オペアンプとトランジスタを組み合わせることで『定電流回路』を作ることができます。
この記事では下記に示す2つの『定電流回路』について、原理や計算方法などを図を用いて分かりやすく説明しました。ご参考になれば幸いです。
- 定電流回路(オペアンプとNPNトランジスタを使用)
- 定電流回路(オペアンプとPNPトランジスタを使用)
定電流回路(オペアンプとNPNトランジスタを使用)
上図はオペアンプとNPN型バイポーラトランジスタQ1と抵抗R1で構成された定電流回路です。
この回路の定電流値IOUTは次式となります。
\begin{eqnarray}
I_{OUT}=\frac{V^{+}}{R_1}{\mathrm{[A]}}
\end{eqnarray}
上式において、V+はオペアンプの非反転入力端子の電圧です。
次に上式の導出方法について説明します。
定電流値IOUTの導出方法
オペアンプの出力電圧VOUTは次式で表されます。
\begin{eqnarray}
V_{OUT}=K\left(V^{+}-V^{-}\right)\tag{1-1}
\end{eqnarray}
(1-1)式において、Kはオペアンプの増幅率、V+は非反転入力端子の電圧、V-は反転入力端子の電圧です。
また、オペアンプの出力電圧VOUT、反転入力端子の電圧V-、NPN型バイポーラトランジスタQ1のベースエミッタ間電圧VBEの関係は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
V_{OUT}=V^{-}+V_{BE}\tag{1-2}
\end{eqnarray}
(1-1)式と(1-2)式より次式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
K\left(V^{+}-V^{-}\right)&=&V^{-}+V_{BE}\\
{\Leftrightarrow}V^{+}-V^{-}&=&\frac{V^{-}+V_{BE}}{K}\tag{1-3}
\end{eqnarray}
(1-3)式において、オペアンプの増幅率Kは非常に大きいため、無限大と仮定すると、右辺はゼロと見なすことができるため、次式となります。
\begin{eqnarray}
V^{+}-V^{-}&=&0\\
{\Leftrightarrow}V^{+}&=&V^{-}\tag{1-4}
\end{eqnarray}
また、NPN型バイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流IC、ベース電流IB、エミッタ電流IEの関係は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_{E}=I_{C}+I_{B}\tag{1-5}
\end{eqnarray}
ここで、NPN型バイポーラトランジスタQ1のベース電流IBはコレクタ電流ICより小さいため(IB≪IC)、ベース電流IBを無視すると、次式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
I_{E}{\;}{\approx}{\;}I_{C}\tag{1-6}
\end{eqnarray}
オペアンプの入力抵抗を無限大と考えると、オペアンプの反転入力端子に電流が流れ込まないため、抵抗R1に流れる電流IR1は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_{R1}=I_{E}\tag{1-7}
\end{eqnarray}
また、抵抗R1にかかる電圧(=反転入力端子の電圧V-)はオームの法則より次式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
V^{-}=I_{R1}R_{1}=I_{E}R_{1}{\;}{\approx}{\;}I_{C}R_{1}\tag{1-8}
\end{eqnarray}
(1-4)式と(1-8)式より、コレクタ電流ICは次式となります。
\begin{eqnarray}
I_{C}=\frac{V^{-}}{R_1}=\frac{V^{+}}{R_1}\tag{1-9}
\end{eqnarray}
この回路において、コレクタ電流ICと出力電流IOUTは等しいため、次式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
I_{OUT}=I_{C}=\frac{V^{+}}{R_1}\tag{1-10}
\end{eqnarray}
したがって、非反転入力端子に印加する電圧V+を一定にすれば、出力電流IOUTが定電流になることが分かります。
補足
オペアンプの出力端子からは電流をあまり流すことができないため(この回路の場合、NPN型バイポーラトランジスタQ1のベースに流す電流のこと)、NPN型バイポーラトランジスタQ1の代わりに『ダーリントントランジスタ』や『MOSFET』を用いることが多いです。
なお、ダーリントントランジスタについては下記の記事で解説していますので、ご参考になれば幸いです。
誤差の対策方法
NPN型バイポーラトランジスタQ1を用いる定電流回路の場合、NPN型バイポーラトランジスタQ1のベースに微小な電流が流れるため、エミッタ電流IEとコレクタ電流ICが完全に等しくならず、出力電流IOUTは設定した電流値より若干小さくなります(約1%程度)。
ここで、NPN型バイポーラトランジスタQ1の代わりにNチャネル型MOSFETを用いると、ゲートにはほとんど電流が流れない(nAオーダーやpAオーダー)ため、ソース電流ISとドレイン電流IDがほぼ等しくなり、誤差を小さくすることができます。
定電流回路(オペアンプとPNPトランジスタを使用)
上図はオペアンプとPNP型バイポーラトランジスタQ1と抵抗R1で構成された定電流回路です。
この回路の定電流値IOUTは次式となります。
\begin{eqnarray}
I_{OUT}=\frac{V_{IN}-V^{+}}{R_1}{\mathrm{[A]}}
\end{eqnarray}
上式において、V+はオペアンプの非反転入力端子の電圧です。上式の導出方法については、先ほど説明した「1. 定電流回路(オペアンプとNPNトランジスタを使用)」と同様の手順で求めることができるため、省略します。
このようにPNP型バイポーラトランジスタを用いれば、吐き出し型の定電流源を作ることができます。なお、電流の吸い込み型と吐き出し型については下記の記事で説明していますので、ご参考にしてください。
補足
この定電流回路の場合、オペアンプの非反転入力端子に印加する電圧V+を一定にしても、電源電圧VINの変動により、定電流値IOUTが変化します。
まとめ
この記事ではオペアンプを用いた『定電流回路』について、下記の回路に関する説明をしました。
- 定電流回路(オペアンプとNPNトランジスタを使用)
- 定電流回路(オペアンプとPNPトランジスタを使用)
お読み頂きありがとうございました。
当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧には以下のボタンから移動することができます。