MOSFETのデータシートにはゲート入力電荷量Qgーゲートソース間電圧VGSの特性があります。
この特性は、ゲートソース間電圧VGSの電圧によってゲート入力電荷量Qgが変わることを表す図です。
今回、LTspiceでQg-VGS特性を取得する方法について説明します。
『Qg-VGS特性』の例
まず最初に今回LTspiceで取得するVishay社のSi7336ADPの『Qg-VGS特性』の例を上図に示します。
この図からVDS=15V, ID=20Aの条件において、VGSが4.5Vの時にQgが36nC蓄積されていることが分かります。
また、Qg-VGS特性が平らになった時にMOSFETがターンオンします。すなわち、MOSFETがターンオンするのに必要なゲート入力電荷量は約18nCであるということも分かります。
なお、この特性ですが、MOSFETのスイッチング損失を求める際や、MOSFETに流れるゲート電流の平均値を求める際に利用します。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
MOSFETのスイッチング損失とは?『計算方法』や『式』について
【ゲート駆動回路】ゲート抵抗に流れる電流の『平均値』と『ピーク値』
LTspiceで『Qg-VGS特性』を取得する方法
上図に『Qg-VGS特性』を取得するための回路図とシミュレーション結果を表示しています。
シミュレーション結果を見ると、先ほど示したデータシートと『Qg-VGS特性』が一致していることが分かります。
ではこれから、『Qg-VGS特性』を取得するための回路図を描く際の注意点について説明します。
電流源(ドレイン電流用)の配置
Si7336ADPのデータシート上に記載していたID=20Aの条件を満たすための電流源をMOSFETのドレインに配置します。
その際、電流源を『右クリック→Advance』をクリックして、表示される設定でThis is an active loadにチェックを入れてください。
チェックを入れると電流源に”load“が表示されます。
チェックを入れない場合は、Qg-VGS特性が変になります(この記事の後半にThis is an active loadにチェックがない場合の波形を表示しています)。
電圧源の配置
Si7336ADPのデータシート上に記載していたVDS=15Vの条件を満たすための電圧源を配置します。
電圧源は特に特別な設定はありません。
電流源(ゲート電流用)の配置
Qg-VGSの横軸はゲート入力電荷量Qgです。
ゲート入力電荷量Qgはゲート電流×時間で決まります。
そのため、ゲートに対して一定のゲート電流を流すことで、時間経過によってゲート入力電荷量Qgを示します。
ゲート入力電荷量Qgの単位は一般的には[nC]です。
そのため、ゲート電流を1[nA]に設定すれば、横軸の1[s]が1[nC]に相当するようになります。
icコマンドで初期値の設定
MOSFETのドレインにVDS、MOSFETのゲートにVGSの端子を配置します(端子名は何でも良いです)。
そして、Spice directiveで『.ic V(VDS)=15 V(VGS)=0』を入力します。
MOSFETの配置
Vishay社のSi7336ADPはMOSFETを右クリックしてでてくる『Pick New MOSFET』を押すと表示される『Select MOSFET』にあります。
Si7336ADPを選択してOKボタンを押します。
その他
This is an active loadにチェックを入れない場合
波形は上図のようになります。
このようにQg-VGS特性が変になります。
.icコマンドを使用しなかった場合
MOSFETのドレインの端子VDSとMOSFETのゲートの端子VGSの初期値を設定しない場合の波形を上図に示します。
このようにQg-VGS特性が変になります。
電流源を抵抗に置き換えた場合
今回は15Aの電流源を配置しましたが、抵抗に置き換えた場合を考えてみます。
ドレインソース間電圧VDSが20Vにおいて、ドレイン電流ID=15Aが流れるようにするためには0.75Ωの抵抗をドレインに配置するということになります。
電流源を抵抗に置き換えてもQg-VGS特性を表示することができますが、MOSFETがオンする電荷量付近(18nC付近)で少しデータシートと差異があります。