【ゲート駆動回路】ゲート抵抗に流れる電流の『平均値』と『ピーク値』

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ゲート駆動回路において、ゲート抵抗に流れる電流(ゲート電流、ドライブ電流とも呼ばれています)の平均値ピーク値について求めてみます。

ゲート抵抗に流れる電流の動作

ゲート抵抗に流れる電流の動作
MOSFETのゲートにゲート抵抗RGを接続した構成において、ゲート駆動電圧vGをHigh電圧/Low電圧と切り替えた際、MOSFETのゲート駆動電圧vG、MOSFETにかかる電圧vDS、MOSFETに流れる電流iD、ゲート電流iGは上図のようになります。この時、MOSFETのゲート駆動電圧vGのHigh電圧をVGであるとします。

MOSFETのON/OFFのスイッチング遷移期間において、ゲート電流iGが流れます。

MOSFETのON/OFF時に流れるゲート電流iGの向きですが、

  • MOSFETのON時
  • ゲートに電力を供給するため、ゲート電流iGは駆動ICからゲートへ向かう方向に電流が流れます。

  • MOSFETのOFF時
  • ゲートに蓄積した電荷を引き抜くために、ゲート電流iGはゲートから駆動ICへ向かう方向に電流が流れます。

となります。

では、このゲート電流iGの平均値IGAVEとピーク値IGPEAKについて説明します。

ゲート電流の平均値

ゲート電流の平均値

ゲート電流iGのソース電流(駆動ICからゲートへ向かう電流)とシンク電流(ゲートから駆動ICへ向かう電流)の平均値IGAVEは以下の式で表されます。

\begin{eqnarray}
I_{GAVE}=Qgf_{SW}
\end{eqnarray}

ここで、QgはMOSFETのゲート入力電荷量(データシートに記載あり)、fSWはスイッチング周波数です。

例えば、データシートに記載のゲート入力電荷量Qgのグラフが以下のような場合において、スイッチング周波数fSWを100kHz、ゲートソース間電圧vGSのHigh電圧をVGを10Vとした場合には、ゲート電流の平均値IGAVE
\begin{eqnarray}
I_{GAVE}=Qgf_{SW}=50[nC]×100[kHz]=5[mA]
\end{eqnarray}
となります。
ゲート電流の平均値02

ゲート電流のピーク値

ゲート電流のピーク値

ゲート電流iGのピーク値IGPEAKは以下の式で表されます。

\begin{eqnarray}
I_{GPEAK}=\displaystyle\frac{V_G}{R_G}
\end{eqnarray}

ここで、VGはゲート電圧vGのHigh電圧、RGはゲート抵抗の抵抗値です。

ではこれから、ゲート電流iGの平均値IGAVEとピーク値IGPEAKの導出方法について説明します。

ゲート電流の平均値の導出方法

ゲート電流の平均値の導出方法

上図のようなゲート駆動電圧vG(High電圧がVG、Low電圧が0V)で、MOSFETを駆動しているとします。

MOSFETのゲートソース間電圧vGSが期間T1で0VからVGとなったときに、ゲートに蓄積される電荷量がQgであるとします。

MOSFETのON時において、ゲートに流れる電流(ソース電流)の平均値IGAVEは周期をTとすると、以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_{GAVE}=\displaystyle\frac{1}{T}\displaystyle \int_{0}^{T_1}i_{G}dt
\end{eqnarray}

ここで、ゲートに流れる電流(ソース電流)を積分するとゲートに蓄積される電荷量Qgとなりますので、以下の式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
Qg=\displaystyle \int_{0}^{T_1}i_{G}dt
\end{eqnarray}

したがって、周期とスイッチング周波数の関係式\(f_{SW}=\displaystyle\frac{1}{T}\)を用いるとゲート抵抗RGに流れる電流の平均値IGAVEは以下の式となります。

\begin{eqnarray}
I_{GAVE}=f_{SW}\displaystyle \int_{0}^{T_1}i_{G}=Qgf_{SW}
\end{eqnarray}

となります。

同様に、オフ時において、ゲート抵抗に流れる電流(シンク電流)の平均値IGAVE
\begin{eqnarray}
I_{GAVE}=Qgf_{SW}
\end{eqnarray}
となります。


ゲートソース間電圧vGSのLow電圧を-VGとし、この時の電荷量を-Qgとすると、ゲート電流の平均値IGAVE
\begin{eqnarray}
I_{GAVE}=(|Qg|+|-Qg|)f_{SW}
\end{eqnarray}
となります。

ゲート電流のピーク値の導出方法

ゲートソース間電圧vGSが0Vにおいて、ゲート駆動電圧vGが0VからVGとなった時にピーク電流IGPEAKが流れます。

この時、ゲート抵抗RGには「VG-0V」の電圧が印可されます。

したがって、オームの法則より、ゲート電流のピーク値IGPEAK
\begin{eqnarray}
I_{GPEAK}=\displaystyle\frac{V_G}{R_G}
\end{eqnarray}
となります。


駆動ICの出力段に内部抵抗RICにあり、かつMOSFETのOFF時、ゲートソース間電圧vGSが-VG1になっているとすると、ゲート電流のピーク値IGPEAK
\begin{eqnarray}
I_{GPEAK}=\displaystyle\frac{V_G-(-V_{G1})}{R_G+R_{IC}}
\end{eqnarray}
となります。

まとめ

駆動ICのデータシートには平均シンク電流、平均ソース電流、最大ピーク電流が記載されています。

そのため、設計をする際には、

  • 平均シンク電流、平均ソース電流
  • ゲート抵抗RGに流れる電流の平均値IGAVEが上記の電流値を超えないようにする

  • 最大ピーク電流
  • ゲート抵抗RGに流れる電流のピーク値IGPEAKが上記の電流値を超えないようにする

ことが重要です。

超えてしまうようでしたら、

  • ゲート抵抗RGを大きくする
  • ゲート駆動電圧vGのHigh電圧VGを小さくする
  • ゲート入力電荷量Qgの小さなMOSFETを選定する
  • スイッチング周波数fSWを遅くする

といったような方法をとる必要があります。

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