この記事では『過負荷(オーバーロード)』について
- 過負荷(オーバーロード)とは
- 電源の過負荷(オーバーロード)はどのような時に生じる?
- 電源の過負荷試験とは
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
過負荷(オーバーロード)とは
過負荷とは、定格電力よりも大きな電力を使用している状態のことです。オーバーロードとも呼ばれています。
例えば、電気機器に搭載されている電源の定格電力(定格出力容量)が500Wであるとしましょう。電源に負荷を接続すると、電源から負荷に電力を供給することができますが、この時、負荷に供給する電力(すなわち、電源が出力する電力)が定格電力以上(500W以上)になっている状態を「過負荷」といいます。上図では電源の定格電力(定格出力容量)が500Wなのに対して、電源が出力する電力が700Wなので、過負荷の状態となっています。
言い換えれば、「電力を消費する側(負荷)」の電力要求が「電力を供給する側(電源)」の定格電力を超えている状態が過負荷なのです。
過負荷になる原因としては
- 負荷の異常動作
- 負荷の故障
- 負荷の消費電力の見積もりミス
などがあります。
電源の過負荷(オーバーロード)はどのような時に生じる?
電源が出力する電力\(P_{OUT}\)は、電源の出力電力\(V_{OUT}\)と出力電流\(I_{OUT}\)の積で決まります。ここで、電源の出力部に負荷抵抗\(R_{OUT}\)を接続した時、どのような時に過負荷になるのかを考えてみましょう。
電圧源の場合
電源が電圧源の場合には(出力電圧\(V_{OUT}\)が一定の場合には)、電源が出力する電力\(P_{OUT}\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
P_{OUT}=V_{OUT}×I_{OUT}=V_{OUT}×\left(\frac{V_{OUT}}{R_{OUT}}\right)=\frac{{V_{OUT}}^2}{R_{OUT}}
\end{eqnarray}
そのため、電源が電圧源の場合、負荷抵抗\(R_{OUT}\)が小さくなった時、電源が出力する電力\(P_{OUT}\)が大きくなり、過負荷になる可能性があります。
電流源の場合
一方、電源が電流源の場合には(出力電流\(I_{OUT}\)が一定の場合には)、電源が出力する電力\(P_{OUT}\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
P_{OUT}=V_{OUT}×I_{OUT}=(R_{OUT}I_{OUT})×I_{OUT}=R_{OUT}×{I_{OUT}}^2
\end{eqnarray}
そのため、電源が電流源の場合、負荷抵抗\(R_{OUT}\)が大きくなった時、電源が出力する電力\(P_{OUT}\)が大きくなり、過負荷になる可能性があります。
一般的に電源は電圧源なので、過負荷は負荷抵抗\(R_{OUT}\)が小さくなった時に生じます。
電源の過負荷試験(オーバーロード試験)とは
過負荷の状態になると、電源内部のトランジスタ・コイル・トランス等の素子が高温になって、熱暴走する可能性があるので、電源の評価には過負荷試験(オーバーロード試験)というものがあります。
過負荷試験とは、電源の出力部に電子負荷等を接続し、電源が出力する電力を徐々に上げていくアブノーマルな試験です。過負荷状態になっても電源が発煙・発火・異臭・異常音がないか等の安全確認をします。
また、トランスの温度が規格で定められている温度を超えないかを確認します。トランスに使用しているマグネットワイヤや絶縁テープなどの絶縁物の絶縁階級(耐熱クラス)によって、トランスの最高許容温度が定められており、下表の分類があります。この温度の許容値はIEC62368-1等で定められています。
絶縁階級(耐熱クラス) | 許容最高温度(定常状態時) | 許容最高温度(過負荷試験時) |
A種 | 105℃ | 150℃ |
E種 | 120℃ | 165℃ |
B種 | 130℃ | 175℃ |
F種 | 155℃ | 200℃ |
H種 | 180℃ | 225℃ |
例えば、B種のトランスを使用している場合、過負荷試験では175℃を超えないことを確認します。なお、温度測定には一般的には熱電対を使用します。
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まとめ
この記事では『過負荷(オーバーロード)』について、以下の内容を説明しました。
- 過負荷(オーバーロード)とは
- 電源の過負荷(オーバーロード)はどのような時に生じる?
- 電源の過負荷試験とは
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