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MOSFETの『出力特性』と『線形領域、飽和領域、遮断領域』について!

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この記事ではMOSFETの出力特性(ID-VDS特性)線形領域飽和領域遮断領域について詳しく説明します。

MOSFETの『出力特性(ID-VDS特性)』とは?

MOSFETの『出力特性(ID-VDS特性)』とは
MOSFETの出力特性(ID-VDS特性)とは、MOSFETの静特性の一種であり、あるゲートソース間電圧VGSを印加している状態において、ドレインソース間電圧VDSとドレイン電流IDの関係を表した特性です。

ドレインソース間電圧VDSがある一定値を超えるまでは、ドレインソース間電圧VDSが増加するとドレイン電流IDが増加しますがドレインソース間電圧VDSがある一定値を超えると、ドレイン電流IDはドレインソース間電圧VDSによらず、ゲートソース間電圧VGSに依存する値となります。

MOSFETの線形領域、飽和領域、遮断領域について

MOSFETの線形領域、飽和領域、遮断領域について
MOSFETの『出力特性(ID-VDS特性)』には3つの領域(線形領域飽和領域遮断領域)があります。また、線形領域飽和領域の境界である電圧をピンチオフ電圧VPといいます。

  • 線形領域
  • ドレインソース間電圧VDSが増加するとドレイン電流IDが増加する領域です。『出力特性(ID-VDS特性)』の青色の箇所となります。

  • 飽和領域
  • ドレインソース間電圧VDSによらず、ゲートソース間電圧VGSが変わると、ドレイン電流IDが変わる領域です。『出力特性(ID-VDS特性)』の赤色の箇所となります。

  • 遮断領域
  • ゲートソース間電圧VGSがゲート閾値電圧VTHより低い領域です。『出力特性(ID-VDS特性)』の緑色の箇所となります。

MOSFETをスイッチとして用いるときは、線形領域(スイッチがオンの状態)遮断領域(スイッチがオフの状態)を利用し、MOSFETをアンプとして用いるときは、飽和領域を利用します。

次に、3つの領域(線形領域飽和領域遮断領域)とピンチオフ電圧VPについて順番に説明します。

線形領域

MOSFETの線形領域
線形領域とは、ドレインソース間電圧VDSを上げていくと、ドレイン電流IDが増える領域領域であり、『出力特性(ID-VDS特性)』の青色の箇所となります。

線形領域では、ドレイン電流IDを沢山流しても、ドレインソース間電圧VDSが小さいため、MOSFETをスイッチング用途で使用する場合、この領域を用います。

また、ゲートソース間電圧VGSが大きいほど、『出力特性(ID-VDS特性)』の傾きが急になります。

『出力特性(ID-VDS特性)』の傾きはオン抵抗RONの逆数であり、以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
傾き=\frac{{\Delta}I_D}{{\Delta}V_{DS}}=\frac{1}{R_{ON}}
\end{eqnarray}したがって、ゲートソース間電圧VGSが大きくすると、『出力特性(ID-VDS特性)』の傾きが急になる(オン抵抗RONが小さくなる)ということになります。

線形領域におけるMOSFETの構造図

MOSFETにゲートソース間電圧VGSを印加すると、ゲート(G)の絶縁膜直下にP層内の電子が引き寄せられ、電子よるNチャネル領域(反転層:上図の赤色)が形成されます。

ドレインソース間電圧VDSがゲートソース間電圧VGSに比べて十分小さい時は、Nチャネル領域はゲート電極下に均等に形成されます。

このNチャネル領域はドレインソース間の架け橋となります。そのため、ドレインソース間電圧VDSを印加する(ドレインにプラス、ソースにマイナス)と、電子はマイナスなのでドレインに引き付けられます。すなわち、ソースからドレインに向かって電子が流れます(ドレイン電流IDは電子の流れる方向と反対でドレインからソースに向かって流れます)。

この時、ゲートソース間電圧VGSが増加すると、Nチャネル領域に集まる電子の密度が高くなるので、チャネルの電気抵抗が減少します。そのため、線形領域ではゲートソース間電圧VGSの大きさによってオン抵抗RONが変わります。

また、ある一定のゲートソース間電圧VGSの場合、ドレインソース間電圧VDSが増加すると、ドレイン電流IDが比例して増加します。すなわち、線形領域では、ドレイン電流IDとドレインソース間電圧VDSの関係はオームの法則のように線形直線となります。

補足

  • 線形領域は抵抗領域非飽和領域とも呼ばれています。
  • 線形領域と飽和領域の領域は強反転領域とも呼ばれています。
  • MOSFETをスイッチのオン状態で用いる場合、ゲートソース間電圧VGSを大きくして、ドレインソース間電圧VDSがなるべく小さくなる箇所で用います。しかし、逆にゲートソース間電圧VGSが大きいとMOSFETのドライブ損失が大きくなってしまいます。
  • 温度が高いほどオン抵抗RONが大きくなります。

ピンチオフ電圧

MOSFETのピンチオフ電圧
ピンチオフ電圧VPとは線形領域飽和領域の境界となるドレインソース間電圧VDSのことであり、『出力特性(ID-VDS特性)』のオレンジ色の箇所となります。

ピンチオフ電圧におけるMOSFETの構造図

MOSFETにゲートソース間電圧VGSを印加すると、ゲート(G)の絶縁膜直下にP層内の電子が引き寄せられ、電子よるNチャネル領域(反転層:上図の赤色)が形成されます。

ドレインソース間電圧VDSを大きくすると、Nチャネル領域はゲート電極下に均等に形成されなくなります。

MOSFETはソースとドレインの電極下はN+層となっており、P層との間にPN接合ができています。

そのため、ドレインソース間電圧VDSを印加する(ドレインにプラス、ソースにマイナス)と、ドレインの電極下のN+層とP層のPN接合部に逆方向の電圧をかけた場合のようになり、ドレインの電極下のN+層とP層の境界部分には電子も正孔もいない空乏層が生じます。この空乏層はドレインソース間電圧VDSが大きくなるほど広がり、Nチャネル領域にある電子も追い出すようになります。

その結果、あるドレインソース間電圧VDSにおいて、ドレイン付近では上図のようにNチャネル領域が遮断します。これは、ゲートドレイン間電圧VGD(=VGS-VDS)がゲートしきい値電圧VTHとなるときに生じます。
\begin{eqnarray}
V_{GD}=V_{GS}-V_{DS}=V_{TH}
\end{eqnarray}また、Nチャネル領域が遮断されることをピンチオフといい、この時のドレインソース間電圧VDSピンチオフ電圧VPといいます。

すなわち、ピンチオフ電圧VPは、
\begin{eqnarray}
V_{TH}=V_{GS}-V_{DS}
\end{eqnarray}のVDSをVPに置き換えて、
\begin{eqnarray}
V_{TH}&=&V_{GS}-V_{P}\\
{\Leftrightarrow}V_{P}&=&V_{GS}-V_{TH}
\end{eqnarray}となります。

飽和領域

MOSFETの飽和領域
飽和領域とは、ゲートソース間電圧VGSが一定なら、ドレインソース間電圧VDSによらずドレイン電流IDが一定となる領域であり、『出力特性(ID-VDS特性)』の赤色の箇所となります。

つまり、飽和領域では、ドレイン電流IDはドレインソース間電圧VDSではなくゲートソース間電圧VGSで決まります。

飽和領域におけるMOSFETの構造図

MOSFETにゲートソース間電圧VGSを印加すると、ゲート(G)の絶縁膜直下にP層内の電子が引き寄せられ、電子よるNチャネル領域(反転層:上図の赤色)が形成されます。

飽和領域では、ドレインソース間電圧VDSピンチオフ電圧VPを超えているNチャネル領域が遮断されている状態です。

ピンチオフになると、ドレインソース間電圧VDSを増やしても、ピンチオフの箇所が移動するだけであり、ドレイン電流IDは増えなくなります。

なお、Nチャネル領域が遮断されると、電流が流れなくなるように感じますが、そうはなりません。

ドレインには大きなプラスの電圧が印加されており、電子を引き寄せる力があります。そのため、ソース側に残っているNチャネル領域から電子が空乏層領域に入ると、ドレインの強い電界にひかれて電子がドレインに流れ込みます。

線形領域ではチャネルがドレインソース間で繋がっているため、ドレインソース間電圧VDSを大きくすれば、ソースから供給される電子が多くなり、それがそのままドレインに流れ込みました。しかし、Nチャネル領域が遮断されると、ソース側に残っているNチャネル領域から電子が空乏層領域に入る量はドレインソース間電圧VDSを大きくしてもあまり変わらなくなります。したがって、飽和領域ではドレインソース間電圧VDSを増やしても、ピンチオフの箇所が移動するだけであり、ドレイン電流ID増えなくなります。

遮断領域

MOSFETの遮断領域
遮断領域とは、ゲートソース間電圧VGSがゲート閾値電圧VTHより小さい領域であり、『出力特性(ID-VDS特性)』の緑色の箇所となります。

遮断領域では、ドレインソース間電圧VDSを印加しても、ドレインソース間に電流は流れません。

遮断領域におけるMOSFETの構造図

遮断領域においてはNチャネル領域が形成されていません。そのため、ドレインソース間の架け橋がないため、ドレインソース間電圧VDSを印加してもドレイン電流IDが流れません。

補足

  • 遮断領域はカットオフ領域サブスレッショルド領域非反転領域とも呼ばれています。
  • 厳密には、遮断領域において、ドレインソース間電圧VDSを印加すると、漏れ電流が少し流れます。この漏れ電流はドレイン遮断電流IDSSといい、データシート等に記載されています。

【補足】MOSFETの線形領域、飽和領域、遮断領域の式

ゲートソース間電圧VGS、ゲートしきい値電圧VTH、ドレインソース間電圧VDSの関係は以下となっています。

線形領域

\(V_{GS}{>}V_{TH}\):チャネルができる条件
\(V_{DS}{<}V_{GS}-V_{TH}\):ピンチオフが発生しない条件

また、線形領域におけるドレイン電流IDの式は以下となります。
\begin{eqnarray}
I_{D}=\frac{W}{L}{\mu}_{N}C_{OX}\left[\left(V_{GS}-V_{TH}\right)V_{DS}-\frac{1}{2}V_{DS}^2\right]
\end{eqnarray}
ここで、ドレインソース間電圧VDSが小さい場合、\(\displaystyle\frac{1}{2}V_{DS}^2\)を無視することができ、
\begin{eqnarray}
I_{D}=\frac{W}{L}{\mu}_{N}C_{OX}\left(V_{GS}-V_{TH}\right)V_{DS}
\end{eqnarray}
となります。\(\displaystyle\frac{W}{L}{\mu}_{N}C_{OX}\left(V_{GS}-V_{TH}\right)\)を\(X\)と置くと、
\begin{eqnarray}
I_{D}=XV_{DS}
\end{eqnarray}
となり、ドレインソース間電圧VDSが増えると、ドレイン電流IDが比例するように増加します。

飽和領域

\(V_{GS}{>}V_{TH}\):チャネルができる条件
\(V_{DS}{>}V_{GS}-V_{TH}\):ピンチオフが発生する条件

また、飽和領域におけるドレイン電流IDの式は、線形領域の式において、\(V_{DS}=V_{GS}-V_{TH}\)を代入し、
\begin{eqnarray}
I_{D}=\frac{W}{L}{\mu}_{N}C_{OX}\left[\left(V_{GS}-V_{TH}\right)^2-\frac{1}{2}V_{DS}^2\right]
\end{eqnarray}
となります。

遮断領域

\(V_{GS}{<}V_{TH}\):チャネルができない条件

ピンチオフ点

\(V_{GS}{>}V_{TH}\):チャネルができる条件
\(V_{DS}=V_{GS}-V_{TH}\):ピンチオフが発生する点

まとめ

この記事ではMOSFETの『出力特性(ID-VDS特性)』について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • MOSFETの『出力特性(ID-VDS特性』とは
  • MOSFETの3つの領域(線形領域、飽和領域、遮断領域)について

お読み頂きありがとうございました。

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