『全波整流波』の実効値・平均値・波形率・波高率の求め方

スポンサーリンク

この記事では『全波整流波』について

  • 実効値・平均値・波形率・波高率の求め方

などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。

全波整流波の実効値・平均値・波形率・波高率

全波整流波の実効値・平均値・波形率・波高率

最初に全波整流波(最大値\(V_M\)、周期\(T\))の実効値・平均値・波形率・波高率を上図に示します。

これから各値がどのように求まるのかを説明します(できるだけ途中式を多くするよう心がけています)。

全波整流波とは

全波整流波とは正弦波において1周期の半分が反転している波形です。上図では「\(\displaystyle \frac{T}{2} \leq t \lt T\)」の領域で正弦波が反転しています。

そのため、最初に「正弦波の実効値・平均値・波形率・波高率の求め方」を理解すると、「全波整流波の実効値・平均値・波形率・波高率の求め方」が分かりやすくなると思います。

正弦波の実効値・平均値・波形率・波高率の求め方』については下記の記事で詳しく説明しています。

全波整流波の波形式

全波整流波の波形式

全波整流波の実効値・平均値を求めるためには、最初に全波整流波を式で表す必要があります。

全波整流波は赤色の線の領域\(\left(0 \leq t \lt \displaystyle \frac{T}{2}\right)\)青色の線の領域\(\left(\displaystyle \frac{T}{2} \leq t \lt T\right)\)で式が異なります。

赤色の線青色の線の式を求めます。

赤色の線

「\(0 \leq t \lt \displaystyle \frac{T}{2}\)」の領域が赤色の線の領域です。

赤色の線は、\(V_M\sin{{\omega}t}\)の波形の一部です。

そのため、赤色の線は以下の式で表すことができます。

\begin{eqnarray}
v(t)=V_M\sin{{\omega}t}
\end{eqnarray}

青色の線

「\(\displaystyle \frac{T}{2} \leq t \lt T\)」の領域が青色の線の領域です。

青色の線は、\(V_M\sin{{\omega}t}\)を反転した波形です。

そのため、青色の線は以下の式で表すことができます。

\begin{eqnarray}
v(t)=-V_M\sin{{\omega}t}
\end{eqnarray}

赤色の線青色の線を合わせると、全波整流波は以下の式で表すことができます。

\begin{eqnarray}
v(t) = \begin{cases}
V_M\sin{{\omega}t} & \left(0 \leq t \lt \displaystyle \frac{T}{2}\right) \\
\\
-V_M\sin{{\omega}t} & \left(\displaystyle \frac{T}{2} \leq t \lt T\right)
\end{cases}
\end{eqnarray}

これから全波整流波の実効値・平均値・波形率・波高率を求めますが、上式を用いると計算が少し複雑になります。

そのため、今回は計算を容易にするために時間軸(横軸\(t\))を位相軸(横軸\({{\omega}t}\))に変換します。

【全波整流波】時間軸(横軸t)を位相軸(横軸ωt)に変換する

時間軸(横軸\(t\))を位相軸(横軸\({{\omega}t}\))に変換すると、全波整流波は以下の式となります。

\begin{eqnarray}
v({\omega}t) = \begin{cases}
V_M\sin{{\omega}t} & \left(0 \leq {\omega}t \lt \pi\right) \\
\\
-V_M\sin{{\omega}t} & \left(\pi \leq {\omega}t \lt 2\pi\right)
\end{cases}
\end{eqnarray}

あわせて読みたい

時間軸(横軸\(t\))を位相軸(横軸\({{\omega}t}\))に変換する方法』については下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。

全波整流波の実効値

全波整流波の実効値

波形\(v({{\omega}t})\)の実効値\(V_{RMS}\)は、\(v({{\omega}t})\)を2乗して平均した値の平方根なので、以下の式で表されます。

絶対値を求める式

\begin{eqnarray}
V_{RMS} &=& \sqrt{\displaystyle\frac{1}{2\pi} \displaystyle \int_{0}^{2\pi}v({{\omega}t})^2d({{\omega}t}})
\end{eqnarray}

赤色の線の領域は「\(0 \leq {\omega}t \lt \pi\)」青色の線の領域は「\(\pi \leq {\omega}t \lt 2\pi\)」です。

絶対値を求める式において、赤色の線青色の線を分けると、以下の式になります。

\begin{eqnarray}
V_{RMS} &=& \sqrt{\displaystyle\frac{1}{2\pi} \left(\displaystyle \int_{0}^{\pi}v({{\omega}t})^2d({\omega}t)+\displaystyle \int_{\pi}^{2\pi}v({{\omega}t})^2d({\omega}t)\right )}\\
\\
&=& \sqrt{\displaystyle\frac{1}{2\pi} \left(\displaystyle \int_{0}^{\pi}(V_M\sin{{\omega}t})^2d({\omega}t)+\displaystyle \int_{\pi}^{2\pi}(-V_M\sin{{\omega}t})^2d({\omega}t)\right )}
\end{eqnarray}

赤色の線の式は\(V_M\sin{{\omega}t}\)青色の線の式は\(-V_M\sin{{\omega}t}\)ですが、実効値の計算では二乗するため、上式をまとめることができます。まとめると、以下の式になります。

\begin{eqnarray}
V_{RMS} &=& \sqrt{\displaystyle\frac{1}{2\pi} \displaystyle \int_{0}^{2\pi}(V_M\sin{{\omega}t})^2d({\omega}t)}
\end{eqnarray}

上式において、

\begin{eqnarray}
X &=& \displaystyle \int_{0}^{2\pi}(V_M\sin{{\omega}t})^2 d({\omega}t)
\end{eqnarray}

と置くと、波形\(v({{\omega}t})\)の実効値\(V_{RMS}\)は、以下の式で表されます。

\begin{eqnarray}
V_{RMS} &=& \sqrt{\displaystyle\frac{1}{2\pi} X}
\end{eqnarray}

次に、\(X\)の値を求めます。

\begin{eqnarray}
X &=& \displaystyle \int_{0}^{2\pi}(V_M\sin{{\omega}t})^2 d({\omega}t)\\
\\
&=& \displaystyle \int_{0}^{2\pi}{V_M}^2{\sin}^2{\omega}t d({\omega}t)\\
\\
&=& {V_M}^2\displaystyle \int_{0}^{2\pi}{\sin}^2{\omega}t d({\omega}t)\\
\\
&=& {V_M}^2\displaystyle \int_{0}^{2\pi}\displaystyle \frac{1-{\cos2{\omega}t}}{2} d({\omega}t)\\
\\
&=& {V_M}^2 \left[\displaystyle\frac{1}{2}{{\omega}t}-\frac{1}{4}{\sin2{\omega}t} \right]_{0}^{2\pi}\\
\\
&=& {V_M}^2 \left( \displaystyle\frac{1}{2}×{2\pi}-\frac{1}{4}{\sin{4\pi}}\right)\\
\\
&=& {V_M}^2 {\pi}
\end{eqnarray}

以上より、全波整流波の実効値\(V_{RMS}\)は、以下の値になります。

\begin{eqnarray}
V_{RMS} &=&\sqrt{\displaystyle\frac{1}{2\pi} X}\\
\\
&=&\sqrt{\displaystyle\frac{1}{2\pi} {V_M}^2 {\pi}}\\
\\
&=&\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}V_M
\end{eqnarray}

全波整流波の平均値

波形\(v({{\omega}t})\)の平均値\(V_{AVE}\)は、\(v({{\omega}t})\)の絶対値\(|v({{\omega}t})|\)を平均した値なので、以下の式で表されます。

平均値を求める式

\begin{eqnarray}
V_{AVE} &=& \displaystyle\frac{1}{2\pi} \displaystyle \int_{0}^{2\pi}|v({{\omega}t})|d({{\omega}t})
\end{eqnarray}

この平均値を求める式には\(v({{\omega}t})\)の絶対値\(|v({{\omega}t})|\)を使用します。

そのため、波形にマイナスの領域があれば、マイナスの領域がプラスになるように変換する必要があります。

全波整流波の場合、マイナスの領域はないため、『\(v({{\omega}t})\)の式』と『\(v({{\omega}t})\)の絶対値\(|v({{\omega}t})|\)の式』は同じになります。

したがって、\(v({{\omega}t})\)の絶対値\(|v({{\omega}t})|\)は、以下の式で表すことができます。

\begin{eqnarray}
|v({{\omega}t})| = \begin{cases}
V_M\sin{{\omega}t} & \left(0 \leq {\omega}t \lt \pi\right) \\
\\
-V_M\sin{{\omega}t} & \left(\pi \leq {\omega}t \lt 2\pi\right)
\end{cases}
\end{eqnarray}

平均値を求める式において、各式を分けると、以下の式になります。

\begin{eqnarray}
V_{AVE} &=& \displaystyle\frac{1}{2\pi} \displaystyle \int_{0}^{2\pi}|v({\omega}t)|d({{\omega}t})\\
\\
&=& \displaystyle\frac{1}{2\pi}\left(\displaystyle \int_{0}^{\pi}|v({\omega}t)|d({{\omega}t})+ \int_{\pi}^{2\pi}|v({\omega}t)|d({{\omega}t}) \right)\\
\end{eqnarray}

この式は\(v({{\omega}t})\)の絶対値\(|v({{\omega}t})|\)を\(0\)から\(2\pi\)の領域で積分して、最後に\(2\pi\)を割ることで平均値を求めています。

しかし、図で考えると、\(0\)から\(\pi\)の領域で積分して、最後に\(\pi\)を割るのと平均値は同じです。

イメージ的には下図のようなことです。

全波整流波の平均値

そのため、\(v({{\omega}t})\)の絶対値\(|v({{\omega}t})|\)の平均値は以下の式で求めることができます。

\begin{eqnarray}
V_{AVE} &=& \displaystyle\frac{1}{\pi} \displaystyle \int_{0}^{\pi}|v({\omega}t)|d({{\omega}t})\\
\\
&=& \displaystyle\frac{1}{\pi}\displaystyle \int_{0}^{\pi}V_M\sin{{\omega}t}d({{\omega}t})
\end{eqnarray}

上式を計算すると、全波整流波の平均値\(V_{AVE}\)は、以下の値になります。

\begin{eqnarray}
V_{AVE} &=& \displaystyle\frac{1}{\pi}\displaystyle \int_{0}^{\pi}V_M\sin{{\omega}t}d({{\omega}t})\\
\\
&=& \displaystyle\frac{1}{\pi}V_M\left[-\cos{\omega}t \right]_{0}^{\pi}\\
\\
&=& \displaystyle\frac{V_M}{\pi}\left(-\cos\pi - \cos0 \right)\\
\\
&=& \displaystyle\frac{2V_M}{\pi}
\end{eqnarray}

全波整流波の波形率

波形率は以下の式で表すことができます。

\begin{eqnarray}
波形率 &=& \displaystyle\frac{実効値V_{RMS}}{平均値V_{AVE}}
\end{eqnarray}

全波整流波の実効値\(V_{RMS}\)と平均値\(V_{AVE}\)は求まっているので、この式に代入することで全波整流波の波形率を求めることができます。

\begin{eqnarray}
波形率 = \displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}V_M}{\displaystyle\frac{2V_M}{\pi}} = \displaystyle\frac{\pi}{2\sqrt{2}}
\end{eqnarray}

全波整流波の最大値

全波整流波の最大値

正弦波の最大値\(V_{PEAK}\)は波形から分かるように、以下の値で表されます。

\begin{eqnarray}
最大値V_{PEAK}=V_M
\end{eqnarray}

全波整流波の波高率(クレストファクタ)

波高率(クレストファクタ)は以下の式で表すことができます。

\begin{eqnarray}
波高率 &=& \displaystyle\frac{最大値V_{PEAK}}{実効値V_{RMS}}
\end{eqnarray}

全波整流波の実効値\(V_{RMS}\)と最大値\(V_{PEAK}\)は求まっているので、この式に代入することで全波整流波の波高率(クレストファクタ)を求めることができます。

全波整流波の波高率(クレストファクタ)は、以下の値で表されます。

\begin{eqnarray}
波高率 = \displaystyle\frac{V_M}{\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}V_M} = \sqrt{2}
\end{eqnarray}

まとめ

この記事では『全波整流波』について、以下の内容を説明しました。

  • 実効値・平均値・波形率・波高率の求め方

お読み頂きありがとうございました。

当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧は以下のボタンから移動することができます。

全記事一覧

また、記事下に当サイトの人気記事を記載しています。ご参考になれば幸いです。

スポンサーリンク