この記事ではMOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』について
- MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』とは?
- MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』の値
- MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』の導出方法
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』とは?
MOSFETはゲート(G)に電圧を印加すると、ドレイン(D)からソース(S)にドレイン電流IDが流れますが、このドレイン電流IDには上限(定格電流)があります。
以下に示すように、定格電流(ドレイン電流)に関するものは2つあります。
MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』
- ドレイン電流(DC)ID
- ドレイン電流(パルス)IDP
ドレイン(D)に連続的に流すことができる最大電流のこと。
ドレイン(D)にパルス性の電流が流れた時における最大電流のこと。
上記の定格電流はMOSFETのデータシートの絶対最大定格という項目に記載されています。
なお、絶対最大定格については以下の記事に記載していますので参考にしてください。 続きを見る
『絶対最大定格』とは?推奨動作条件との違いって何?
MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』の値
MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』はデータシートに記載されています。上図は東芝製NチャネルMOSFET(2SK4017)の絶対最大定格です。
データシートより、MOSFET(2SK4017)の『定格電流(ドレイン電流)』は以下の値になっていることが分かります。
『定格電流(ドレイン電流)』の値
- ドレイン電流(DC)ID:5A
- ドレイン電流(パルス)IDP:20A
一般的に、『ドレイン電流(パルス)IDP』は『ドレイン電流(DC)ID』の4倍程度となっています。
MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』の導出方法
データシートに記載されている『定格電流(ドレイン電流)』は一般的にはオン抵抗RDS(ON)によって決まります。以下に導出方法を示します。
step
1最大チャネル温度(150℃)の時のオン抵抗の最大値RDS(ON)(MAX)(150℃)を求める
オン抵抗RDS(ON)は温度が増加するほど大きくなります。
まず、『25℃の時のRDS(ON)(25℃)』と『150℃の時のRDS(ON)(150℃)』の比率αを求めます。比率αはデータシートに記載している『RDS(ON)-TC特性』を用いると以下の値となります。
\begin{eqnarray}
α&=&\frac{150℃の時のR_{DS(ON)(150℃)}}{25℃の時のR_{DS(ON)(25℃)}}\\
&=&\frac{0.15}{0.09}\\
&{\approx}&1.66\tag{1}
\end{eqnarray}
また、データシートの電気的特性には『25℃の時のオン抵抗の最大値RDS(ON)(MAX)(25℃)』が記載されており、以下の値となっています。
\begin{eqnarray}
R_{DS(ON)(25℃)(MAX)}=0.15{\mathrm{[Ω]}}\tag{2}
\end{eqnarray}
したがって、『150℃の時のオン抵抗の最大値RDS(ON)(150℃)(MAX)』は以下の値となります。
\begin{eqnarray}
R_{DS(ON)(150℃)(MAX)}&=&R_{DS(ON)(25℃)(MAX)}×α\\
&=&0.15×1.66\\
&=&0.25{\mathrm{[Ω]}}\tag{3}
\end{eqnarray}
step
2MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』を求める
MOSFETの絶対最大定格に記載されている許容損失PDと『150℃の時のオン抵抗の最大値RDS(ON)(150℃)(MAX)』より、ドレイン電流(DC)IDの理論値は次式となります。
\begin{eqnarray}
P_{D}&=&R_{DS(ON)(150℃)(MAX)}×{I_{D}}^2\\
{\Leftrightarrow}I_{D}&=&\sqrt{\displaystyle\frac{P_{D}}{R_{DS(ON)(150℃)(MAX)}}}\tag{4}
\end{eqnarray}
ここで、許容損失PDは次式となります。
\begin{eqnarray}
P_{D}&=&\frac{T_{ch(MAX)}-T_{C}}{R_{th(ch-c)}}\tag{5}
\end{eqnarray}
(5)式において、Tch(MAX)はチャネル温度の最大値(絶対最大定格に記載)、TCはケース温度(25℃)、Rth(ch-c)は定常熱抵抗となります。(5)式を(4)式に代入すると次式となります。
\begin{eqnarray}
I_{D}=\sqrt{\displaystyle\frac{T_{ch(MAX)}-T_{C}}{R_{DS(ON)(150℃)(MAX)}×R_{th(ch-c)}}}\tag{6}
\end{eqnarray}
(6)式にデータシートの値を代入すると、以下の値となります。
\begin{eqnarray}
I_{D}&=&\sqrt{\displaystyle\frac{T_{ch(MAX)}-T_{C}}{R_{DS(ON)(150℃)(MAX)}×R_{th(ch-c)}}}\\
&=&\sqrt{\displaystyle\frac{150-25}{0.25×6.25}}\\
&{\approx}&8.94{\mathrm{[A]}}\tag{4}
\end{eqnarray}
ドレイン電流(DC)IDはオン抵抗RDS(ON)による損失の制限以外に、パッケージの通電能力や安全動作領域等でも制限されるため、ドレイン電流(DC)IDの理論値とデータシートの値は上式のように一致しないことが多いです。
まとめ
この記事ではMOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』ついて、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』とは?
- MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』の値
- MOSFETの『定格電流(ドレイン電流)』の導出方法
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