ツェナーダイオードの逆電流とは、ツェナーダイオードに逆電圧を印加した際に微小に流れてしまう電流のことです。
この記事では、この『逆電流』について
- ツェナーダイオードの逆電流の特徴
- データシート上に逆電流がどのように記載されているか
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
ツェナーダイオードの逆電流(漏れ電流、リーク電流)
上図にツェナーダイオードの「電流-電圧特性」を示します。「電流-電圧特性」は横軸がツェナーダイオードにかかる電圧、縦軸がツェナーダイオードに流れる電流の特性です。
ツェナーダイオードに印加する逆電圧(カソードをプラス、アノードをマイナスに印可した時の電圧)を徐々に上げていくと、降伏現象が生じ、ある点で急激に電流が流れ始めます。この電流が急激に流れ始める時の電圧をツェナー電圧(降伏電圧)VZといいます。また、降伏現象が生じた後に流れている電流をツェナー電流IZといいます。
逆電圧がツェナー電圧VZに達するまでは、ツェナーダイオードに電流が流れていないのが理想ですが、厳密には少しだけ流れています。この電流を逆電流といいます。
補足
- 逆電流は逆方向電流や漏れ電流(リーク電流)とも呼ばれています。
- 逆電流は英語では「Reverse leakage current」や「Reverse current」と書きます。
- 逆電流の記号ではIRで表します。逆を意味するリバース(Reverse)の頭文字のRからIRとなっています。
- 逆電流IRは本来流れてほしくない電流なので、小さければ小さいほど特性の良いツェナーダイオードとなります。
データシート上にツェナーダイオードの逆電流がどのように記載されているか
上図にルネサス製ツェナーダイオードHZ6B2のデータシートを記載しています。上図の緑色の箇所にツェナーダイオードの逆電流が記載されています。
データシート上の見た目は各メーカーによって異なりますが、上記に示しているデータシートの場合、
- 逆電流IR:5uA(Max)
- 測定条件:VR = 2V
と規定されています。これは、ツェナーダイオードに逆電圧VRを2.0V印加した場合、最大でも5uAしか流れませんよ!ということを示します。なお、最小(Min)はデータシート上には記載されていないため、逆電流の最小値はメーカーでは保障していないことになります。
加えて、上表においてオレンジ色の箇所を見ると、ツェナー電流IZが5mAの条件の時、ツェナー電圧VZは最小値(Min)が5.6Vで最大値(Max)が5.9Vということも分かります。これは、ツェナー電流IZが5mAの時にはツェナー電圧VZは5.6V~5.9Vの範囲内になることを示しています。
また、データシート上には「横軸:ツェナー電圧VZ、縦軸:ツェナー電流IZの特性(VZ-IZ特性)」が記載されていることがあります。上図に「HZ6B2」のVZ-IZ特性を示します。
このVZ-IZ特性を見ると、電流が5uAの時に電圧が4.0Vとなり先ほどの表と値と一致していないことも確認できます。矛盾してると思われるかもしれませんが、先ほどの表はVRが2Vの時に、逆電流は最大でも5uAまでしか流れないということです。このVZ-IZ特性はあくまでツェナーダイオードの特性を示したものとなりますので、表の値と差が生じています。
補足
- データシートには通常、MAX,TYP.,MINの3種類の値が記載されています。MAX,TYP.,MINの記載がない場合には、各値がどのくらいになるかをメーカーが保障していないということを意味します。
まとめ
この記事ではツェナーダイオードの『逆電流(漏れ電流、リーク電流)』について、以下の内容を説明しました。
- ツェナーダイオードの逆電流の特徴
- データシート上に逆電流がどのように記載されているか
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