『ヒステリシス損失』とは?「式」や「原因」について分かりやすく説明します!

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この記事では『ヒステリシス損失』について

  • 『ヒステリシス損失』とは?
  • 『ヒステリシス損失』の式と原因

などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。

『ヒステリシス損失』とは?

『ヒステリシス損失』とは?

コイル(インダクタ)は、鉄・フェライト・コバルトなどの磁性体(コア)に電線を巻くことで構成されています。コイル(インダクタ)に流す電流\(I{\mathrm{[A]}}\)と磁界の強さ\(H{\mathrm{[A/m]}}\)には比例関係があるため、コイル(インダクタ)に流す電流\(I\)を大きくすると、磁界の強さ\(H\)が大きくなります。

すなわち、コイル(インダクタ)に電流\(I\)を流すと磁界(磁場)\(H\)が発生します。この磁界\(H\)によって、磁性体は磁化を帯びます(磁化されます)。この時、単位面積当たりのN極からS極へ向かう磁界の流れを磁束密度\(B{\mathrm{[T]}}\)といい、磁石の強さを表します。

ここで上図にヒステリシス曲線(磁束密度\(B\)と磁界\(H\)の関係を示す曲線)を示しています。コイルに交流電流を流した場合、交番磁界(時間と共に大きさと方向が変化を繰り返す磁界)が発生しますが、鉄心のヒステリシスによって、磁束密度\(B\)はヒステリシスループを描きます。

ヒステリシス損失はヒステリシスループで囲まれた面積となります。そのため、面積が小さいほどヒステリシス損失が小さくなります。ヒステリシスループ1周による鉄心のエネルギー損失\(W_H\)は以下の式で表されます(\(K_H\):鉄心材料のヒステリシス係数、\(B_M\):最大磁束密度\({\mathrm{[T]}}\))。
\begin{eqnarray}
W_H={K_H}{{B_M}^{1.6}}{\mathrm{[J/m^3]}}
\end{eqnarray}

上式はヒステリシスループ1周でのエネルギー損失\(W_H\)となっています。交番磁界の周波数が\(f{\mathrm{[Hz]}}\)の場合、ヒステリシスループは1秒間に\({\;}f{\;}\)回周ることになるため、ヒステリシス損失\(P_H\)は以下の式で表されます。

\begin{eqnarray}
P_H=W_H×f={K_H}f{{B_M}^{1.6}}{\mathrm{[W/m^3]}}
\end{eqnarray}

上式は理論式ではなく、スタインメッツ(Steinmetz)というアメリカの電気工学者が実験から求めた実験式となっています。

最大磁束密度\(B_M\)にある「1.6」はスタインメッツ定数と言われており、材料の条件によっては「2」とする場合があります。そのため、参考書によって「1.6」の場合もあれば「2」の場合もあります。

補足

  • ヒステリシス曲線はB-Hカーブ、磁化曲線、磁気ヒステリシス曲線、ヒステリシス環線とも呼ばれています。
  • ヒステリシス損失は、鉄心内の磁束方向の変化によって、鉄心中の磁気分子の方向と配列が変化し、分子相互間で摩擦が生じることによるものです。
  • ヒステリシス損失は、英語では『Hysteresis loss』と書きます。
  • ヒステリシス損失は鉄損の一部です。鉄損は主にヒステリシス損失渦電流損失から成ります。渦電流損失については下記の記事で説明していますので、ご参考になれば幸いです。
  • 渦電流損失とは?『原理』や『計算式』などを解説!
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まとめ

この記事では『ヒステリシス損失』について、以下の内容を説明しました。

  • 『ヒステリシス損失』とは?
  • 『ヒステリシス損失』の式と原因

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