この記事ではツェナーダイオードの温度特性について説明します。
ツェナーダイオードの温度特性
ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)のツェナー電圧は温度によって変化します。
温度特性で特徴的なのはツェナー電圧の大きさによって、正の温度係数を持つツェナーダイオードもあれば負の温度係数を持つツェナーダイオードもあることです。
具体的には、ツェナー電圧が5V付近を境界とし、5V付近よりもツェナー電圧が高いものは正の温度係数を持つため、温度が上昇するとツェナー電圧が増加します。一方、5V付近よりもツェナー電圧が低いものは負の温度係数を持つため、温度が上昇するとツェナー電圧が減少します。
また、ツェナー電圧が5V付近のツェナーダイオードは正の温度係数と負の温度係数がお互いに打ち消し合うため、温度変化が小さくなります。
5V付近を境界として温度係数の正負が切り替わる理由は、ツェナーダイオードはトンネル効果とアバランシェ効果で機能する素子だからです。
アバランシェ効果は正の温度係数を持っており、トンネル効果は負の温度係数を持っています。そのため、5V付近よりもツェナー電圧が高いものはアバランシェ効果が支配的となるので正の温度係数になり、5V付近よりもツェナー電圧が低いものはトンネル効果が支配的となるので負の温度係数となります。
補足
ツェナーダイオードの温度補償について
ツェナー電圧が5Vを超えるツェナーダイオードは正の温度係数を持っています。そのため、温度補償をするためには負の温度係数を持つ素子を直列に接続する必要があります。
一般的なダイオードの順方向電圧やトランジスタのベースエミッタ間電圧は約0.6~0.7Vとなっており、負の温度係数(約-2.5mV/℃)を持っています。
したがって、正の温度係数を持つツェナーダイオードに負の温度特性を持ったダイオードを直列に接続することで、温度係数を打ち消すことができます。
ダイオード1つで温度係数を打ち消すことができない場合には、直列接続するダイオードの数を増やします。この際、直列接続したダイオード1個により約0.6~0.7V電圧が上がるのを考慮する必要があります。例えば、8.2Vのツェナーダイオードに3つダイオードを接続した場合、8.2V+0.6V×3=10Vとなり、約10Vとなります。また、温度特性を良くするために、温度係数が小さいツェナー電圧が5V付近のツェナーダイオードを直列に接続するのも良く用いられる方法です。
まとめ
この記事ではツェナーダイオードの温度特性について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- ツェナー電圧が5V付近よりもツェナー電圧が高いものは正の温度係数を持つため、温度が上昇するとツェナー電圧が増加する。
- ツェナー電圧が5V付近よりもツェナー電圧が低いものは負の温度係数を持つため、温度が上昇するとツェナー電圧が減少する。
- ツェナーダイオードの温度補償について
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