過熱保護(OTP)とは?『ICの機能』や『回路』を解説!

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この記事では『過熱保護(OTP)』について

  • 過熱保護(OTP)とは
  • 過熱保護機能を搭載している電源IC
  • 過熱保護回路

などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。

過熱保護(OTP)とは

過熱保護(OTP)とは

過熱保護とは、「デバイス周囲の環境温度の上昇」・「冷却用ファンの停止」・「負荷の過電流」などでデバイスが過熱状態になった時に、動作を停止させ、温度上昇を抑える機能です。

過熱を抑制することで、抵抗、コンデンサ、IC、トランジスタ等の電子部品の特性劣化や破壊などを防止することができます

過熱保護は英語では「Over Temperature Protection」と書きます。英語の頭文字をとり「OTP」と呼ばれることもあります。

電源ICには過熱保護機能が内蔵されているものがあります。また、サーミスタやポジスタ等の温度によって特性が変わる部品を組み合わせても過熱から保護する回路(過熱保護回路)を作ることもできます。

ではこれから、

  • 電源ICの過熱保護機能
  • 過熱保護回路

について説明します。

補足

過熱保護は「過昇温保護」や「サーマルシャットダウン(TSD:Thermal Shutdown)」と呼ばれることがあります。

電源ICの過熱保護機能

電源ICの過熱保護機能

電源ICには過熱保護機能を内蔵しているものがあります。

IC内部に温度検出回路を搭載しており、規定の温度に達すると、過熱保護機能が働き、スイッチング動作を停止させます。

過熱保護機能が働く温度はデータシートに記載されています。

上図に示しているサンケン製SSC9522Sのデータシートの一部を見ると、「ICの温度が150℃(min.)に達すると、過熱保護機能が動作し、ラッチモードでスイッチング動作を停止する」と記載されています。

また、富士電機製FA6A30Nのデータシートの一部を見ると、「ICの温度が136℃以上になると、スイッチングを停止します。また、温度が120℃以下になると再度スイッチングを開始します」と記載されています。

このように、ICによって過熱保護が働く温度が異なります。また、「サンケン製SSC9522S」はラッチモードによる停止なので、ICの温度が低下してもスイッチング動作が復帰しません。一方、「富士電機製FA6A30N」は自動復帰型なので、ICの温度が低下すると、自動的にスイッチング動作が復帰します。

過熱保護回路(コンパレータとサーミスタを利用)

過熱保護回路(コンパレータとサーミスタを利用)

上図に示しているのは、コンパレータ、抵抗\(R_1\),\(R_2\),\(R_3\)、NTCサーミスタ\(R_{TMP}\)で構成されている過熱保護回路です。NTCサーミスタ\(R_{TMP}\)は過熱から保護したいデバイスの近くに配置させます。

A点の電圧\(V_A\)は基準電圧\(V_{REF}\)を抵抗\(R_1\)とNTCサーミスタ\(R_{TMP}\)で分圧した値となり、次式で表されます。

\begin{eqnarray}
V_A=\frac{R_{TMP}}{R_1+R_{TMP}}V_{REF}\tag{1}
\end{eqnarray}

NTCサーミスタ\(R_{TMP}\)は温度\(t\)が上昇すると、抵抗値が減少する素子です。そのため、(1)式より、NTCサーミスタ\(R_{TMP}\)の温度\(t\)が上昇すると、A点の電圧\(V_A\)が減少します。

B点の電圧\(V_B\)は基準電圧\(V_{REF}\)を抵抗\(R_2\)と抵抗\(R_3\)で分圧した値となり、次式で表されます。

\begin{eqnarray}
V_B=\frac{R_3}{R_2+R_3}V_{REF}\tag{2}
\end{eqnarray}

サーミスタを用いて分圧していないので、B点の電圧\(V_B\)は温度\(t\)が変わっても変化しません。

A点の電圧\(V_A\)がB点の電圧\(V_B\)より大きい時、コンパレータの出力は「LOW」となります。

温度\(t\)が上昇することで、A点の電圧\(V_A\)が減少し、B点の電圧\(V_B\)を下回ると、コンパレータの出力が「HIGH」となります。

コンパレータの出力が「HIGH」になった時に、動作を停止させるようにすれば、デバイスを加熱から保護することができます。

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過熱保護時の動作

過熱保護時の動作には自動復帰型ラッチ型(シャットダウン型)があります。各動作の特徴を以下に示します。

過熱保護の動作

  • 自動復帰型
  • 過熱状態を検知すると、動作が停止します。過熱状態が解除すると、動作が自動的に復帰します。

  • ラッチ型(シャットダウン型)
  • 過熱状態を検知すると、動作が停止するのは「自動復帰型」と同じですが、ラッチ型では、過熱状態が解除しても、動作が復帰しません。

まとめ

この記事では『過熱保護(OTP)』について、以下の内容を説明しました。

  • 過熱保護(OTP)とは
  • 過熱保護機能を搭載している電源IC
  • 過熱保護回路

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