MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』について!

スポンサーリンク


この記事ではMOSFETの伝達特性(ID-VGS特性)について詳しく説明します。

MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』とは

MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』とは
MOSFETの伝達特性(ID-VGS特性)とは、MOSFETの静特性の一種であり、ドレインソース間電圧VDSを一定とした時のドレイン電流IDゲートソース間電圧VGSの特性のことです。

ゲートソース間電圧VGSがゲートしきい値電圧VTH以下の時は、チャネルが形成されていないため、ドレイン電流IDが流れません。

ゲートソース間電圧VGSがゲートしきい値電圧VTHを超えると、ゲート電極下にチャネルが形成され、ドレイン電流IDが流れるようになります。

この時、ゲートソース間電圧VGSが増加すると、チャネルに集まる電子の密度が高くなるので、チャネルの電気抵抗が減少します。つまり、MOSFETのオン抵抗RONが低くなります。

ドレイン電流ID
\begin{eqnarray}
I_{D}=\frac{V_{DS}}{R_{ON}}
\end{eqnarray}
の式で表されるため、オン抵抗RONが低くなるということは、ドレイン電流IDが増加することになります。

また、伝達特性(ID-VGS特性)はデータシート上では下図のように対数グラフで記載される場合もあります。

下図は東芝製の2SK4017のデータシート(左)とローム製のR6004KNXのデータシート(右)に記載されている『伝達特性(ID-VGS特性)』です。ローム製のR6004KNXのデータシート(右)では『伝達特性(ID-VGS特性)』が対数グラフで記載されていることが分かります。
MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』のデータシート

補足

  • 『伝達特性』は英語では「Transfer characteristic」と書きます。
  • MOSFETのゲートしきい値電圧とは、MOSFETをオンさせるために、必要なゲートソース間電圧VGSのことです。VGS(TH)やVTHで表されます。

MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』の温度特性

MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』の温度特性
MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』は温度によって変わります。データシート上には、温度が-55℃、-40℃、-25℃、25℃、100℃、125度など異なる温度の時の『伝達特性(ID-VGS特性)』が記載されています。

『伝達特性(ID-VGS特性)』は温度が高くなると、特性は左側にシフトします。すなわち、温度が高くなると、同じドレイン電流IDを流すために必要なゲートソース間電圧VGSが減少します。

下図は東芝製の2SK4017のデータシートに記載されている『伝達特性(ID-VGS特性)』です。ドレインソース間電圧VDSが10V、温度が-55℃25℃100℃の時の特性が描かれており、温度が高くなると、特性が左側にシフトしていることが分かります。
MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』の温度特性のデータシート

Nチャネル型、Pチャネル型、エンハンスメント型、デプレッション型の『伝達特性(ID-VGS特性)』

Nチャネル型、Pチャネル型、エンハンスメント型、デプレッション型の『伝達特性(ID-VGS特性)』
MOSFETには、Nチャネル型Pチャネル型があります。また、エンハンス型デプレッション型があります。

今まで示した『伝達特性(ID-VGS特性)』はNチャネル型エンハンス型の時の特性です。

ソースに対して、ゲートとドレインの印加電圧を逆にすれば、Pチャネル型の『伝達特性(ID-VGS特性)』となります。また、エンハンス型デプレッション型の違いは以下となっています。

  • エンハンス型(Enhancement型)
  • ゲートソース間電圧VGSの印加によってドレイン電流IDが流れ始めます。エンハンスメント形ノーマリーオフ型(Normally Off型)とも呼ばれています。

  • デプレッション型(Depletion型)
  • 不純物の注入によって、チャネルを最初から形成しているMOSFETです。ゲートソース間電圧VGSが0Vでもドレイン電流IDが流れます。デプレション型、ノーマリーオン型(Normally On型)とも呼ばれています。

【補足】『伝達特性(ID-VGS特性)』における3つの領域

『伝達特性(ID-VGS特性)』における3つの領域(遮断領域、飽和領域、線形領域)
MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』には3つの領域(遮断領域飽和領域線形領域)があります。

遮断領域

ゲートソース間電圧VGSがゲート閾値電圧VTHより低い領域です。『伝達特性(ID-VGS特性)』の緑色の箇所となります。

飽和領域

ゲートソース間電圧VGSが小さい時(VGS<VDS+VTH)の領域です。『伝達特性(ID-VGS特性)』の赤色の箇所となります。言い換えると、ゲートから見たドレイン電圧が相対的に大きい場合には、飽和領域となります。

なお、飽和領域においてはドレイン電流IDは以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_{D}=\frac{W}{L}{\mu}_{N}C_{OX}\left[\left(V_{GS}-V_{TH}\right)^2-\frac{1}{2}V_{DS}^2\right]
\end{eqnarray}

線形領域

ゲートソース間電圧VGSが大きい時(VGS>VDS+VTH)の領域です。『伝達特性(ID-VGS特性)』の青色の箇所となります。言い換えると、ゲートから見たドレイン電圧が相対的に小さい場合には、線形領域となります。

ゲートソース間電圧VGSを上げていくと、ゲートから見たドレイン電圧が相対的に小さくなっていき、飽和領域から線形領域に切り替わります。

なお、線形領域においてはドレイン電流IDは以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_{D}=\frac{W}{L}{\mu}_{N}C_{OX}\left[\left(V_{GS}-V_{TH}\right)V_{DS}-\frac{1}{2}V_{DS}^2\right]
\end{eqnarray}
上式は、線形(y=ax+b)の形であることが分かります。

また、飽和領域と線形領域のの境目の電圧は
\begin{eqnarray}
V_{GS}=V_{DS}+V_{TH}
\end{eqnarray}
となります。この時のドレインソース間電圧VDSはピンチオフ電圧VPといいます。

まとめ

この記事ではMOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』とは
  • MOSFETの『伝達特性(ID-VGS特性)』の温度特性

お読み頂きありがとうございました。

当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧には以下のボタンから移動することができます。

全記事一覧

スポンサーリンク