この記事ではMOSFETの耐圧とオン抵抗の関係について説明します。
MOSFETの耐圧とオン抵抗の関係
上図はパワーデバイスに用いられる代表的な半導体における、耐圧とオン抵抗の関係です。上図に示すようにMOSFETは耐圧が高くなるほど、オン抵抗が高くなる性質があります。すなわち、耐圧とオン抵抗がトレードオフの関係にあります。
『耐圧』が高くなると『オン抵抗』が高くなる理由
上図にMOSFETの構造を示しています(縦型プレーナ構造)。高耐圧のMOSFETは通常、この縦型プレーナ構造となっています。
MOSFETではドリフト層を低濃度なN層(N-ドリフト層)で形成しています。
ゲートソース間電圧VGSを印加していない状態で、MOSFETにドレインソース間電圧VDSを印加すると、N-ドリフト層にドレインソース間電圧VDSに応じた空乏層が生じます。
このN-ドリフト層の空乏層を伸ばすことによって、MOSFETは耐圧を確保しています。高耐圧のMOSFETではこの空乏層が広がりやすくなっており、N-ドリフト層が厚く、N-ドリフト層の不純物濃度が低くなっています。
しかし、N-ドリフト層が厚く、N-ドリフト層の不純物濃度が低い場合、ドリフト抵抗が増加するという問題があります。
また、縦型プレーナ構造のMOSFETでは、ゲートソース間電圧VGSを印加することで、チャネルが形成し、ドレインソース間電圧VDSを印加することで、電子がソースからN+層、P層、N-ドリフト層、N+層を通り、ドレインに流れ込みます(ドレイン電流IDは逆の経路となります)。これがMOSFETのオン状態における電流経路となります。
ここで、MOSFETのオン抵抗RONとは、この電流経路において発生する各部の抵抗の和であり、
\begin{eqnarray}
R_{ON}=R_{SUB}+R_{DRIFT}+R_{JFET}+R_{CH}+R_{N+}
\end{eqnarray}
となります。
まとめると、耐圧を高くするために、N-ドリフト層を厚くしたり、N-ドリフト層の不純物濃度を低くすると、ドリフト抵抗RDRIFTが増加します。したがって、上式より、MOSFETのオン抵抗RONが高くなるのです。
補足
- 縦型プレーナ構造のMOSFETでは、JFET抵抗RJFETとドリフト抵抗RDRIFTがオン抵抗RONの80%以上を占めています。
- RSUBは基板の抵抗、RCHはチャネル部の抵抗、RN+はN+層の抵抗を示しています。
まとめ
この記事ではMOSFETの『プレーナ構造』と『トレンチ構造』について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- MOSFETの『耐圧』と『オン抵抗』の関係
- 『耐圧』が高くなると『オン抵抗』が高くなる理由
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