トランスの巻き方の種類について

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トランスには様々な巻き方の種類があります。整列巻き、スペース巻き、サンドイッチ巻き、セクション巻き、バイファイラ巻き・・・等。この巻き方によって、トランスの結合や漏れインダクタンス、浮遊容量が変化します。これらの巻き方が実際にどのように巻かれているのかを図で詳しく説明します。

トランスの1次巻線のみに注目した場合の巻き方

トランスの1次巻線のみに注目した場合の巻き方

整列巻き

整列巻き
整列巻き(完全整列巻き)とは、巻線を適当に巻くのではなく、均一に巻く方法です。

均一に巻くことで、巻線の占積率が上がり、省スペース化を図ることができます。巻き数が少なく、1層になる場合には、単層巻き1相巻きと呼ばれています。

スペース巻き

スペース巻き
1巻きずつの間隔を広げ、ボビンの端から巻く方法です。

スイッチング電源においては、巻き数が少ない場合があります(フライバックコンバータなどは、1次側が数十巻きですが、2次側が数巻きしかしない場合があります)。不均等巻きにしてしまうと、巻線がボビンの端によってしまい、結合が悪くなり、漏れインダクタンスの値が上昇します。この場合、スペース巻きにすることで、1次巻線と2次巻線の結合が高まり、漏れインダクタンスの値を少なくすることができます。

不均等巻き

不均等巻き
巻き数が少ない場合にスペース巻きにするのではなく、ボビンの端に詰めて巻く方法です。

結合が悪くなり、漏れインダクタンスの値が上昇します。

整列多層巻き

整列多層巻き
巻き始めて、ボビンの端に行ったら、折り返して巻きます。再びボビンの端にいったら再び折り返して巻きます。これを繰り返して巻く方法です。

整列巻きにおいて、2層以上になる場合には、整列多層巻きと呼ばれます。電線の直径を1ピッチとすると、2層目は1層目に対して1/2ピッチずれて、規則正しく巻かれます。積層されているので、積層巻きと呼ばれることもあります(単に「多層巻き」とも呼ばれています)。

斜行巻き

斜行巻き
整列多層巻きと比較すると、小型化に有利な巻き方です。一般的にこのような巻き方をしているのは少ないと思われます。

トランスの1次巻線と2次巻線に注目した場合の巻き方

トランスの1次巻線と2次巻線に注目した場合の巻き方

重ね巻き

重ね巻き
1次巻線と2次巻線を重ねて巻く方法です。

分割巻きと比較して、1次巻線と2次巻線の結合度が高まります。巻線間にテープやスペーサ等を挿入して1次巻線と2次巻線を離すことで、結合が弱まり、漏れインダクタンスを増加させる場合もあります。

分割巻き・セクション巻き

分割巻き・セクション巻き
1次巻線と2次巻線を重ねず、分けて巻く方法です。

重ね巻きと比較すると、結合度が弱く、漏れインダクタンスが大きいため、共振用のインダクタンスとして利用する場合があります。漏れ磁界が多いので、ノーマルインピーダンスが発生します。そのため、ノイズフィルタとして用いると、ノーマル成分のノイズにも効果があります。1次巻線と2次巻線の距離が遠いので、耐圧が必要な場合も有利です。

バイファイラ巻き

バイファイラ巻き
2本の導線を一対にして交互に巻く方法です。

重ね巻きの場合、1次巻線と2次巻線で巻線の長さに差が生じ、バランスが悪くなります。バイファイラ巻きは2本の巻線が密着しているため、結合が良く、漏れインダクタンスを減らすことができますが、浮遊容量が大きくなります。

サンドイッチ巻き

サンドイッチ巻き
2次巻線を1次巻線で挟み込み巻く方法です(2次巻線で挟み込み巻く方法も同様にサンドイッチ巻きです)。

「1次→2次→1次」だけでなく、「1次→2次→1次→2次」と交互に巻く方法もサンドイッチ巻きと呼ばれています。

重ね巻きよりも結合力が高いため、漏れインダクタンスがより低下します。一方、 浮遊容量(寄生容量、ストレイキャパシタンス)がより大きくなります。結合を高くしたいけど、巻き数が多くなり、2列や3列に巻くことになるような場合にサンドイッチ巻きはおすすめです。

サンドイッチ巻きは重ね巻きよりも結合力が高いですが、層数が多くなるので、コストが増大します。また、ボビン数が多くなるという欠点があります。

例えば、1次巻線が40巻きで2次巻線が8巻きの場合、1次巻線の巻線を1/2の20巻きに分割して、「1次巻線(20巻き)→2次巻線(8巻き)→1次巻線(20巻き)」として巻きます。

巻線を分割した場合には、電流分割と電圧分割が存在します。下に一例を示します。
サンドイッチ巻きの例

この例では1次巻線と2次巻線を分割しており、1次巻線を電圧分割、二次巻線を電流分割としています。電流分割は、各巻線を最終的に並列に接続します。電圧分割は、各巻線を最終的に直列に接続します。電流分割巻きは大きな電流が流れる場合に、電流分割巻きにすると、巻線を細くすることができます。

大きな電流を流すときは電流分割を!

大きな電流を流すときは電流分割を!
巻線に大電流を流す場合には、太い巻線が必要となります。しかし、太い巻線ではトランスを巻きにくくなってしまします。この場合、細い電線を何本か並列にして巻く手法が用いられます。2並列の場合をバイファイラ巻き、3並列の場合をトリファイラ巻きと呼ばれています。

合体例(バイファイラ巻き+スペース巻き)

合体例(バイファイラ巻き+スペース巻き)
今まで紹介した巻き方を組み合わせて使用することがあります。上図はバイファイラ巻きとスペース巻きを合わせた場合です。この巻き方は、電流が大きく流れるのでバイファイラ巻きにし、結合を良くしたいのでスペース巻きにしています。

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