この記事では抵抗のデータシートに記載されている
- 定格電圧
- 最高使用電圧
- 過負荷電圧
- 最高過負荷電圧
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
『定格電圧』と『最高使用電圧』の違い
抵抗のデータシートを見ると、上図のように定格電力(Power Rating)、最高使用電圧(Maximum Working Voltage)、抵抗値範囲(Resistance Range)が記載されています。
抵抗の定格電圧[V]は抵抗に連続して印加することができる直流電圧または交流電圧(実効値)の最大値です。
定格電圧[V]は定格電力[W]と抵抗値[Ω]を用いて算出することができ、以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
定格電圧{\mathrm{[V]}}=\sqrt{定格電力{\mathrm{[W]}}×抵抗値{\mathrm{[{\Omega}]}}}
\end{eqnarray}
上式より、抵抗値[Ω]が大きいほど、定格電圧[V]も大きくなります。抵抗値[Ω]と定格電圧[V]の関係を図で表したのが、下図の青線となります。
上図を見ると、ある値を境に定格電圧が一定になっていることが分かります。この一定になっている電圧を最高使用電圧といいます。
抵抗の抵抗値[Ω]が大きいと、抵抗に連続して印可することができる電圧が大きくなります。抵抗に印加する電圧が大きいと、抵抗の電極間でショートしたり、抵抗が電圧に耐えることができず、絶縁破壊してしまうことがあります。そのため、抵抗には連続して印可することができる電圧の上限値(最高使用電圧)が決められています。
また、定格電圧と最高使用電圧が等しくなるときの抵抗値のことを、臨界抵抗値といいます。抵抗の抵抗値が臨界抵抗値より小さい場合は定格電圧まで電圧を連続して印可することができ、抵抗の抵抗値が臨界抵抗値より大きい場合は最高使用電圧まで電圧を連続して印可することができます。
また、先ほど示したデータシートでは、臨界抵抗値は以下の式で表すことができます。
\begin{eqnarray}
臨界抵抗値{\mathrm{[{\Omega}]}}=\frac{最高使用電圧{\mathrm{[V]}}^2}{定格電力{\mathrm{[W]}}}=\frac{300^2}{0.25}=360{\mathrm{[k{\Omega}]}}
\end{eqnarray}
『過負荷電圧』と『最高過負荷電圧』とは
定格電力(Power Rating)や最高使用電圧(Maximum Working Voltage)以外にもデータシートを見ると、最高過負荷電圧(Maximum Overload Voltage)が記載されています。
抵抗の過負荷電圧は短時間過負荷試験(JIS C 5201-1 4.13)において、5秒間印可可能な電圧の最大値のことです。通常、短時間過負荷試験での印可電圧は定格電圧の2.5倍であり、最高過負荷電圧を超えない電圧を印可します。抵抗の過負荷電圧と定格電圧の関係を式で表すと次式となります。
\begin{eqnarray}
過負荷電圧{\mathrm{[V]}}=定格電圧{\mathrm{[V]}}×2.5
\end{eqnarray}
また、過負荷電圧[V]と最高過負荷電圧[V]の関係を図で表したのが、下図の赤線となります。
過負荷電圧と最高過負荷電圧が等しくなるときの抵抗値のことも臨界抵抗値といいます。抵抗値が臨界抵抗値より小さい場合は過負荷電圧まで電圧を印可することができ、抵抗値が臨界抵抗値より大きい場合は最高過負荷電圧まで電圧を印可することができます。
また、先ほど示したデータシートでは、過負荷電圧における臨界抵抗値は以下の式で表すことができます。
\begin{eqnarray}
臨界抵抗値{\mathrm{[{\Omega}]}}=\frac{\left(\displaystyle\frac{最高過負荷電圧{\mathrm{[V]}}}{2.5}\right)^2}{定格電力{\mathrm{[W]}}}=\frac{\left(\displaystyle\frac{600}{2.5}\right)^2}{0.25}=230.4{\mathrm{[k{\Omega}]}}
\end{eqnarray}
補足
- シャント抵抗等の抵抗値が低いものは、定格電力から求めることができる定格電圧がそもそも低いため、最高使用電圧や最高過負荷電圧の記載がない場合があります。
まとめ
この記事では、抵抗に関して以下の内容を説明しました。
- 定格電圧
- 最高使用電圧
- 過負荷電圧
- 最高過負荷電圧
お読み頂きありがとうございました。
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