この記事では放電について
- 放電の種類
- 火花放電
- コロナ放電
- グロー放電
- アーク放電
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
放電の種類
放電とは、電極間にかかる電位差を高くすると、電極間に存在する気体(空気など)が絶縁破壊されて、電流が流れる現象です。
放電はその形態によって、上図に示すように火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電などの種類があります。
「コンデンサや電池などに蓄積していた電荷を失う現象」も放電と呼びます(反対語は充電)。この記事では気体が絶縁破壊されて生じる放電現象について説明しています。
火花放電
火花放電は、電極間に印加する電圧がある限界を超えると、火花を伴った放電が生じる現象です。火花放電は不連続な放電であり、一般的には短時間に消滅します。
この火花放電が連続すると、グロー放電やアーク放電に移行します。また、火花が飛び散る寸前をコロナ放電といいます。
火花放電の身近な例
- 自然現象の雷
雷は帯電した積乱雲と大地間または積乱雲間で発生する大規模な火花放電となっています。
火花放電の原理
- 電極間に印加する電圧を高くして、電界を強くすると、電極間に存在する電子が電界により加速し、気体中の分子に衝突して電離します(α作用と呼びます)。
- この電離によって生成された正イオンが陰極に衝突すると、負極から電子が放出されます(二次電子放出)。
- この二次電子放出により陰極から電子が電極間の空間に供給されます(γ作用と呼びます)。
- これら2つの作用(α作用とγ作用)によって生成される電子の量が雪なだれのように増加し、電極間に大電流が流れます。
- 大電流が流れると気体が加熱され、高温となり光が発生します。
補足
- 火花放電は英語では「Spark Discharge」と書きます。
- 火花放電は「フラッシオーバ(Flashover)」とも呼ばれています。
コロナ放電
コロナ放電は、先の尖った電極(針電極)の先端の電界の強さが局部的に高くなることにより起こる持続的な放電の現象です。コロナ放電によって流れる電流は小さく、数μA程度となっています。
コロナ放電は火花放電になる前の状態です。
コロナ放電が発生すると「ジーッ」という音やかすかな光を発し、空気中にオゾンを発生させます。この発光部を「コロナ」といいます。
コロナ放電の身近な例
- 電気集塵機
- 高圧の送電線
電気集塵機は平行電極の中間に放電極がある構造をしています。平行電極にプラス、放電極にマイナスの高電圧を印加すると、放電極から気体中にイオンを放出します。すると、ガスや煙がマイナスに帯電し、クーロン力により平行電極に引き寄せられ、堆積されます。その結果、放電極に引き寄せられないきれいな空気だけが外に排出されます。
高圧の電線の表面部分は高電圧のため、コロナ放電が生じやすくなっています。コロナ放電が生じると、電力損失、導体の腐食、電線の振動などを招く可能性があります。また、コロナ電流には高周波成分が含まれているため、可聴雑音や電波障害を招く可能性があります。これを防ぐために、太い電線を用いたり、複数の電線を平行に用いたり、電線間隔を長くすることで、電線の表面の電界の大きさを小さくする工夫がされています。また、コロナ放電は晴天の時よりも、雨・雪・霧などの時の方が発生しやすくなっています。
補足
- コロナ放電は英語では「Corona Discharge」と書きます。
- コロナ放電は気体が局部的に絶縁破壊される現象なので、「局部破壊放電」とも呼ばれています。
- コロナ放電は周波数が高いほで、短時間で絶縁破壊に至ります。
- 気圧が低くなるほどコロナ臨界電圧(コロナが発生する最小の電圧)が小さくなるため、コロナ放電は発生しやすくなります。
- コロナは針電極の極性により状態が異なり、正針コロナ(正極性コロナor正性コロナとも呼ばれる。針電極を陽極とした場合のコロナ)と負針コロナ(負極性コロナor負性コロナとも呼ばれる。針電極を陰極とした場合のコロナ)があります。負針コロナは正針コロナに比べ低い電圧で形成されます。
グロー放電
グロー放電は、低圧気体中(数Pa)で生じる持続的な放電の現象です。
電極間に印加する電圧を高くして、電界を強くすると、電極間に存在する電子が電界により加速し、気体中の分子に蓄積して電離します(α作用と呼びます)。この電離によって生成された正イオンが陰極に衝突すると、負極から電子が放出されます(二次電子放出)。この二次電子放出により陰極から電子が電極間の空間に供給されます(γ作用と呼びます)。この電子が陽極と陰極の間を移動することにより大きな電流となります。
この流れる電流が増加するとアーク放電となります。
もう少し詳しく
上図に示すように、放電管(ガラス管)の両端に電極を封入し、放電管内の気圧を低圧(数Pa)にして、電極間に高電圧を印加すると、グロー放電が生じます。
グロー放電の時に発生する光の色は放電管に封入したガスの種類によって異なります。
グロー放電が生じている時、各部には名称がつけられており、陰極側から「アストン暗部→陰極グロー(陰極層)→陰極暗部(クルックス暗部)→負グロー→ファラデー暗部→陽光柱→陽極グロー→陽極暗部」となっております。
グロー放電の身近な例
- ネオンサイン
- 蛍光灯
ネオンサインはグロー放電の陽光柱の光を利用したものです。
補足
- グロー放電は英語では「Glow Discharge」と書きます。
アーク放電
グロー放電の状態からさらに印加する電圧を高くして(または、抵抗Rを小さくして)、電流を増加させるとアーク放電となります。アーク放電は激しい光と熱を発します。
グロー放電とアーク放電を比較すると、グロー放電は「高電圧・小電流」であり、放電管内の気体の分子の温度が低くなっていますが、アーク放電は「低電圧・大電流」であり、放電管内の気体の分子の温度が非常に高くなっています(約5000℃~20000℃)。
また、アーク放電は放電電流が2次電子放出によらない放電の現象であり、放電の最終形態となっています。
アーク放電の種類
アーク放電には大きく分けて、熱陰極アーク放電と冷陰極アーク放電の2種類の放電形式があります。各放電形式の特徴は以下のようになっています。
- 熱陰極アーク放電
- 冷陰極アーク放電
熱陰極アーク放電は陰極からの電子放出によって、陰極が加熱されて起こる熱電子放出によるアーク放電です。陰極が炭素やタングステンなどの高沸点材の場合にはこの熱陰極アーク放電になるとされていますが、不明な点が多いのが現状です。
冷陰極アーク放電は陰極表面に存在する非常に強い電界により直接電子が放出されるアーク放電です。電界アークとも呼ばれてます。陰極が鉄や銅などの低沸点材の場合にはこの冷陰極アーク放電になるとされていますが、不明な点が多いのが現状です。
アーク放電の身近な例
- アーク溶接
- 蛍光灯
→熱陰極アーク放電を利用しています。
補足
- アーク放電は英語では「Ark Discharge」と書きます。
- アーク放電は「電弧放電」とも呼ばれています。
まとめ
この記事では放電ついて、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- 放電の種類
- 火花放電
- コロナ放電
- グロー放電
- アーク放電
お読み頂きありがとうございました。
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