この記事では『残留磁束密度(残留磁化)』と『保持力』について
- 『残留磁束密度(残留磁化)』とは?
- 『保持力』とは?
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
『残留磁束密度(残留磁化)』と『保持力』とは?
残留磁束密度\(B_r\)とは、鉄・フェライト・コバルトなどの磁性体(コア)の磁気特性を表すヒステリシス曲線(上図に示している磁束密度\(B\)と磁界\(H\)の関係を示す曲線)において、磁性体が磁気飽和する(飽和磁束密度\(B_S\)に達する)まで磁界の強さ\(H\)を強めた後に、磁界の強さ\(H\)を0に戻した時に残る磁束密度\(B\)の値です。
もう少し詳しく説明します。
コイル(インダクタ)は、鉄・フェライト・コバルトなどの磁性体(コア)に電線を巻くことで構成されています。コイル(インダクタ)に流す電流\(I{\mathrm{[A]}}\)と磁界の強さ\(H{\mathrm{[A/m]}}\)には比例関係があるため、コイル(インダクタ)に流す電流\(I\)を大きくすると、磁界の強さ\(H\)が大きくなります。
すなわち、コイル(インダクタ)に電流\(I\)を流すと磁界(磁場)\(H\)が発生します。この磁界\(H\)によって、磁性体は磁化を帯びます(磁化されます)。この時、単位面積当たりのN極からS極へ向かう磁界の流れを磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)といい、磁石の強さを表します。
電流\(I\)を大きくすると(磁界の強さ\(H\)を大きくすると)、磁束密度\(B\)が大きくなりますが、曲線は徐々に緩やかになり、最終的には、電流\(I\)を大きくしても(磁界の強さ\(H\)が大きくなっても)磁束密度\(B\)が一定となります。その箇所が飽和磁束密度\(B_S\)となります。飽和磁束密度\(B_S\)の箇所では、コイル(インダクタ)が磁気飽和しています。
また、飽和磁束密度\(B_S\)まで磁界の強さ\(H\)を強めた後に、磁界の強さ\(H\)を0に戻しても、磁化された磁性体には磁力が残ります。この時の磁束密度\(B\)を残留磁束密度\(B_r\)と呼びます。
この残留磁束密度\(B_r\)を無くすためには、磁界\(H\)の向きを逆向きにする必要があります。残留磁束密度\(B_r\)をゼロにするのに必要な磁界の強さ\(H\)を保持力\(H_C\)と呼びます。保持力\(H_C\)は言い換えれば、残留磁束密度\(B_r\)の残りやすさとなります。保持力\(H_C\)が大きいほど、残留磁束密度\(B_r\)が残りやすいということなので、永久磁石としては性能が良いということになります。
これまで説明した残留磁束密度\(B_r\)と保持力\(H_C\)は永久磁石の磁気パワーを示す指標となります。永久磁石は磁界の強さ\(H\)をゼロにしても磁化された状態を維持したいため、永久磁石のヒステリシス曲線は下図のようになります。
補足
- ヒステリシス曲線はB-Hカーブ、磁化曲線、磁気ヒステリシス曲線、ヒステリシス環線とも呼ばれています。
- 残留磁束密度\(B_r\)は残留磁化(Residual Magnetization)とも呼ばれます。
- 残留磁束密度\(B_r\)は英語では『Residual magnetic flux density』や『Remanence』と書きます。
- 保持力\(H_C\)は英語では『Coercive Force』、『Coercive Strength』や『Coercively』と書きます。
まとめ
この記事では『残留磁束密度(残留磁化)』と『保持力』について、以下の内容を説明しました。
- 『残留磁束密度(残留磁化)』とは?
- 『保持力』とは?
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