電圧や電力の『デシベル(dB)』とは?計算方法や変換方法について

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増幅回路やフィルタ回路などで電圧、電流、電力のゲインの計算を行う際に、デシベル(dB)という単位が使われることが多いです。
この記事では、このデシベル(dB)について計算方法変換方法などを詳しく説明します。

ゲイン(利得、増幅度・増幅率)とは

ゲイン(利得、増幅度・増幅率)とは
デシベル(dB)との関連用語であるゲインについてまず説明します。

ゲインとは増幅回路やフィルタ回路における入力と出力の比です。「出力/入力」は電圧、電流、電力のどれかになります。この記事では、電圧の場合を一例にとってゲインを説明します。

増幅回路やフィルタ回路の入力に入力電圧\(V_{IN}\)を入力すると、出力電圧\(V_{OUT}\)には入力電圧\(V_{IN}\)が増幅または減衰されたものが現れます。この入力電圧\(V_{IN}\)と出力電圧\(V_{OUT}\)の比をゲイン\(G_{V}\)と呼び、ゲイン\(G_{V}\)は出力電圧\(V_{OUT}\)の大きさを入力電圧\(V_{IN}\)の大きさで割ったもので表されます。

式で表すと以下のようになります。
\begin{eqnarray}
G_{V}=\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}
\end{eqnarray}
上記の式の単位は[倍]であり、デシベル(dB)ではありません。次にデシベルについて説明します。

補足

  • ゲインの変数\(G\)はゲイン(Gain)の頭文字から来ています。
  • 入力電流\(I_{IN}\)と出力電流\(I_{OUT}\)のゲインは変数\(G_{I}\)で表すことが多いです。
  • 入力電力\(P_{IN}\)と出力電力\(P_{OUT}\)のゲインは変数\(G_{P}\)で表すことが多いです。
  • ゲインは利得とも呼ばれています。電圧、電流、電力のゲインのことを電圧利得、電流利得、電力利得と呼びます。
  • ゲインは増幅度(増幅率)とも呼ばれています。増幅度(増幅率)は英語で「Amplification」と書くので、ゲインの変数を\(G\)ではなく\(A\)で表すこともあります。

デシベルとは?計算方法について

デシベルとは?計算方法について
ゲインの常用対数\({\log_{10}}\)を10倍もしくは20倍したものの単位がデシベル(dB)となります。

電力のゲイン\(G_{P}\)をデシベルで表す場合、ゲインの常用対数(\({\log_{10}}\))を10倍します。式で表すと以下のようになります。

\begin{eqnarray}
G_{P}=10{\log_{10}}G_{P}=10{\log_{10}}\frac{P_{OUT}}{P_{IN}}
\end{eqnarray}

電圧のゲイン\(G_{V}\)、電流のゲイン\(G_{I}\)をデシベルで表す場合、ゲインの常用対数(\({\log_{10}}\))を20倍します。式で表すと以下のようになります。

\begin{eqnarray}
G_{V}&=&20{\log_{10}}G_{V}=20{\log_{10}}\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}\\
G_{I}&=&20{\log_{10}}G_{I}=20{\log_{10}}\frac{I_{OUT}}{I_{IN}}
\end{eqnarray}

例えば、入力電圧\(V_{IN}\)に対して出力電圧が\(V_{OUT}\)が1000000倍(107倍)の時、デシベル表記では以下のようになります。
\begin{eqnarray}
G_{V}=20{\log_{10}}\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}=20{\log_{10}}10^7=140{\mathrm{[dB]}}
\end{eqnarray}
単位がデシベル(dB)の場合、10000000倍という大きな数字を140[dB]という小さな数字で表現することができます。このように、常用対数をとることにより大きな数を少なくでき、計算がしやすくなります。

補足

デシベル(dB)の”d”は英語の10を表すdecimalから、”B”は電話の発明者Bellの頭文字を表しています。Bellは名前なので”B”は大文字となります。

デシベルから電圧、電流、電力への変換方法について

デシベル(dB)の値が分かっている時において、電圧、電流、電力へ変換する方法を説明します。

電圧のゲイン\(G_{V}\)(dB)から入力電圧\(V_{IN}\)や出力電圧\(V_{OUT}\)を求める場合、
\begin{eqnarray}
G_{V}&=&20{\log_{10}}\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}\\
{\Leftrightarrow}\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}&=&10^{\cfrac{G_{V}}{20}}
\end{eqnarray}
となります。
電流のゲイン\(G_{I}\)(dB)から入力電圧\(I_{IN}\)や出力電圧\(I_{OUT}\)を求める場合、
\begin{eqnarray}
G_{I}&=&20{\log_{10}}\frac{I_{OUT}}{I_{IN}}\\
{\Leftrightarrow}\frac{I_{OUT}}{I_{IN}}&=&10^{\cfrac{G_{I}}{20}}
\end{eqnarray}
となります。
電力のゲイン\(G_{P}[dB]\)から入力電力\(P_{IN}\)や出力電力\(P_{OUT}\)を求める場合、
\begin{eqnarray}
G_{P}&=&10{\log_{10}}\frac{P_{OUT}}{P_{IN}}\\
{\Leftrightarrow}\frac{P_{OUT}}{P_{IN}}&=&10^{\cfrac{G_{P}}{10}}
\end{eqnarray}
となります。

デシベルと数値の変換表

デシベルと数値の変換表
上表にデシベルと数値の変換表を示しています。電圧、電流、抵抗はゲインが2倍になるごとに6dB変化します。また、10倍になるごとに20dB変化します。

一方、電力はゲインが2倍になるごとに3dB変化します。また、10倍になるごとに10dB変化します。

『電力のゲインの係数』が10で『電圧のゲインの係数』が20の理由

『電力のゲインの係数』が10で『電圧のゲインの係数』が20の理由
例えば、上図において、抵抗\(R\)で消費される電力\(P{\mathrm{[W]}}\)と電流\(I{\mathrm{[A]}}\)、電圧\(V{\mathrm{[V]}}\)、抵抗\(R{\mathrm{[{\Omega}]}}\)の関係は以下の式となります。
\begin{eqnarray}
P=I×V=R×I^2=\frac{V^2}{R}
\end{eqnarray}

上式より、

電圧\(V\)が2倍になると電力\(P\)は4倍となります
電圧\(V\)が10倍になると電力\(P\)は100倍になります。

例えば、以下の式のように『電力のゲインの係数』も『電圧のゲインの係数』も10の場合を考えてみます。
\begin{eqnarray}
G_{P}&=&10{\log_{10}}G_{P}=10{\log_{10}}\frac{P_{OUT}}{P_{IN}}\\
G_{V}&=&10{\log_{10}}G_{V}=10{\log_{10}}\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}
\end{eqnarray}
上の関係をデシベルで表現しようとすると、

電圧\(V\)が2倍(3dB)になると電力\(P\)は4倍(6dB)となります。
電圧\(V\)が10倍(10dB)になると電力\(P\)は100倍(20dB)となります。

このように、電圧\(V\)の3dBの増加が電力\(P\)の6dBの増加となり、ややこしくなります。

そこで、同じデシベル値となるように、『電圧のゲインの係数』を10ではなく20とします。電力\(P\)が電圧\(V\)の2乗に比例することから、対数計算では『電力のゲインの係数』の10に対して、2倍の補正を行うのです。これが、『電力のゲインの係数』が10で『電圧のゲインの係数』が20の理由です。
\begin{eqnarray}
G_{P}&=&10{\log_{10}}G_{P}=10{\log_{10}}\frac{P_{OUT}}{P_{IN}}\\
G_{V}&=&20{\log_{10}}G_{V}=20{\log_{10}}\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}
\end{eqnarray}
このように『電圧のゲインの係数』が20の場合、上の関係をデシベルで表現しようとすると、

電圧\(V\)が2倍(6dB)になると電力\(P\)は4倍(6dB)となります。
電圧\(V\)が10倍(20dB)になると電力\(P\)は100倍(20dB)となります。

電圧と電力のデシベル値が同じになっていることが確認できます。

数値の掛け算はデシベルでは足し算となる

数値の掛け算はデシベルでは足し算となる
ゲイン\(G_{V1}\)が2倍である増幅回路とゲイン\(G_{V2}\)が10倍である増幅回路が直列に接続されている構成を考えてみます。ゲイン\(G_{V1}\)が2倍である増幅回路のゲイン\(G_{V1}\)をデシベル表記すると、
\begin{eqnarray}
G_{V1}=20{\log_{10}}G_{V1}=20{\log_{10}}2=6{\mathrm{[dB]}}
\end{eqnarray}
となります。
ゲイン\(G_{V2}\)が10倍である増幅回路のゲイン\(G_{V2}\)をデシベル表記すると
\begin{eqnarray}
G_{V2}=20{\log_{10}}G_{V2}=20{\log_{10}}10=20{\mathrm{[dB]}}
\end{eqnarray}
となります。
そこで、各増幅回路は直列接続されているため、出力に現れる電圧は入力の2×10=20倍となります。そこで20倍をデシベル表記で表すと、
\begin{eqnarray}
G=20{\log_{10}}G=20{\log_{10}}20=26{\mathrm{[dB]}}=6{\mathrm{[dB]}}+20{\mathrm{[dB]}}
\end{eqnarray}
となります。26[dB]はゲイン\(G_{V1}\)とゲイン\(G_{V2}\)の足し算であることが分かります。

【その他】デシベルの単位(dBV,dBm)について

デシベル[dB]には[dBV][dBmV][dBμV][dBm]などの関連単位があります。各単位について説明します。

  • dBV
  • 1Vを基準とした単位は[dBV]で表示します。例えば、0dBVの場合には1Vということになります。

  • dBmV
  • 1mVを基準とした単位は[dBmV]で表示します。

  • dBμV
  • 1μV=10-6Vを基準した単位は[dBμV]で表示します。

  • dBW
  • 1Wを基準した単位は[dBW]で表示します。

  • dBm
  • 1mWを基準した単位は[dBm]で表示します。

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[dBV][dBmV][dBμV][dBm]の変換(換算)と計算式について!
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まとめ

この記事では、『デシベル(dB)』について、以下の内容を説明しました。

  • ゲイン(利得、増幅度・増幅率)とは
  • デシベル(dB)の計算方法
  • デシベル(dB)から電圧、電流、電力への変換する方法

お読み頂きありがとうございました。

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