【バイポーラトランジスタ】コレクタ遮断電流とは

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バイポーラトランジスタのデータシートにはコレクタ遮断電流が記載されています。
このコレクタ遮断電流について説明します。

コレクタ遮断電流とは

コレクタ遮断電流とは
バイポーラトランジスタにはNPN型とPNP型があります。

どちらの型においても、PN接合に逆方向電圧を印可(N型半導体にプラス、P型半導体にマイナス)すると、わずかに電流が流れます。この漏れ電流のことをコレクタ遮断電流と呼びます。

英語では『Collector Cut-off Current』と呼ばれています。

ちなみに、ダイオードでは、この電流のことを漏れ電流とかドリフト電流などと言います。

コレクタ遮断電流の種類

コレクタ遮断電流の種類
コレクタ遮断電流には2つの種類があります。

  • (ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBO
  • (エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEO

です。

データシートには『(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBO』と『(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEO』の一方が記載されていることが多いです。

ネットや参考書等では、コレクタ遮断電流としか書かれていない場合があります。この場合、一般的には『(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBO』を指していることが多いです。

(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBO

(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBO
(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBOとは、エミッタをオープンにして、コレクターベース間のPN接合に逆電圧を印可した時の漏れ電流です。

  • NPNトランジスタでは、コレクタをプラス、ベースをマイナスに印可します。
  • PNPトランジスタでは、コレクタをマイナス、ベースをプラスに印可します。

コレクターベース間には、データシート上のベースーコレクタ最大定格VCBOを印可するのが一般的です。詳しくはデータシートの測定条件の欄にコレクターベース間の印可電圧が記載されています。

コレクタ遮断電流ICBOの最大値が回路上で問題となるため、データシートには最大値のみが記載されています。

コレクタ遮断電流ICBOは漏れ電流なので、小さければ小さいほど特性の良いトランジスタとなります。

(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBOコレクターベース間遮断電流とも呼ばれています。

コレクタ電流ICはベース電流IBと直流電流増幅率hFEで決まりますが、厳密にはこのコレクタ遮断電流ICBOが追加されたものとなります。式で表すとコレクタ電流ICは以下になります。
\begin{eqnarray}
I_{C}=h_{FE}I_B+(1+h_{FE})I_{CBO}
\end{eqnarray}
(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBOとコレクタ電流

ポイント

ICBOの下文字のCBOよりコレクタ(C)からベース(B)に流れる電流がICBOなので、PNPトランジスタの場合はベース(B)からコレクタ(C)に電流が流れるためIBCOでは?と思うかもしれませんが違います。
コレクタとベースのPN接合に対して、逆方向電圧を印可した時に流れる電流をICBOと定義しています。そのため、PNPトランジスタの場合はベース(B)からコレクタ(C)に電流が流れていますが、記号はICBOとなります。

(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEO

(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEO
(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEOとは、ベースをオープンにして、以下の電圧を印可した時に流れる漏れ電流です。

  • NPNトランジスタでは、コレクタをプラス、エミッタをマイナスに印可します。
  • PNPトランジスタでは、コレクタをマイナス、エミッタをプラスに印可します。

(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBOと同様にデータシートには最大値のみが記載されています。

こちらも、漏れ電流なので、小さければ小さいほど特性の良いトランジスタとなります。

(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEOコレクターエミッタ間遮断電流とも呼ばれます。

ICEOはコレクタ電流IC―コレクタエミッタ間電圧VCE特性では以下の領域を指します。
(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEOの特性

『(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBO』と『(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEO』の関係

『(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBO』と『(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEO』の関係
(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBOがベース電流となり、増幅されたものが(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEOになります。式で表すと、
\begin{eqnarray}
I_{CEO}=(1+h_{FE})I_{CBO}
\end{eqnarray}

となります。 
同性能のバイポーラトランジスタのデータシートを横並びにすると、『(エミッタ接地の)コレクタ遮断電流ICEO』が『(ベース接地の)コレクタ遮断電流ICBO』の100倍~1000倍程度となっているので確認してみてください。

コレクタ遮断電流の温度特性

コレクタ遮断電流ICBOの温度特性はダイオードに逆電圧を印可した時の特性と同じです(バイポーラトランジスタもダイオードも同じPN接合で構成されているので)。

温度に対して指数関数的に増加します。そのため、高温化や温度変化が大きい場所で使用する際には注意が必要になります。

  • ゲルマニウムを含むトランジスタの場合
  • 温度が10倍になると、ICBOは約2倍になります。

  • シリコンを含むトランジスタの場合
  • 温度が6倍になると、ICBOは約2倍になります。

ゲルマニウムを含むトランジスタを一例として考えてみます。
25℃の場合、ICBO=5uAとすると、35℃では
\begin{eqnarray}
I_{CBO}=5uA×2=10uA
\end{eqnarray}
45℃では
\begin{eqnarray}
I_{CBO}=10uA×2=20uA
\end{eqnarray}
となります。

このように、温度が増加するとICBOの影響が大きくなるので注意してください。

【補足】コレクタ遮断電流ICESというものもある

コレクタ遮断電流ICESとはベースとエミッタを短絡(Short)させて、コレクターエミッタ間に電圧をかけた時に流れる漏れ電流のことです。
データシートで見かけることは稀だと思われます。

コレクタ遮断電流ICBOの値

『コレクタ遮断電流』の値
コレクタ遮断電流ICBOはバイポーラトランジスタによって変わります。データシートを確認してください。

上図は東芝製バイポーラトランジスタ(2SC1815)の電気的特性です。赤色の箇所がコレクタ遮断電流ICBOとなっています。コレクタベース間電圧VCB=60Vの時におけるコレクタ遮断電流ICBOが記載されており、最大0.1μAとなっています。

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