この記事では『オペアンプを用いたローパスフィルタ』について
- オペアンプを用いたローパスフィルタとは
- オペアンプを用いたローパスフィルタの『伝達関数』,『ゲイン』,『カットオフ周波数』,『位相』
- オペアンプを用いたローパスフィルタの『周波数特性』
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
オペアンプを用いたローパスフィルタ
上図にオペアンプを用いたローパスフィルタを示しています。
オペアンプを用いたローパスフィルタは、オペアンプと抵抗\(R_1,R_2\)とコンデンサ\(C\)で構成されているローパスフィルタです。入力電圧\(V_{IN}\)の低周波成分を通過させ、高周波成分を遮断します。
コンデンサ\(C\)が無ければ、回路構成は反転増幅回路と同じになります。そのため、コンデンサ\(C\)のインピーダンス\({\dot{Z}_C}\left(=\displaystyle\frac{1}{j2{\pi}fC}\right)\)が非常に大きくなる領域(周波数\(f\)が低い領域)では、コンデンサ\(C\)をオープン(開放状態)に見なすことができるので、反転増幅回路として動作をします。
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この記事で説明している『オペアンプを用いたローパスフィルタ』のように、オペアンプなどの能動素子に抵抗やコンデンサを組み合わせて構成されたフィルタのことを『アクティブフィルタ』といいます。
一方、抵抗・コイル・コンデンサなどの受動素子のみで構成されたフィルタのことを『パッシブフィルタ』といいます。
『アクティブフィルタ』と『パッシブフィルタ』の特徴については下記の記事でまとめていますので、ご参考になると幸いです。
『パッシブフィルタ』と『アクティブフィルタ』の違いについて!
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オペアンプを用いたローパスフィルタの『伝達関数』と『ゲイン』
『伝達関数』と『ゲイン』の導出方法について説明します。
上図に示すように、抵抗\(R_1\)のインピーダンスを\({\dot{Z}_1}\)、抵抗\(R_2\)とコンデンサ\(C\)の合成インピーダンスを\({\dot{Z}_2}\)とすると、出力電圧\(V_{OUT}\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
V_{OUT}=-\frac{{\dot{Z}_2}}{{\dot{Z}_1}}V_{IN}\tag{2-1}
\end{eqnarray}
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(2-1)式の導出方法については、『反転増幅回路における出力電圧\(V_{OUT}\)の導出方法』と同じ考え方となります。反転増幅回路については下記の記事で説明していますので、ご参考になれば幸いです。
-
『反転増幅回路』を分かりやすく解説!【オペアンプ】
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インピーダンス\({\dot{Z}_1}\)とインピーダンス\({\dot{Z}_2}\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
{\dot{Z}_1}&=&R_1\tag{2-2}\\
\\
{\dot{Z}_2}&=&\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{R_2}+\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{j{\omega}C}}}=\frac{R_2}{1+j{\omega}CR_2}\tag{2-3}\\
\end{eqnarray}
(2-2)式と(2-3)式を(2-1)式に代入すると、出力電圧\(V_{OUT}\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
V_{OUT}&=&-\frac{{\dot{Z}_2}}{{\dot{Z}_1}}V_{IN}\\
\\
&=&-\frac{\displaystyle\frac{R_2}{1+j{\omega}CR_2}}{R_1}V_{IN}\\
\\
&=&-\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{1+j{\omega}CR_2}V_{IN}\tag{2-4}
\end{eqnarray}
オペアンプを用いたローパスフィルタの伝達関数\(G(j{\omega})\)は入力電圧\(V_{IN}\)と出力電圧\(V_{OUT}\)の比です。そのため、(2-4)式を変形すると、伝達関数\(G(j{\omega})\)は次式で表すことができます。
\begin{eqnarray}
G(j{\omega})=\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}=-\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{1+j{\omega}CR_2}\tag{2-5}
\end{eqnarray}
(2-5)式の分母には虚数単位\(j\)があります。ここで分子のみに虚数単位\(j\)がくるようにするために、分母と分子に『\(1-j{\omega}CR_2\)』を掛けます。すると、(2-5)式は次式に変形することができます。
\begin{eqnarray}
G(j{\omega})&=&-\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{1+j{\omega}CR_2}{\cdot}\frac{1-j{\omega}CR_2}{1-j{\omega}CR_2}\\
\\
&=&-\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1-j{\omega}CR_2}{1+({\omega}CR_2)^2}\\
\\
&=&-\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{1+({\omega}CR_2)^2}+j\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{{\omega}CR_2}{1+({\omega}CR_2)^2}\tag{2-6}
\end{eqnarray}
伝達関数\(G(j{\omega})\)の絶対値がオペアンプを用いたローパスフィルタのゲイン\(|G(j{\omega})|\)となります。もう少し詳しく説明すると、オペアンプを用いたローパスフィルタのゲイン\(|G(j{\omega})|\)は(2-6)式において、『実部\(\left\{-\displaystyle\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{1+({\omega}CR_2)^2}\right\}\)の2乗』と『虚部\(\left\{\displaystyle\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{{\omega}CR_2}{1+({\omega}CR_2)^2}\right\}\)の2乗』を足して、平方根を取ることで求めることができます。そのため、ゲイン\(|G(j{\omega})|\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
|G(j{\omega})|&=&\sqrt{\left\{-\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{1+({\omega}CR_2)^2}\right\}^2+\left\{\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{{\omega}CR_2}{1+({\omega}CR_2)^2}\right\}^2}\\
\\
&=&\frac{R_2}{R_1}\sqrt{\frac{1+({\omega}CR_2)^2}{\left\{1+({\omega}CR_2)^2\right\}^2}}\\
\\
&=&\frac{R_2}{R_1}\sqrt{\frac{1}{1+({\omega}CR_2)^2}}\\
\\
&=&\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{\sqrt{1+({\omega}CR_2)^2}}\tag{2-7}
\end{eqnarray}
ここで、角周波数\({\omega}\)は\({\omega}=2{\pi}f\)の関係があるので、(2-7)式の\({\omega}\)を\(2{\pi}f\)に書き換えると、次式となります。
\begin{eqnarray}
|G(j{\omega})|=\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{\sqrt{1+(2{\pi}fCR_2)^2}}\tag{2-8}
\end{eqnarray}
なお、オペアンプを用いたローパスフィルタのゲイン\(|G(j{\omega})|\)をデシベル表示にしたものを\(G_{dB}(j{\omega})\)とすると、\(G_{dB}(j{\omega})\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
G_{dB}(j{\omega})&=&20{\log}_{10}|G(j{\omega})|\\
\\
&=&20{\log}_{10}\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{\sqrt{1+({\omega}CR_2)^2}}{\mathrm{[dB]}}\\
\\
&=&20{\log}_{10}\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{\sqrt{1+(2{\pi}fCR_2)^2}}{\mathrm{[dB]}}\tag{2-9}
\end{eqnarray}
これで、オペアンプを用いたローパスフィルタの『伝達関数』と『ゲイン』の導出は終わりです。
オペアンプを用いたローパスフィルタの『カットオフ周波数』
カットオフ周波数\(f_C\)は、オペアンプを用いたローパスフィルタのゲイン\(|G(j{\omega})|\)が3dB下がる(\(\displaystyle\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\left({\;}{\approx}{\;}\displaystyle\frac{R_2}{R_1}{\cdot}0.707\right)\)になる)周波数であり、次式となります。
\begin{eqnarray}
\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{\sqrt{2}}&=&|G(j{\omega})|\\
\\
&=&\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{\sqrt{1+(2{\pi}fC_CR_2)^2}}\\
\\
{\Leftrightarrow}\sqrt{1+(2{\pi}f_CCR_2)^2}&=&\sqrt{2}\\
\\
1+(2{\pi}f_CCR_2)^2&=&2\\
\\
(2{\pi}f_CCR_2)^2&=&1\\
\\
2{\pi}f_CCR_2&=&1\\
\\
f_C&=&\frac{1}{2{\pi}CR_2}\tag{3-1}
\end{eqnarray}
入力電圧\(V_{IN}\)はオペアンプを用いたローパスフィルタによって、カットオフ周波数\(f_C\)より低い成分の周波数はほとんど通過し、カットオフ周波数\(f_C\)より高い成分の周波数は減衰します。
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『カットオフ周波数って何?』という方は下記の記事が役に立つと思いますので、ご参考にしてください。
-
『カットオフ周波数(遮断周波数)』とは?【フィルタ回路】
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補足
- カットオフ周波数は『遮断周波数』とも呼ばれています。
『カットオフ角周波数』について
カットオフ角周波数\({\omega}_C\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
{\omega}_C=\frac{1}{CR_2}
\end{eqnarray}
オペアンプを用いたローパスフィルタの『位相』
繰り返しになりますが、オペアンプを用いたローパスフィルタの伝達関数\(G(j{\omega})\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
G(j{\omega})=-\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{1+({\omega}CR_2)^2}+j\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{{\omega}CR_2}{1+({\omega}CR_2)^2}\tag{4-1}
\end{eqnarray}
複素平面(横軸は実数の目盛、縦軸は虚数の目盛であり、ガウス平面とも呼ばれている)上に(4-1)式のベクトルを描くと上図のようになります。このベクトル図よりオペアンプを用いたローパスフィルタの位相\({\theta}\)が決まります。
周波数\(f\)が非常に低く、『虚部\(\left\{\displaystyle\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{{\omega}CR_2}{1+({\omega}CR_2)^2}\right\}\)』が『実部\(\left\{-\displaystyle\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{1+({\omega}CR_2)^2}\right\}\)』よりも非常に小さくなる時、位相\({\theta}\)は約\({\pi}{\mathrm{[rad]}}(=180{\mathrm{°}})\)となります。
周波数\(f\)が非常に高く、『虚部\(\left\{\displaystyle\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{{\omega}CR_2}{1+({\omega}CR_2)^2}\right\}\)』が『実部\(\left\{-\displaystyle\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{1+({\omega}CR_2)^2}\right\}\)』よりも非常に大きくなる時、位相\({\theta}\)は約\(\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}}(=90{\mathrm{°}})\)となります。
[rad]を[°(度)]に変換するためには、\(\displaystyle\frac{180}{{\pi}}\)を掛けます。
オペアンプを用いたローパスフィルタの『周波数特性』
一例として、抵抗\(R_1=1{\mathrm{[kΩ]}},R_2=10{\mathrm{[kΩ]}}\)、コンデンサ\(C=0.1{\mathrm{[μF]}}\)のオペアンプを用いたローパスフィルタにおいて、ゲイン\(|G(j{\omega})|\)と位相\({\theta}\)の周波数特性を上図に示しています。
コンデンサ\(C\)のインピーダンス\({\dot{Z}_C}\left(=\displaystyle\frac{1}{j2{\pi}fC}\right)\)が非常に大きくなる領域(周波数\(f\)が低い領域)では、コンデンサ\(C\)をオープン(開放状態)に見なすことができるので、反転増幅回路として動作をします。そのため、周波数\(f\)が低い領域では、ゲイン\(|G(j{\omega})|\)は以下の値となります。
\begin{eqnarray}
G_{dB}(j{\omega})&=&20{\log}_{10}\displaystyle\frac{R_2}{R_1}\\
\\
&=&20{\log}_{10}\displaystyle\frac{10×10^3}{1×10^3}\\
\\
&=&20{\mathrm{[dB]}}\tag{5-1}
\end{eqnarray}
また、オペアンプを用いたローパスフィルタのカットオフ周波数\(f_C\)は以下の値となります。
\begin{eqnarray}
f_C&=&\frac{1}{2{\pi}CR_2}\\
\\
&=&\frac{1}{2{\pi}×0.1×10^{-6}×10×10^{3}}\\
\\
&=&159.154{\cdots}\\
\\
&{\approx}&159{\mathrm{[Hz]}}\tag{5-2}
\end{eqnarray}
上図を見ると、カットオフ周波数\(f_C{\;}{\approx}{\;}159{\mathrm{[Hz]}}\)でゲイン\(|G(j{\omega})|\)が約-3dB下がっていることが確認できます(20dB-3dB=17dBになっている)。そして、その時の位相\({\theta}\)が135°になっていることが確認できます。
また、周波数\(f\)が高くて『\(1{\;}{\ll}{\;}(2{\pi}fCR_2)^2\)』とみなせる場合、『1』を無視すると、ゲイン\(|G(j{\omega})|\)は次式で表すことができます。
\begin{eqnarray}
|G(j{\omega})|&=&\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{\sqrt{1+(2{\pi}fCR_2)^2}}\\
\\
&{\approx}&\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{\sqrt{(2{\pi}fCR_2)^2}}\\
\\
&{\approx}&\frac{R_2}{R_1}{\cdot}\frac{1}{2{\pi}fCR_2}\tag{5-3}
\end{eqnarray}
上式より、周波数\(f\)が10倍になると、ゲイン\(|G(j{\omega})|\)が1/10になります(デシベル表記では、『\(G_{dB}(j{\omega})=20{\log}_{10}\displaystyle\frac{1}{10}=-20{\mathrm{[dB]}}\)』となります)。つまり、周波数が高い領域では、-20[dB/dec]の傾きでゲイン\(|G(j{\omega})|\)が減少しています。
同様に、周波数fが2倍になると、ゲイン\(|G(j{\omega})|\)が1/2になります(デシベル表記では、『\(G_{dB}(j{\omega})=20{\log}_{10}\displaystyle\frac{1}{2}=-6{\mathrm{[dB]}}\)』となります)。つまり、周波数が高い領域では、-6[dB/oct]の傾きでゲイン\(|G(j{\omega})|\)が減少しているとも言います。
周波数fが2倍になることをoct(オクターブ)、10倍になることをdec(ディケード)といいます。
オペアンプを用いたローパスフィルタの『周波数特性』をLTspiceで描く方法
『周波数特性』をLTspiceで描くためには『.ac解析』を用います。
上図にLTspiceで描いたオペアンプを用いたローパスフィルタを示しています(\(R_1=1{\mathrm{[kΩ]}},R_2=10{\mathrm{[kΩ]}}\)、\(C=0.1{\mathrm{[μF]}}\))。
VOUT端子の電圧をプロットすることで、周波数特性を出力することができるようになります。
『.ac dec 100 1 10k』は『信号源(ここでは入力電圧\(V_{IN}\))の周波数を1Hz~10kHzに変化させる。この時、1ディケード(10倍)当たりのステップ数を100とする。』という意味です。
LTspiceでのAC解析の方法は下記の記事で説明していますので、ご参考にしてください。
-
【LTspice】周波数特性を観測する『.ac解析』の使い方と応用
続きを見る
まとめ
この記事では『オペアンプを用いたローパスフィルタ』について、以下の内容を説明しました。
- オペアンプを用いたローパスフィルタとは
- オペアンプを用いたローパスフィルタの『伝達関数』,『ゲイン』,『カットオフ周波数』,『位相』
- オペアンプを用いたローパスフィルタの『周波数特性』
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