この記事では電線の『許容電流』について
- 電線の『許容電流』とは
- 電線の『許容電流』の計算方法と例題
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
電線の『許容電流』
電線の許容電流とは「電線に流すことができる最大の電流値」のことです。
電線に大電流が流れると、熱が発生して、絶縁皮膜が溶けてしまう可能性があります。このような、事故を防ぐため、電線に流すことができる最大の電流値(許容電流)が決まっています。
また、電線に流れる電流を\(I{\mathrm{[A]}}\)、電線の抵抗値を\(R{\mathrm{[{\Omega}]}}\)、電流が流れている時間を\(t{\mathrm{[s]}}\)とすると、電線で発生するジュール熱は\(Q=RI^2t{\mathrm{[J]}}\)で表すことができます。電線は細ければ細いほど抵抗値\(R\)が大きくなるため、ジュール熱\(Q\)も大きくなります。
したがって、電線には
というように、電線の太さによって流すことができる最大の電流値(許容電流)が決められています。例えば、直径2.0mmの電線の場合、流すことができる電流値は35Aとなっています。
では次に、電線の許容電流の計算方法について説明します。
電線の『許容電流』の計算方法
電線の許容電流を求める手順は下記となります。
- 電線1本のみの場合、電線の太さごとの許容電流\(I_A\)を参照する
- 電線を何本か電線管に収める場合、「電流減少係数」を参照する
→単線の場合は直径[mm]、より線の場合は総断面積[mm2]を参照する。
→電線1本あたりの許容電流\(I_B\)は「\(I_A×電流減少係数\)」となる。
例えば、電線管の中を直径2.0mmの電線が4本通っている場合、
- 直径2.0mmの電線の許容電流\(I_A\)は「\(I_A=35{\mathrm{A}}\)」
- 電線管の中に4本の電線が通っている場合の電流減少係数は「0.63」
となるので、電線1本あたりの許容電流\(I_B\)は
\begin{eqnarray}
I_B=I_A×電流減少係数=35×0.63{\;}{\approx}{\;}22{\mathrm{A}}
\end{eqnarray}
となります。次に各手順について詳細に説明します。
『単線』と『より線』の違い
単線は1本の電線(導体)で作られている電線です。一方、より線は複数の電線(導体)をより合わせて作られている電線です。
電線の太さごとの許容電流
「電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)」の第146条では、上表に示すように電線の太さごとに許容電流が定められています。
許容電流の基準となる電線の太さの単位は『単線』と『より線』で異なります。
- 単線の場合
- より線の場合
→導体の直径[mm]になります。
→導体の総断面積[mm2]となります。
電線を何本か電線管に収める場合の「電流減少係数」について
複数の電線を電線管などに通す場合には、電線の太さごとの許容電流に電流減少係数を掛けた値が電線1本あたりの許容電流となります。
「電流減少係数」は同一管内の電線数に応じて変わります。
電線を電線管に収めると、熱がこもり、拡散されにくくなるため、電線1本あたりの許容電流を小さくする必要があります。そのため、電線を単独で使用した場合の許容電流\(I_A\)に「電流減少係数」をかける必要があります。
電線の『許容電流』に関する例題
例題1
直径2.6mmの600Vビニル絶縁電線の許容電流は何Aか。
解答
直径2.6mmの電線の許容電流\(I_A\)は「電線の太さごとの許容電流」を示した表を参照すると「\(I_A=48{\mathrm{A}}\)」となります。
例題2
断面積5.5mm2の600Vビニル絶縁電線4本を電線管内に収めた時の電線1本あたりの許容電流は何Aか。
解答
- 断面積5.5mm2の電線の許容電流\(I_A\)は「\(I_A=49{\mathrm{A}}\)」
- 電線管の中に3本の電線が通っている場合の電流減少係数は「0.70」
となるので、電線1本あたりの許容電流\(I_B\)は
\begin{eqnarray}
I_B=I_A×電流減少係数=49×0.70=34.3{\;}{\approx}{\;}34{\mathrm{A}}
\end{eqnarray}
となります。
例題3
直径1.6mmの600Vビニル絶縁シースケーブル平形(VVF)3心の電線1本あたりの許容電流は何Aか。
解答
- 直径1.6mmの電線の許容電流\(I_A\)は「\(I_A=27{\mathrm{A}}\)」
- 3本の電線が通っている場合の電流減少係数は「0.7」
となるので、電線1本あたりの許容電流\(I_B\)は
\begin{eqnarray}
I_B=I_A×電流減少係数=27×0.7=18.9{\;}{\approx}{\;}19{\mathrm{A}}
\end{eqnarray}
となります。ケーブルは電線を収めて作られているので、電流減少係数を掛ける必要があります。
まとめ
この記事では電線の『許容電流』について、以下の内容を説明しました。
- 電線の『許容電流』とは
- 電線の『許容電流』の計算方法と例題
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