この記事では『フォトカプラの安全規格』について
- 安全規格で要求されている各項目(沿面距離や空間距離)
- フォトカプラの部品単体に関する規格について
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
フォトカプラの安全規格
フォトカプラは発光素子(LED)と受光素子(フォトトランジスタ)で構成されており、発光素子が発する光信号を受光素子が受け取ることで、受光素子が導通する素子です。スイッチング電源では1次側と2次側の信号伝達を目的としてフォトカプラが使用されています。
このフォトカプラは発光素子側と受光素子側で電気的な繋がりはありません。つまり、絶縁した状態となっています。
そのため、フォトカプラには絶縁に関与する部分に関しては安全規格面で色々な規制があり、下記の項目が要求されています。
フォトカプラの安全規格
- 沿面距離、空間距離、絶縁物厚を満たしたパッケージ形状
- 絶縁耐圧
次に安全規格で要求されている各項目の要点を説明します。詳細についてはフォトカプラメーカーのデータシートやアプリケーションシート等を参考にしてください。
沿面距離
沿面距離は絶縁物(パッケージ)に沿った2つの導体間(1次-2次間)の最短距離です。
フォトカプラのパッケージに用いられている材料のCTI値(材料グループによって決まる値)、汚損度、導体間(1次-2次間)に印加される電圧により必要な沿面距離が決まります。
一例として、下記表に「材料グループIIIa、汚損度2」における沿面距離を示しています。
導体間に印加される電圧[Vrms] | 基礎絶縁[mm] | 強化絶縁[mm] |
100 | 1.4 | 2.8 |
125 | 1.5 | 3.0 |
160 | 1.6 | 3.2 |
200 | 2.0 | 4.0 |
250 | 2.5 | 5.0 |
320 | 3.2 | 6.4 |
沿面距離、CTI値、汚損度については下記の記事で詳しく説明していますのでご参考にしてください。
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補足
沿面距離は英語では『Creepage Distance』と書きます。
空間距離
空間距離は空気中での2つの導体間(1次-2次間)の最短距離です。
商用電源の交流電圧の値、過電圧カテゴリ、汚損度、導体間(1次-2次間)に印加される電圧等により、空間距離が決まります。また、気圧が低いほど放電しやすいため、高度が2000mを超える箇所で使用する場合、さらに必要となる沿面距離が増えます。
空間距離、過電圧カテゴリについては下記の記事で詳しく説明していますのでご参考にしてください。
補足
空間距離は英語では『Air Clearance』と書きます。
絶縁物厚
絶縁物厚は2つの導体間(1次‐2次間)に存在する絶縁物の最小厚みです。
例えば、IEC62368-1に適合する場合、機能絶縁や基礎絶縁に関しては、絶縁物厚の要求はありませんが、付加絶縁や強化絶縁に関しては、絶縁物厚が0.4mm必要となります。
補足
絶縁物厚は英語では『Insulation Thickness』と書きます。
絶縁耐圧
絶縁耐圧は2つの導体間(1次‐2次間)の絶縁電圧です。
AC50Hzまたは60Hzの正弦波、またはピーク値に等しい直流電圧で試験して、絶縁破壊がないことを確認します。試験電圧は絶縁の種類(基礎絶縁or空間絶縁)と動作電圧により決定されます。
フォトカプラの部品単体の規格
フォトカプラの部品単体に関する規格もあります。
規格としてはUL1577とEN60747-5-5(IEC60747-5-5)などがありますが、これらの規格は『導体間(1次-2次間)の絶縁性能を測る試験方法』と『判定基準』が異なります。
フォトカプラの部品単体の規格
- UL1577
- EN60747-5-5(IEC60747-5-5)
絶縁耐圧試験法を用います。
絶縁耐圧試験法は高電圧印可時の絶縁破壊の有無により判定を行う試験です。通常は1分間、50Hzまたは60Hzの正弦波電圧に対する入出力間の絶縁耐量の規定があります。
絶縁耐圧試験法は英語では『Dielectric Strength Test』と書きます。
部分放電放電法を用います。
部分放電試験法は部分コロナ放電による発生電荷が5pC以下であることで絶縁性能を判定する試験です。
部分放電放電法は英語では『Partial Discharge Test』と書きます。
本記事のまとめ
この記事では『フォトカプラの安全規格』について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- 安全規格で要求されている各項目(沿面距離や空間距離)
- フォトカプラの部品単体に関する規格について
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