ツェナーダイオードの『許容損失』について!

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この記事ではツェナーダイオードの『許容損失』について

  • ツェナーダイオードの『許容損失』とは
  • 許容損失の『Pd-Ta特性(電力軽減曲線)』

などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。

ツェナーダイオードの『許容損失』

ツェナーダイオードの『許容損失』

ツェナーダイオードの許容損失Pdは、『接合部温度Tjが絶対最大定格に達する時の消費電力』です。許容損失の記号はデータシートにより異なりますが、『Pd』や『PT』や『Ptot』や『P』で表されることが多いです。

データシート上に記載されている許容損失Pdは『周囲温度Ta=25℃』を基準にしています。そのため、接合部温度Tjが『25℃』から『接合部温度Tjの絶対最大定格Tj(MAX)』に達するときの消費電力がデータシート上に記載されている許容損失Pdとなります。許容損失Pdは熱抵抗Rth(j-c)を用いると、次式で表されます。

許容損失の理論式

\begin{eqnarray}
P_{d}=\frac{T_{j(MAX)}-T_a}{R_{th(j-c)}}=\frac{T_{j(MAX)}-25}{R_{th(j-c)}}\tag{1}
\end{eqnarray}

上図に示しているデータシートはローム製ツェナーダイオードUDZVシリーズの絶対最大定格です。データシートを見ると、許容損失Pdが200mWであることが確認できます(データシート上では許容損失の記号が'P'になっています)。

また、データシートより許容損失Pd、接合部温度Tj、周囲温度Taが分かるので、(1)式より、熱抵抗Rth(j-c)を求めることもできます。熱抵抗Rth(j-c)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
R_{th(j-c)}=\frac{T_{j(MAX)}-T_a}{P_{d}}=\frac{150{\mathrm{[{^{\circ}C}]}}-25{\mathrm{[{^{\circ}C}]}}}{200{\mathrm{[mW]}}}=0.625{\mathrm{[{^{\circ}C}/mW]}}\tag{2}
\end{eqnarray}

補足

  • 許容損失は英語では『Power Dissipation』や『Total Power Dissipation』と書きます。
  • チップ部品の場合、実装基板により許容損失が異なりますので注意してください。

あわせて読みたい

絶対最大定格』については下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。

許容損失の『Pd-Ta特性(電力軽減曲線)』

許容損失の『Pd-Ta特性(電力軽減曲線)』

データシート上に記載されている許容損失Pdは『周囲温度Ta=25℃』を基準にしているため、Ta=25℃よりも温度が高い場合は、許容損失Pdが低下します。データシートにはそれを示す『Pd-Ta特性(電力軽減曲線)』が記載されています。

上図に示しているのはローム製ツェナーダイオードUDZVシリーズの『Pd-Ta特性(電力軽減曲線)』です。周囲温度Taが25℃の時の許容損失Pdは200mWですが、周囲温度Taが25℃よりも高くなると、許容損失Pdが低下していることが確認できます。

例えば、周囲温度Taが125℃の場合には、許容損失Pdが40mWになってしまいます。そのため、周囲温度Taに応じて許容損失Pdを軽減する必要があります。

なお、(1)式でも各周囲温度により許容損失Pdを求めることが可能です。周囲温度Ta=125℃を(1)式に代入すると、

\begin{eqnarray}
P_{d}=\frac{T_{j(MAX)}-T_a}{R_{th(j-c)}}=\frac{150{\mathrm{[{^{\circ}C}]}}-125{\mathrm{[{^{\circ}C}]}}}{0.625{\mathrm{[{^{\circ}C}/mW]}}}=40{\mathrm{[mW]}}\tag{3}
\end{eqnarray}

となり、『Pd-Ta特性(電力軽減曲線)』での値と一致することが分かります。

まとめ

この記事ではツェナーダイオードの『許容損失』について、以下の内容を説明しました。

  • ツェナーダイオードの『許容損失』とは
  • 許容損失の『Pd-Ta特性(電力軽減曲線)』

お読み頂きありがとうございました。

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