この記事では『ツェナーダイオードの動作抵抗』について説明します。
「ツェナーダイオードなのに抵抗?なにそれ?」と思われるかもしれませんが、ツェナーダイオードはツェナー電流IZが変化すると、ツェナー電圧VZが微妙に変化します。このツェナー電圧VZとツェナー電流の傾きdVZ/dIZを動作抵抗と呼ぶのです。
では、これから『ツェナーダイオード動作抵抗』について図を用いて詳しく説明します。ご参考になれば幸いです。
ツェナーダイオードの『動作抵抗』
上図にツェナーダイオードの「ツェナー電流IZ-ツェナー電圧VZ特性」を示します。
ツェナーダイオードはツェナー電流IZが変化してもツェナー電圧VZが一定の値になることが理想です。
しかし、実際にはツェナー電圧は完全に一定にはならず、ツェナー電流IZがdIZ変化すると、ツェナー電圧VZがdVZ変化します。そのため、「ツェナー電流IZ-ツェナー電圧VZ特性」は傾きがあります。
この傾きが動作抵抗RZとなります。動作抵抗RZは以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
R_Z=\frac{dV_Z}{dI_Z}
\end{eqnarray}
補足
- 動作抵抗の記号はRZ、ZZ、RZT、ZZT、rで表されるのが一般的です。
- 動作抵抗は英語では『Operating Resistance』や『Dynamic Resistance』と書きます。
- ツェナーダイオードは理想的にはツェナー電流IZが変化してもツェナー電圧VZが一定の値(dVZ=0)となりますので、動作抵抗RZの理想値はゼロとなります。
- 動作抵抗RZが小さいほど、ツェナー電流IZ変化した時において、ツェナー電圧VZの変化量が小さくなるため、性能が高いツェナーダイオードということにもなります。
- 動作抵抗RZはツェナーダイオードに流すツェナー電流によって変化します。そのため、ある程度の電流を流すと、動作抵抗RZが小さくなるため、ツェナー電圧VZの安定性は良くなります。
- 動作抵抗RZはコンデンサやインダクタにもある等価直列抵抗(ESR)をイメージしていただくと分かりやすいと思います。
- 動作抵抗RZはツェナーダイオードの立ち上がり時(電流が流れ始めた時)に大きくなる傾向があります。立ち上がり時の動作抵抗は『立ち上がり動作抵抗RZK』と呼ばれています。立ち上がり動作抵抗については、後ほど説明します。
ツェナーダイオードの『等価回路』
動作抵抗RZを用いると、ツェナーダイオードの等価回路は上図のようになります。
ツェナーダイオードの等価回路はツェナー電圧VZと動作抵抗RZの直列接続で表すことができます。等価回路では、ツェナー電圧VZは一定とし、ツェナー電流IZによるツェナー電圧VZの変化分を動作抵抗RZで表しています。
ツェナーダイオードの『立ち上がり動作抵抗』
ツェナーダイオードの立ち上がり時の動作抵抗は『立ち上がり動作抵抗RZK』と呼ばれており、データシート上に記載されています。
上図に示しているのは、パナソニック製DZ2J062×0Lのデータシートの一部です。ツェナー電流IZ=0.5mAを流したときの立ち上がり動作抵抗RZKが100Ωであることが確認できます。
ツェナー電流が大きくなり、IZ=5mAになると、動作抵抗が30Ωになることも確認できます。
補足
- 立ち上がり動作抵抗の記号はRZK、ZZKで表されるのが一般的です。
まとめ
この記事では『ツェナーダイオードの動作抵抗』について、以下の内容を説明しました。
- ツェナーダイオードの『動作抵抗』の特徴
- ツェナーダイオードの『立ち上がり動作抵抗』とは
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