MOSFETの『ゲートしきい値電圧』について!

スポンサーリンク


この記事ではMOSFETのゲートしきい値(閾値)電圧について説明します。

MOSFETの『ゲートしきい値電圧』とは

MOSFETの『ゲートしきい値電圧』とは
MOSFETのゲートしきい値電圧とは、MOSFETをオンさせるために、必要なゲートソース間電圧VGSのことです。VGS(TH)、VTH、Vthなどで表されます。

ここで、「MOSFETがオンした状態」とは「ドレイン電流IDが何A流せる状態」なの?と思う方がいるかもしれません。

これは、MOSFETのデータシートの電気的特性欄に記載されています。

一例として、上図に東芝製2SK4017のデータシートに記載されている「電気的特性(Ta=25℃)」を示しています。赤色の箇所がゲートしきい値電圧Vthとなっています。測定条件を見ると、

VDS=10VID=1mA

と記載されています。すなわち、これは、周囲温度Ta=25℃において、ドレインソース間電圧VDSを10V印加している状態で、ドレイン電流IDを1mA流すために、必要なゲートしきい値電圧Vthが1.3V(最小)~2.5V(最大)であることを示しています。

つまり、周囲温度Ta=25℃ドレインソース間電圧VDSを10V印加している状態において、ゲートソース間電圧VGSを増加させていくと、MOSFETがオンして、ドレイン電流IDが流れ出し、ドレイン電流IDが1mAの時はゲートソース間VGSが1.3V(最小)~2.5V(最大)になっているということです。

補足

しきい値(閾値)電圧は英語では「Threshold Voltage」と書きます。

MOSFETの『ID-VGS特性』で必要なゲートソース間電圧VGSを求める

MOSFETの『ID-VGS特性』で必要なゲートソース間電圧VGSを求める
先ほど説明した電気的特性において、東芝製2SK4017はドレイン電流IDを1mA流すために必要なゲートしきい値電圧Vthが1.3V(最小)~2.5V(最大)であることを説明しました。

ここで、ドレイン電流IDを1mA以上流したい場合には、ゲートソース間電圧VGSは何V必要なの?と思う方がいるかもしれません。

これは、MOSFETのデータシートの『伝達特性(ID-VGS特性)』に記載されています。

上図の左は東芝製の2SK4017のデータシートの『伝達特性(ID-VGS特性)』を示しています。MOSFETはゲートソース間電圧VGSを増加させると、ドレイン電流IDが増加します。

ここで、『伝達特性(ID-VGS特性)』を見ると、「VDS=10V」の条件は電気的特性欄の測定条件と一致しています。この『伝達特性(ID-VGS特性)』より、例えば、5Aのドレイン電流IDを流したい場合、Ta=25℃においては、ゲートソース間電圧VGSは約3.3V必要であることが分かります。

次に、この時のオン抵抗RONを求めてみましょう。

ゲートソース間電圧VGSが約3.3Vの時、「VDS=10V」で「ID=5A」となるため、オン抵抗RON
\begin{eqnarray}
R_{ON}=\frac{V_{DS}}{I_{D}}=\frac{10{\mathrm{[V]}}}{5{\mathrm{[A]}}}=2{\mathrm{[Ω]}}
\end{eqnarray}
となり、まだオン抵抗RONがまだ高い状態です。

次に、ここで、オン抵抗RONを低くなるためには、ゲートソース間電圧VGSは何V必要なの?と思う方がいるかもしれません。

これは、MOSFETのデータシートの『VDS-VGS特性』から導出します。

上図の右は東芝製の2SK4017のデータシートの『VDS-VGS特性』を示しています。

なお、『VDS-VGS特性』ではなく、『RON-VGS特性』が記載されているデータシートもありますが、東芝製の2SK4017は『VDS-VGS特性』が記載されているため、『VDS-VGS特性』からオン抵抗を導出します。

『VDS-VGS特性』を見ると、ゲートソース間電圧VGSが6V付近になると、「ID=5A」、「VDS=0.4V」となります。この時のオン抵抗RONは、
\begin{eqnarray}
R_{ON}=\frac{V_{DS}}{I_{D}}=\frac{0.4{\mathrm{[V]}}}{5{\mathrm{[A]}}}=0.08{\mathrm{[Ω]}}
\end{eqnarray}
となり、ゲートソース間電圧VGSを6V印加すると、オン抵抗が低くなることが分かります。

そのため、スイッチング用途で使用する場合には、ゲートソース間電圧VGSを6V以上印加する必要があります。

なお、ゲートソース間電圧VGSを高くする場合、ゲートソース間電圧VGSに加わるサージを加味して、下図の絶対最大定格のVGSSを超えないように設計をしてください。

MOSFETのゲートソース間電圧の絶対最大定格

補足

MOSFETのドライブ損失を減らすために、ゲートソース間電圧VGSを低く設定すると、必要なドレイン電流IDを流せないだけでなく、オン抵抗RONの増大によって、MOSFETが温度上昇し、破壊に至る可能性もあります。

MOSFETの『ゲートしきい値電圧Vth』は温度によって変化する

MOSFETの『ゲートしきい値電圧Vth』は温度によって変化する
MOSFETの『ゲートしきい値電圧Vth』は温度によって変化します。

ゲートしきい値電圧Vthは負の温度特性(一般的には-5mV~-7mV/℃)持っており、温度が上昇すると、ゲートしきい値電圧Vthは減少します。

上図は東芝製の2SK4017のデータシートの『Vth-TC特性)』を示しています。

上図の『Vth-TC特性)』を見ると、「VDS=10VID=1mA」となっており電気的特性欄の測定条件と一致しています。そのため、TC=25℃の箇所を見ると、ゲートしきい値電圧Vthが1.3V(最小)~2.5V(最大)にあることが分かります。

また、上図より、温度TCが高くなると、ゲートしきい値電圧Vthが低下することが分かります。つまり、温度TCが高いほど、ゲートしきい値電Vthが低下するため、より低いゲートソース間電圧VGSでドレイン電流IDを多く流せるということになります。

補足

温度によって変化するため、MOSFETの駆動回路を設計する際には、データシートに記載されているゲートしきい値電圧Vthの温度特性を確認して、外部ノイズ等によって、誤動作しないように駆動回路を設計する必要があります。

まとめ

この記事ではMOSFETの『ゲートしきい値電圧Vth』について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • MOSFETの『ゲートしきい値電圧Vth』とは
  • MOSFETの『ID-VGS特性』で必要なゲートソース間電圧VGSを求める方法
  • MOSFETの『ゲートしきい値電圧Vth』の温度特性

お読み頂きありがとうございました。

当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧には以下のボタンから移動することができます。

全記事一覧

スポンサーリンク