この記事ではリレーについて
- リレーに逆起電力が発生する原理
- 逆起電力による影響
- リレーの保護回路
を図を用いて説明しています。
リレーに逆起電力が発生する原理
リレーは内部に搭載されているコイルに電流を流すことでON/OFFすることができる素子です。
リレーの駆動回路は上図のようにコイルに直列にスイッチを接続します。
スイッチをONすることで、コイルに電流を流し、リレーをONすることができます。スイッチをOFFして、コイルに流れる電流を遮断すると、逆起電力により大きなサージ電圧が発生します。
これを防止するためには、保護回路を接続する必要があります。例えば、上図の右に示すようにダイオードやCRスナバをコイルに並列に接続します(後ほど、保護回路について詳しく説明します)。
ではなぜ、コイルに流れる電流を遮断すると逆起電力が発生するのでしょうか。その理由について次に説明します。
コイルは電流を流し続けようとする特徴があります。そのため、スイッチをOFFすると、コイルは電流を流し続けようとするため、スイッチの上側がプラス、電源側がマイナスとなる逆起電力が発生するのです。
この逆起電力の大きさは、次式で表すことができます。
逆起電力の大きさ
\begin{eqnarray}
V_L=L\frac{dI}{dt}{\mathrm{[H]}}\tag{1}
\end{eqnarray}
- 逆起電力:\(V_L{\mathrm{[V]}}\)
- コイルのインダクタンス:\(L{\mathrm{[H]}}\)
- コイルに流れる電流の変化量:\(dI{\mathrm{[A]}}\)
- 電流の変化に要する時間:\(dt{\mathrm{[s]}}\)
例えば、
- コイルのインダクタンス:\(L=0.5{\mathrm{[H]}}\)
- コイルに流れる電流の変化量:\(dI=-10{\mathrm{[mA]}}\)
- スイッチのOFF時間(すなわち、コイルに流れる電流の変化に要する時間):\(dt=10{\mathrm{[μs]}}\)
とすると、(1)式より逆起電力\(V_L\)は以下の値となり、かなり大きなサージ電圧が発生してしまうことが分かります(スイッチをOFFすると電流が減少するので\(dI\)はマイナスとなります)。
\begin{eqnarray}
V_L&=&L\frac{dI}{dt}\\
&=&0.5{\mathrm{[H]}}×\frac{-10{\mathrm{[mA]}}}{10{\mathrm{[μs]}}}\\
&=&0.5{\mathrm{[H]}}×\frac{-10×10^{-3}{\mathrm{[A]}}}{10×10^{-6}{\mathrm{[s]}}}\\
&=&-500{\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}
この逆起電力\(V_L\)はマイナスとなっているため、逆起電力の向きはスイッチの上側がプラス、電源側がマイナスとなります。その結果、スイッチに過電圧が印加されてしまい、スイッチの寿命が短くなったり、最悪の場合は破壊する可能性があります。
そのため、リレーには上図の右に示すような保護回路を接続し、逆起電力(大きなサージ電圧)を抑制することが必要となるのです。
関連知識
「スイッチをONすることで、コイルに電流を流れ、リレーをONすることができます。」といいましたが、コイルに電流を流すことでOFFとなるリレーもあります。電流が流れてリレーがONするのをa接点、リレーがOFFになるのをb接点と呼びます。詳しくは以下の記事で説明していますので、参考にしてください。
【リレー】「a接点」・「b接点」・「c接点」の違いや記号について!
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逆起電力による影響
先ほどスイッチをON/OFFさせてリレー内部のコイルに流す電流を制御させていましたが、スイッチではなく、トランジスタを用いた場合でも逆起電力(大きなサージ電圧)により影響があります。
トランジスタは用いた場合
- トランジスタが破壊する可能性がある。
- 逆起電力により周辺にノイズを出して、周辺機器の誤動作を引き起こす可能性がある。
スイッチを用いた場合
- 接点の寿命が短くなる。
- スパークが発生し、スパークした箇所が溶けたり発火したりする可能性がある。
- 逆起電力により周辺にノイズを出して、周辺機器の誤動作を引き起こす可能性がある。
リレーの保護回路
逆起電力(大きなサージ電圧)を抑制する保護回路には上図に示すようにダイオードを用いる方式、CRスナバを用いる方式などがあります。各方式について順番に説明します。
ダイオードを用いたリレー保護回路
「ダイオードを用いたリレー保護回路」はスイッチをOFFした瞬間、リレー内部のコイルに蓄えられているエネルギーをダイオードに流し、コイルの抵抗成分でジュール熱として消費させます。コイルで発生した逆起電力はダイオードの順電圧にまで低くすることができます。
この保護回路は電源電圧が直流電圧のときのみ適用可能であり、交流電圧の場合には適用することができません。交流電圧の場合、ダイオードに大電流が流れてしまいます。
ダイオードの選定
- ダイオードの逆耐圧
- ダイオードの順電流(平均整流電流IO)
電源電圧の10倍以上ある逆耐圧のダイオードを使用します。なお、電源電圧がそれほど高くない電子回路の場合は、電源電圧の約3倍程度の逆耐圧のダイオードでも使用することができます。
スイッチのOFF時、ダイオードにはコイルに流れていた電流(負荷電流)が流れるため、ダイオードの平均整流電流IOは負荷電流以上のものを使用します。
補足
- 電源電圧が直流電圧の場合には「ダイオードを用いたリレー保護回路」が効果的です。
- ダイオードとコイル間の配線はノイズ発生の要因となるため、ダイオードはリレーのコイルの近くに取り付けます。
- この保護回路は「CRスナバを用いたリレー保護回路(次項で説明)」よりもさらに復帰時間が遅れます。
- 理論的にはダイオードには電源電圧以上の電圧が印加されることがありません。しかし、ダイオードの逆耐圧は、電源電圧以上の逆耐圧が必要となります。これは電源電圧にサージが乗ることを想定しているそうです。
CRスナバを用いたリレー保護回路
「CRスナバを用いたリレー保護回路」はコンデンサCと抵抗Rで構成されています。コンデンサCはスイッチの接点が開く時に生じる放電を制御し、抵抗RはスイッチON時に流れる突入電流を制限する役割があります。
この保護回路は電源電圧が直流電圧でも交流電圧でも適用することができます。交流電圧の場合、コイルのインピーダンスがCRスナバのインピーダンスより十分小さいことが必要です。
CRスナバはリレーのコイル間だけでなく、スイッチ間にも用いることができます。電源電圧が小さい場合(例えば、24V~48V)はリレーのコイル間(上図の左)、電源電圧が大きい場合(例えば、100V~200V)はスイッチ間(上図の右)に接続すると効果的です。
コンデンサCと抵抗Rの選定
- コンデンサC
- 抵抗R
スイッチに流れる電流1Aに対して、0.5~1.0[μF]のコンデンサを選定します。耐圧は一般的には200~300Vのものを使用し、電源電圧が交流電圧の場合には交流用コンデンサ(極性がないコンデンサ)を使用します。
接点にかかる電圧1Vに対して、0.5~1.0[Ω]の抵抗を選定します。
補足
- 電源電圧が交流電圧の場合には「ダイオードを用いたリレー保護回路」が効果的です。
- この保護回路を用いるとリレーの復帰時間が遅れます。
ダイオード+ツェナーダイオードを用いたリレー保護回路
「ダイオード+ツェナーダイオードを用いたリレー保護回路」は「ダイオードを用いたリレー保護回路」よりも復帰時間が早い保護回路です。一般的には、「ダイオードを用いたリレー保護回路」では復帰時間が遅れすぎる場合に用います。
この保護回路は電源電圧が直流電圧のときのみ適用可能であり、交流電圧の場合には適用することができません。交流電圧の場合、ダイオードに大電流が流れてしまいます。
ツェナーダイオードの選定
電源電圧程度であるツェナー電圧のツェナーダイオードを用います。
バリスタを用いたリレー保護回路
「バリスタを用いたリレー保護回路」はバリスタの定電圧特性を利用した保護回路です。
この保護回路は電源電圧が直流電圧でも交流電圧でも適用することができます。
バリスタはリレーのコイル間だけでなく、スイッチ間にも用いることができます。電源電圧が小さい場合(例えば、24V~48V)はリレーのコイル間(上図の左)、電源電圧が大きい場合(例えば、100V~200V)はスイッチ間(上図の右)に接続すると効果的です。
使用してはいけないリレーの保護回路
上図に示すようにコンデンサのみをリレーのコイル間やスイッチ間に接続してはいけません。
- リレーのコイル間に並列にコンデンサを接続した場合
- スイッチ間に並列にコンデンサを接続した場合
スイッチOFF時のアーク消弧には効果がありますが、スイッチON時にコンデンサに流れる充電電流が大きく、接点が溶着しやすくなります。
スイッチOFF時のアーク消弧には効果がありますが、スイッチON時にコンデンサに蓄えられていた電荷がスイッチに流れ込み、接点が溶着しやすくなります。
まとめ
この記事ではリレーついて、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- リレーに逆起電力が発生する原理
- 逆起電力による影響
- リレーの保護回路
お読み頂きありがとうございました。
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