この記事では電線の『種類』について
- 電線の『種類』と『用途』
- 各電線の特徴
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
電線の種類
電線には上図に示すように様々な種類があります。各電線により、高圧架空電線路用、高圧引下電線用、低圧架空電線路用、低圧引込電線用、屋内配線用など用途が異なります。
用途 | 使用電線 |
高圧架空電線路用 | OE電線(屋外用ポリエチレン絶縁電線) |
OC電線(屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線) | |
高圧引下電線用 | PDC電線(高圧引下用架橋ポリエチレン絶縁電線) |
PDP電線(高圧引下用EPゴム絶縁電線) | |
PDE電線(高圧引下用ポリエチレン絶縁電線) | |
低圧架空電線路用 | OW電線(屋外用ビニル絶縁電線) |
低圧引込電線用 | DV電線(引込用ビニル絶縁電線) |
屋内配線用 | IV電線(ビニル絶縁電線) |
HIV電線(二種ビニル絶縁電線) | |
EM-IE電線(耐燃性ポリエチレン絶縁電線) | |
KIV電線(電気機器用ビニル絶縁電線) | |
キュービクル内の配線用 | KIP電線(高圧機器内配線用EPゴム絶縁電線) |
KIC電線(高圧機器内配線用架橋ポリエチレン絶縁電線) |
ではこれから各電線の特徴について説明していきます。
そもそも電線って何?
電線とは電気を伝送する金属線の総称のことを指します。
電線には、絶縁電線と裸電線があり、
- 絶縁電線:電気を通す導体が被覆(絶縁体)で覆われている電線
- 裸電線:電気を通す導体が被覆(絶縁体)で覆われていない電線
となります。なお、ケーブルは絶縁電線をシース(外皮)で覆ったもののことを指します。ケーブルの種類と特徴についてには下記の記事で説明していますので、ご参考になれば幸いです。
ケーブルの『種類』について!用途などを解説!
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OE電線
OE電線(屋外用ポリエチレン絶縁電線)は、高圧架空電線路に用いられている電線です。最大許容温度は75℃です。
絶縁体にはポリエチレンを使用しています。
着雪による断線事故防止のために、絶縁体表面にヒレをつけたSN-OE電線などもあります。
OE電線は英語表記で表すと「Outdoor polyethylene insulated wire」であり、
- Outdoor:屋外
- polyethylene:ポリエチレン
- insulated wire:絶縁電線
を意味しています。
OC電線
OC電線(屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線)もOE線と同様に高圧架空電線路に用いられている電線です。最大許容温度は90℃です。
構造はOE電線と同じですが、絶縁体に耐熱性に優れている架橋ポリエチレンを使用しているので、OE電線より許容電流を大きくとることができます。
着雪による断線事故防止のために、絶縁体表面にヒレをつけたSN-OC電線などもあります。
OCは「Outdoor Cross-linked polyethylene」の略称であり、
- Outdoor:屋外
- Cross-linked:架橋
- polyethylene:ポリエチレン
を意味しています。
PDC電線
PDC電線(高圧引下用架橋ポリエチレン絶縁電線)は高圧架空電線路から柱上変圧器の1次側に引き下げる電線です。最高許容温度は90℃です。
PDCは「high-voltage Drop wires for Pole transformer Cross-linked polyethylene」の略称であり、
- high-voltage:高圧
- Drop wires:引込線
- Pole transformer:柱上変圧器
- Cross-linked:架橋
- polyethylene:ポリエチレン
を意味しています。
PDP電線
PDP電線(高圧引下用EPゴム絶縁電線)もPDC電線と同様に高圧架空電線路から柱上変圧器の1次側に引き下げる電線です。最高許容温度は80℃です。
PDPは「high-voltage Drop wires for Pole transformer ethylene Polyethylene rubber」の略称であり、
- high-voltage:高圧
- Drop wires:引込線
- Pole transformer:柱上変圧器
- ethylene Polyethylene rubber:EPゴム(エチレンプロピレンゴム)
を意味しています。
PDE電線
PDE電線(高圧引下用ポリエチレン絶縁電線)もPDC電線と同様に高圧架空電線路から柱上変圧器の1次側に引き下げる電線です。
PDEは「high-voltage Drop wires for Pole transformer polyethylene」の略称であり、
- high-voltage:高圧
- Drop wires:引込線
- Pole transformer:柱上変圧器
- polyethylene:ポリエチレン
を意味しています。
KIP電線
KIP電線(高圧機器内配線用EPゴム絶縁電線)は高圧電線で用いられますが、キュービクル(高圧の電気を受ける受電設備)内の機器配線用の電線です。最高許容温度は80℃です。
絶縁体にはEPゴム(エチレンプロピレンゴム)が使われています。
可とう性が高く、耐熱性も優れているため、高温になる場所などの配線に用いられています。
KIPは「Kiki(機器用) wire Insulate by ethylene Polyethylene rubber」の略称であり、KIPのKは機器用を意味しています。
KIC電線
KIC電線(高圧機器内配線用架橋ポリエチレン絶縁電線)もKIP電線と同様にキュービクル(高圧の電気を受ける受電設備)内の機器配線用の電線です。最高許容温度は90℃です。
絶縁体には架橋ポリエチレンを使用しています。
KICは「Kiki(機器用) wire Insulate by Cross-linked polyethylene」の略称です。
OW電線
OW電線(屋外用ビニル絶縁電線)は低圧架空電線路に用いられている電線です。分かりやすくいうと、電柱と電柱をつなぐ電線に用いられています。
絶縁体には耐候性に優れたビニルを使用しており、色は黒色が標準です。導体には硬銅線(太いものは硬銅より線)を用いています。
OWは「Outdoor Weatherproof polyvinyl chloride」の略称であり、
- Outdoor:屋外
- Weatherproof:風雨に耐える
- polyvinyl chloride:ポリ塩化ビニル
を意味しています。
DV電線
DV電線(引込用ビニル絶縁電線)は600V以下の低圧引込電線に用いられている電線です。電柱から建物に電気を引き込むときに用います。
耐候性、耐久性に優れており、厳しい環境でも使用できる電線です。
導体には、硬銅線と軟銅線を用いており、20~66[mm2]では軟銅線を用います。被覆の色は黒色を標準としています。また、被覆の識別をする場合、2個よりでは「黒と緑」or「黒と青」、3個よりでは「黒と緑と青」としています。
DV電線は「Drop wire PVC」の略称であり、
- Drop wire:引込線
- PVC:polyvinyl chlorideの略でポリ塩化ビニル
を意味しています。
IV電線
IV電線(ビニル絶縁電線)は屋内配線に用いられている電線です。主に600V以下の一般電気工作物や電気機器の配線に用いられています。具体的には、照明器具・スイッチ・コンセントへの渡り線・接地用の電線などに用いられています。接地用の電線は緑色であり、見たことがある人が多いと思います。
単線またはより線の導線をポリ塩化ビニル(PVC)で包んで絶縁しています。最高許容温度は60℃です。
IV電線はシース(外皮)で保護されていないため、電線管を通して施工するのが基本となります。また、VVFケーブルの内部の電線にはこのIV電線が用いられています。
IVは「Indoor PVC」の略称であり、
- Indoor:屋内
- PVC:polyvinyl chlorideの略でポリ塩化ビニル
を意味しています。
HIV電線
HIV電線(二種ビニル絶縁電線)はIV電線と同様に屋内配線に用いられている電線です。
IV電線と見た目は同じですが、IV電線より耐熱性が優れており、最高許容温度は75℃となっています。そのため、IV電線よりも約20%許容電流を大きくとれます。また、周囲温度が比較的高い場所でも安定して送電を行うことができます。
単線またはより線の導線を耐熱ビニルで包んで絶縁しています。
HIV電線もIV電線と同様にシース(外皮)で保護されていないため、電線管を通して施工するのが基本となります。
HIVは「Heat-resistant Indoor PVC」の略称であり、
- Heat-resistant:耐熱
- Indoor:屋内
- PVC:polyvinyl chlorideの略でポリ塩化ビニル
を意味しています。
EM-IE電線
EM-IE電線(600V耐燃性ポリエチレン絶縁電線)はIV電線のエコバージョンです。IV電線と見た目は同じです。
IV電線の絶縁体に用いられている塩化ビニルは、燃焼時にハロゲンガスやダイオキシンが発生するため、廃却時において環境への影響が懸念されていました。
一方、EM-IE電線は絶縁体を塩化ビニルからポリエチレンに変えたものであり、燃焼時のハロゲンガスやダイオキシンの発生を抑えています。しかし、IV電線よりも高価になります。
EM-IEは「Eco Material Indoor polyethylene」の略称であり、
- Eco Material:エコマテリアル
- Indoor:屋内
- polyethylene:ポリエチレン
を意味しています。
KIV電線
KIV電線(電気機器用ビニル絶縁電線)は600V以下の電気機器・分電盤・制御盤の配線に用いられている電線です。
IV電線と素線構成が異なります。IV電線と比較すると、KIV電線は細い素線を多くより合わせているため、柔らかく可とう性に優れており、曲げやすくなっています。そのため、IV電線では硬くて配線の取り回しが大変な時などに用います。
IV電線と最高許容温度は同じであり60℃となっています。なお、絶縁体には鉛を含まない塩化ビニルコンパウンドを使用しています。
KIVのKは可とう性と書いてある資料もあれば、Kiki(機器用)と書いてある資料があります。「K(可とう性)のあるIV電線がKIV電線である」と考えると覚えやすいと思います。
まとめ
この記事では電線の『種類』について、以下の内容を説明しました。
- 電線の『種類』と『用途』
- 各電線の特徴
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