と『温度上昇曲線』について
抵抗に電流が流れる(電圧がかかる)と、抵抗の表面温度が上昇します。
何℃上昇するかは抵抗のデータシートに記載されている温度上昇曲線で分かります。
温度上昇曲線とは横軸が定格電力比[%]で縦軸が(表面)温度上昇[℃]のグラフです。
定格電力比は、定格電力PRATEDに対する消費電力PLOSSを表しており、以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
定格電力比=\frac{消費電力P_{LOSS}}{定格電力P_{RATED}}[\%]
\end{eqnarray}
例えば、抵抗(R=1Ω、定格電力PRATED=10W)の温度上昇曲線が上図のようになっていると仮定します。この抵抗に2Vを印可した場合、抵抗の消費電力PLOSSは
\begin{eqnarray}
P_{LOSS}=\frac{2[V]^2}{1[{\Omega}]}=4[W]
\end{eqnarray}
となります。
したがって、定格電力比は
\begin{eqnarray}
P_{LOSS}=\frac{P_{LOSS}}{P_{RATED}}=\frac{4[W]}{10[W]}=40[\%]
\end{eqnarray}
となります。
この定格電力比を温度上昇曲線に照らし合わせると、抵抗の表面温度が80℃上昇することになります。
抵抗の周囲温度が25℃の場合は、抵抗の表面温度は
\begin{eqnarray}
25℃+80℃=105℃
\end{eqnarray}
となります。
抵抗がシャーシの中に入っていて、周囲温度が50℃になっている場合には、抵抗の表面温度は
\begin{eqnarray}
50℃+80℃=130℃
\end{eqnarray}
となります。
ポイント
抵抗の定格電力が大きいほど温度上昇が大きい
抵抗の定格電力や種類が異なると、温度上昇曲線が異なります。
定格電力が異なる抵抗の温度上昇曲線を上図に示します(イメージ図です)。
定格電力比が同じ場合、定格電力の大きい抵抗ほど温度上昇が大きくなります。
これは言い換えると、
- 定格電力の小さい抵抗
- 定格電力の大きい抵抗
ディレーティング(定格電力比)を取らなくても温度上昇しないため、設計においては定格電力を主に考慮し、温度上昇にはそこまで気を使わなくてもよい。
ディレーティング(定格電力比)を取らないと温度上昇するため、設計においては定格電力のほか、温度上昇も考慮する必要がある。また、温度上昇を考慮して、基板から抵抗を浮かす必要があるかないかを考慮する。
ということです。
定格電力の小さい抵抗の方が、温度上昇が小さい理由
定格電力の小さい抵抗と定格電力の大きい抵抗の定格電力比が同じ場合、定格電力の小さい抵抗の方が消費電力は小さくなります。
そのため、発熱しても、その熱が基板や空気に逃げていくため、温度上昇が小さくなります。
抵抗の近くに電解コンデンサなど熱に弱い部品を置く際には注意する
電解コンデンサには使用温度の上限(85℃、105℃)があります。
そのため、電解コンデンサのリードに抵抗をつないだり、電解コンデンサの近くに抵抗を配置する際には注意してください。
抵抗の温度上昇だけでなく、周囲の熱に弱い部品にも気を付けなければなりません。
抵抗の放熱方法
抵抗の温度上昇を抑える方法ついて紹介します。
チップ抵抗のみ
- チップ抵抗を実装するランドの大きさを大きくする。
- ランドに接続されているパターンの幅を広く、厚くする。
チップ抵抗&リード抵抗共通
- 実際の消費電力に対してディレーティングを考慮して抵抗を選定する。
- 放熱対策された抵抗を使う。