この記事では、トライアックの特徴、回路記号、構造、駆動方法、用途などを詳しく説明します。
トライアックの『特徴』と『回路記号』
トライアック(TRIAC)とは、パワー半導体の一種であり、双方向の電流を1つのゲート電極で制御することができる素子です。
原理的には、一方向の電流を制御することができるSCR(逆阻止3端子サイリスタ)を逆並列に接続することで、双方向の電流を制御できるようにしたものとなります。トライアックは、双方向に電流を流せることから、交流電源の制御に広く用いられています。
トライアックは上図に示すように、メインターミナル(MT1)、メインターミナル(MT2)、ゲート(G)の3つの端子があり、ゲート(G)に信号を与えることで、MT1からMT2に、その逆のMT2からMT1に電流を流せるようになります。
補足
- MT1とMT2は、アノード1とアノード2とも呼ばれます。
- トライアックの端子は「MT」ではなく、「T1、T2、G」と「T」で表していることもあります。
- トライアックは、日本語では「双方向サイリスタ」、「双方向3端子サイリスタ」、「双方向性3端子サイリスタ」、「二方向3端子サイリスタ」、「3極双方向サイリスタ」など様々な呼ばれ方をしています。
- トライアック(TRIAC)は、TRIode AC Switchの略です。Triodeは3極の素子のことを意味し、ACは交流(Alternating Current)を意味します。そのため、交流を双方向にスイッチする3極の素子ということを意味しています。
- トライアックは、1964年にアメリカのゼネラル・エレクトリック社が開発した素子です。ゼネラル・エレクトリック社が先駆けて発売した際の製品名が「Triode AC Switch」であり、それを略して、「TRIAC」となりました。
トライアックの『駆動方法』
MT2がMT1に対して順方向にバイアスされている場合(MT2がプラスでMT1がマイナスの場合)
- ゲート電圧が印加していない時
- ゲート電圧を印加した時
電流はMT2からMT1に流れません。
電流はMT2からMT1に流れます。サイリスタと同様に一旦トライアックがオンになると、ゲート電圧による制御が失われます。トライアックがオフになるためには、トライアックに流れる電流がゼロ(厳密には保持電流以下)になる必要があります。
MT2がMT1に対して逆方向にバイアスされている場合(MT2がマイナスでMT1がプラスの場合)
- ゲート電圧が印加していない時
- ゲート電圧を印加した時
電流はMT1からMT2に流れません。
電流はMT1からMT2に流れます。サイリスタと同様に一旦トライアックがオンになると、ゲート電圧による制御が失われます。トライアックがオフになるためには、トライアックに流れる電流がゼロ(厳密には保持電流以下)になる必要があります。
なお、実際にトライアックを用いる際には、抵抗等を用いてトライアックに流れる電流を制限する必要があります。
補足
トライアックの『トリガモード』と『4つの象限』について
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トライアックの『構造』
先ほど、SCR(逆阻止3端子サイリスタ)を逆並列に接続したのがトライアックといいました。動作の原理的にはサイリスタを逆並列に接続したものとなりますが、構造は別です。
トライアックは、サイリスタを2つ組み合わせた構造ではなく、P型半導体とN型半導体が上図のように組み合わさった構造をしています。
- ゲート端子(G)
金属端子によって、N4領域とP2領域の両方に接続されています。 - MT1端子
- MT2端子
金属端子によって、N2領域とP2領域の両方に接続されています。
金属端子によって、N3領域とP1領域の両方に接続されています。
トライアックの『用途』
トライアックは、交流を制御できることから主に以下の用途で用いられています。
- ACスイッチ
- 調光器の制御
- モーターの回転数制御
- 温度制御
- 速度制御
家庭用の扇風機、ルームエアコン、洗濯機、調理用ミキサーなど
冷蔵庫、電気毛布など
エレベーターや交流電車など
まとめ
この記事ではトライアックについて、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- トライアックの『特徴』と『回路記号』
- トライアックの『駆動方法』
- トライアックの『構造』
- トライアックの『用途』
お読み頂きありがとうございました。
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