『カットオフ周波数(遮断周波数)』とは?【フィルタ回路】

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この記事では、フィルタ回路において重要な用語である『カットオフ周波数(遮断周波数)』について

  • 『カットオフ周波数』とは
  • 『カットオフ周波数』の時の電力と電圧
  • 『カットオフ周波数』をシミュレーションで確かめてみる

などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。

『カットオフ周波数』とは

『カットオフ周波数』とは

カットオフ周波数とは、フィルタ回路において、通過域遷移域の境界となる周波数です。

上図にRCローパスフィルタを一例として、横軸を周波数\(f\)、縦軸をゲイン\(|G(j{\omega})|\)としたグラフを示します。縦軸のゲイン\(|G(j{\omega})|\)は入力電圧\(V_{IN}\)に対する出力電圧\(V_{OUT}\)の電圧比であり、次式で表されます。

\begin{eqnarray}
|G(j{\omega})|=\left|\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}\right|
\end{eqnarray}

ゲイン\(|G(j{\omega})|\)をデシベル[dB]で表す場合には、ゲインの常用対数(\({\log}_{10}\))を20倍します。したがって、次式に示すように、入力電圧\(V_{IN}\)と出力電圧\(V_{OUT}\)が等しくなるときは0dBとなります。

\begin{eqnarray}
20{\log}_{10}|G(j{\omega})|=20{\log}_{10}\left|\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}\right|=20{\log}_{10}1=0{\mathrm{[dB]}}
\end{eqnarray}

入力電圧\(V_{IN}\)の周波数\(f\)が高くなると、コンデンサ\(C\)のインピーダンスが小さくなり、出力電圧\(V_{OUT}\)が低くなる(すなわち、ゲイン\(|G(j{\omega})|\)が低下する)ということは見当がつくと思います。

ここで、通過域とは、入力電圧\(V_{IN}\)が減衰せずに通過する周波数帯域のことを示しています。また、減衰域とは、入力電圧\(V_{IN}\)を減衰させる周波数帯域のことを示しています。この通過域と減衰域の中間が遷移域となります。通過域遷移域の境界がカットオフ周波数となります。

あわせて読みたい

RCローパスフィルタの『伝達関数』・『ゲイン』・『周波数特性』などについては下記の記事でまとめていますので、ご参考になれば幸いです。

RCロ―パスフィルタの『伝達関数』や『周波数特性』について
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補足

  • 通過域は『通過帯域』とも呼ばれています。英語では『Pass Band』と書きます。
  • 減衰域は『減衰帯域、阻止帯域、阻止域』とも呼ばれています。英語では『Stop Band』と書きます。
  • 遷移域は『遷移帯域』とも呼ばれています。英語では『Transition Band』と書きます。
  • カットオフ周波数は、『遮断周波数(Cutoff frequency)』、『コーナー周波数(Corner frequency)』、『3dBポイント』とも呼ばれています。
  • 参考書によっては、遷移域の箇所も減衰域と定義している場合があります。この場合、通過域と減衰域の境界となる周波数がカットオフ周波数となります。

『カットオフ周波数』の時の電力と電圧

『カットオフ周波数』の時の電力と電圧

通過域遷移域の境目であるカットオフ周波数\(f_C\)では、ゲイン\(|G(j{\omega})|\)が通過域平坦部から3dB低下しています。

カットオフ周波数\(f_C\)では、電力は通過域平坦部の\(\displaystyle\frac{1}{2}倍\)となります。一方、電圧は通過域平坦部の\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}=約0.707倍\)となります。

カットオフ周波数\(f_C\)は言い換えれば、『入力電圧\(V_{IN}\)がフィルタを通過する電力(エネルギー)』と『入力電圧\(V_{IN}\)がフィルタによって減衰される電力(エネルギー)』の境目となります。

『入力電圧\(V_{IN}\)の周波数\(f\)』が『フィルタ回路のカットオフ周波数\(f_C\)』と等しい時には、半分の電力(エネルギー)しかフィルタ回路を通過することができないのです。

あわせて読みたい

カットオフ周波数\(f_C\)でゲインが-3dBになる理由については以下の記事で式を用いて説明しています。

【フィルタ回路】カットオフ周波数(遮断周波数)でゲインが-3dBになる理由
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補足

  • カットオフ周波数\(f_C\)はゲインが通過域平坦部から3dB低下する周波数ですが、傾きが急なフィルタでは実用的ではないため、例えば、0.1dB低下した時の周波数をカットオフ周波数として定義する場合もあります。

RCローパスフィルタの『カットオフ周波数』を導出してみる

RCローパスフィルタの『カットオフ周波数』を導出してみる

一例として、RCローパスフィルタの『カットオフ周波数』の導出方法について説明します。

『抵抗\(R\)のインピーダンス\({\dot{Z}_R}\)』と『コンデンサ\(C\)のインピーダンス\({\dot{Z}_C}\)』は次式で表されます。

\begin{eqnarray}
{\dot{Z}_R}&=&R\tag{1-1}\\
\\
{\dot{Z}_C}&=&\frac{1}{j{\omega}C}\tag{1-2}
\end{eqnarray}

出力電圧\(V_{OUT}\)は入力電圧\(V_{IN}\)を\({\dot{Z}_R}\)と\({\dot{Z}_C}\)で分圧しているので、次式で表されます。

\begin{eqnarray}
V_{OUT}=\displaystyle\frac{{\dot{Z}_C}}{{\dot{Z}_R}+{\dot{Z}_C}}V_{IN}=\frac{\displaystyle\frac{1}{j{\omega}C}}{R+\displaystyle\frac{1}{j{\omega}C}}V_{IN}=\frac{1}{1+j{\omega}CR}V_{IN}\tag{1-3}
\end{eqnarray}

RCローパスフィルタの伝達関数\(G(j{\omega})\)は入力電圧\(V_{IN}\)と出力電圧\(V_{OUT}\)の比です。そのため、(1-3)式を変形すると、伝達関数\(G(j{\omega})\)は次式で表すことができます。

\begin{eqnarray}
G(j{\omega})=\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}=\frac{1}{1+j{\omega}CR}\tag{1-4}
\end{eqnarray}

(1-4)式の分母には虚数単位\(j\)があります。ここで分子のみに虚数単位\(j\)がくるようにするために、分母と分子に『\(1-j{\omega}CR\)』を掛けます。すると(1-4)式は次式に変形することができます。

\begin{eqnarray}
G(j{\omega})=\frac{1}{1+j{\omega}CR}×\frac{1-j{\omega}CR}{1-j{\omega}CR}=\frac{1}{1+({\omega}CR)^2}-j\frac{{\omega}CR}{1+({\omega}CR)^2}\tag{1-5}
\end{eqnarray}

伝達関数\(G(j{\omega})\)の絶対値がRCローパスフィルタのゲイン\(|G(j{\omega})|\)となります。もう少し詳しく説明すると、RCローパスフィルタのゲイン\(|G(j{\omega})|\)は(2-5)式において、『実部\(\left\{\displaystyle\frac{1}{1+({\omega}CR)^2}\right\}\)の2乗』と『虚部\(\left\{\displaystyle\frac{-{\omega}CR}{1+({\omega}CR)^2}\right\}\)の2乗』を足して、平方根を取ることで求めることができます。そのため、ゲイン\(|G(j{\omega})|\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
|G(j{\omega})|&=&\sqrt{\left\{\frac{1}{1+({\omega}CR)^2}\right\}^2+\left\{\frac{-{\omega}CR}{1+({\omega}CR)^2}\right\}^2}\\
\\
&=&\sqrt{\frac{1+({\omega}CR)^2}{\left\{1+({\omega}CR)^2\right\}^2}}\\
\\
&=&\sqrt{\frac{1}{1+({\omega}CR)^2}}\\
\\
&=&\frac{1}{\sqrt{1+({\omega}CR)^2}}\tag{1-6}
\end{eqnarray}

ここで、角周波数\({\omega}\)は\({\omega}=2{\pi}f\)の関係があるので、(2-6)式の\({\omega}\)を\(2{\pi}f\)に書き換えると、次式となります。

\begin{eqnarray}
|G(j{\omega})|=\frac{1}{\sqrt{1+(2{\pi}fCR)^2}}\tag{1-7}
\end{eqnarray}

カットオフ周波数\(f_C\)は、RCローパスフィルタのゲイン\(|G(j{\omega})|\)が\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}({\;}{\approx}{\;}0.707)\)になる周波数であり、次式となります。

\begin{eqnarray}
\frac{1}{\sqrt{2}}&=&|G(j{\omega})|\\
\\
&=&\frac{1}{\sqrt{1+(2{\pi}f_CCR)^2}}\\
\\
{\Leftrightarrow}\sqrt{1+(2{\pi}f_CCR)^2}&=&\sqrt{2}\\
\\
1+(2{\pi}f_CCR)^2&=&2\\
\\
(2{\pi}f_CCR)^2&=&1\\
\\
2{\pi}f_CCR&=&1\\
\\
f_C&=&\frac{1}{2{\pi}CR}\tag{1-8}
\end{eqnarray}

RCローパスフィルタの時定数\({\tau}\)は『\({\tau}=RC\)』なので、(1-8)式の\(RC\)を\({\tau}\)に置き換えると次式となります。

\begin{eqnarray}
f_C=\frac{1}{2{\pi}CR}=\frac{1}{2{\pi}{\tau}}\tag{1-9}
\end{eqnarray}

つまり、カットオフ周波数\(f_C\)は時定数\({\tau}\)に反比例します。抵抗の抵抗値\(R\)が大きいほど、コンデンサの静電容量\(C\)が大きいほど、カットオフ周波数\(f_C\)は低くなります。

カットオフ周波数をシミュレーションで確かめてみる

カットオフ周波数をシミュレーションで確かめてみる

抵抗\(R=1{\mathrm{[kΩ]}}\)、コンデンサ\(C=1{\mathrm{[μF]}}\)において、RCローパスフィルタのシミュレーションをLTspiceで行ってみます。『周波数特性』をLTspiceで描くためには『AC解析』を用います。

RCローパスフィルタのカットオフ周波数\(f_C\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
f_C&=&\frac{1}{2{\pi}CR}\\
\\
&=&\frac{1}{2{\pi}×1×10^{-6}×1×10^{3}}\\
\\
&=&159.154{\cdots}\\
\\
&{\approx}&159{\mathrm{[Hz]}}\tag{5-1}
\end{eqnarray}

シミュレーション結果を見ると、カットオフ周波数\(f_C{\;}{\approx}{\;}159{\mathrm{[Hz]}}\)でゲイン\(|G(j{\omega})|\)が約-3dBになっていることが確認できます。

.ac dec 100 1 10k』は『信号源(ここでは入力電圧\(V_{IN}\))の周波数を1Hz~10kHzに変化させる。この時、1ディケード(10倍)当たりのステップ数を100とする。』という意味です。

LTspiceでのAC解析の方法は下記の記事で説明していますので、ご参考にしてください。

【LTspice】周波数特性を観測する『.ac解析』の使い方と応用
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まとめ

この記事では『カットオフ周波数(遮断周波数)』について、以下の内容を説明しました。

  • 『カットオフ周波数』とは
  • 『カットオフ周波数』の時の電力と電圧
  • 『カットオフ周波数』をシミュレーションで確かめてみる

お読み頂きありがとうございました。

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