『CTI(比較トラッキング指数)』とは?PTIとの違いや材料グループとの関係について

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CTIとは絶縁物のトラッキングの起こりにくさ(耐トラッキング性)を示す指標であり、沿面距離を決定する重要な要素の1つとなってます。

この記事では、CTIの基本的な内容をまず説明した後に、CTIの測定方法材料グループとPLCの関係PTIとの違いについて説明します。

CTIとは?

CTIとは比較トラッキング指数(Comparative Tracking Index)の略称であり、絶縁物のトラッキングの起こりにくさ(耐トラッキング性)を示す指標です。CTI値は、耐トラッキング試験によって決まります。

後ほど詳しく説明しますが、絶縁物の表面に電圧を印加した状態で、塩化アンモニウムの0.1%溶液を30秒毎に1滴滴下し、50滴滴下してもトラッキングの起きない最大電圧がCTI値となります。例えば、絶縁物の表面に400V印加した状態で、塩化アンモニウムの0.1%溶液を50滴滴下してもトラッキングが生じず、425Vではトラッキングが生じた場合、CTI値は400となります(この試験が耐トラッキング試験です)。

CTI値は100から600までの値があり、CTI値が大きいほどトラッキング現象を起こしにくい絶縁物ということになります。

補足

  • CTI値は沿面距離を決定する重要な要素の1つとなっています(沿面距離はCTI値と汚染度によって決まります)。
  • トラッキングとは、絶縁材料表面の電位差にある部分に炭化導電路(トラック)が形成され、絶縁材料が絶縁性を失う現象です。

CTIを求める耐トラッキング試験

CTIを求める耐トラッキング試験
耐トラッキング試験は以下のように行います。

耐トラッキング試験

  1. 5個の試験片(絶縁物)を用意します。
  2. 各試験片(絶縁物)表面の白金電極間に電圧を印加します。印加する電圧は、100V~600Vの範囲で、25V間隔となっています。
  3. 電圧を印加した状態で、電極間に塩化アンモニウムの0.1%溶液を一定間隔(通常は、30秒毎)に1滴滴下します。
  4. 50滴滴下しても5個の試験片(絶縁物)の全てがトラッキングの起きない最大電圧CTI値となります。

例えば、5個の試験片(絶縁物)の表面に400V印加した状態で、塩化アンモニウムの0.1%溶液を50滴滴下しても、5個の試験片(絶縁物)の全てでトラッキングが生じず、425Vでは5個の試験片(絶縁物)のいずれかに、トラッキングが生じてしまった場合、「CTI 400」となります。

また、100滴滴下しても5個の試験片(絶縁物)の全てがトラッキングの起きない最大電圧も求めます。50滴滴下した場合の最高電圧が400Vで、100滴滴下した場合の最高電圧が350Vの場合、「CTI 400(350)」となります。

ちなみに、耐トラッキング試験装置の外観は以下のような感じになっています。
耐トラッキング試験

補足

  • 電極材質に白金を用いているのは、銅や黄銅の電極の場合に比べて試験時における電極の溶出による影響や測定値のバラツキを小さくするためです。
  • 耐トラッキング性の評価方法は、IEC60112及びJIS C 2134(固体絶縁材料の保証及び比較トラッキング指数の測定方法)によって定められています。JIS C 2134はIEC60112の技術的内容を変更せずに作成された日本工業規格のことです。
  • 耐トラッキング試験の試験片で有名なのは「コンセントに挿すプラグ」の材料です。コンセントとコンセントに挿すプラグ間に溜まったホコリがどの程度の電圧でトラッキング破壊・発火・発煙が生じるのかを測定します。コンセントにさすプラグについては「CTI 400」が要求されています。

CTIと材料グループとPLCの関係

CTIと材料グループとPLCの関係
CTI値は沿面距離に影響する要因の1つとなっていますが、沿面距離を定める規格ではCTI値を用いるのではなく、以下のような材料グループを用いて規定されています。また、CTI値の程度を示すために、UL規格では6段階のクラス(PLC: Performance Level Category)に分類しています。

補足

この材料グループはIEC 60664-1(CTI値による成形材料の区分)によって決まっています。

CTIとPTIの違い

耐トラッキング性を示す指標として、CTIのほかにPTIがあります。

PTIとは保証トラッキング指数(Proof Tracking Index)の略称であり、絶縁物の表面に電圧を印加した状態で、塩化アンモニウムの0.1%溶液を30秒毎に1滴滴下し、50滴滴下してもトラッキングの起きない保証電圧がPTI値となります。

先ほど説明した「耐トラッキング試験」において、単一の指定された電圧で行います。よく選定される試験電圧は175V,250V,300V,375V,500Vとなっています。PTIの測定もCTIと同様に5個の試験片で行うのが一般的です。

例えば、絶縁物の表面に250V印加した状態で、塩化アンモニウムの0.1%溶液を50滴滴下してもトラッキングが生じず、300Vではトラッキングが生じた場合、その結果を「PTI 250 合格、PTI 300 不合格」のように表示します。

補足

  • CTIは材料の基本的特性およびその比較に使用され、PTIは製品の受け入れの基準として使用されています。
  • PTIを求める「耐トラッキング試験」では、試験電圧が選定されているため、必ずしも最高電圧になるわけではありません。

まとめ

この記事ではCTIについて、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • CTIとは絶縁物のトラッキングの起こりにくさ(耐トラッキング性)を示す指標のこと
  • CTIを求める耐トラッキング試験
  • CTIと材料グループとPLCの関係
  • CTIとPTIの違い

お読み頂きありがとうございました。

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