メーカのサイトなどでダウンロードしたSPICEモデルをどのようにLTspiceで使用するかを今回は説明します。
LTspiceにSPICEモデルを追加する方法は1つではありません。様々な方法があります。
今回はそれらの方法を詳しく説明します。
方法1:『.libコマンド』か『.includeコマンド』でSPICEモデルを読み込む方法
この方法はLTspiceだけでなく、他のSpiceシミュレータでも行われている方法です。手間はかかりますが、他の設計者とデータのやり取りがしやすいため、この方法が一番オススメです。これからこの方法を説明します。
モデル追加方法
1.libファイルかsubファイルを用意する
メーカーなどで公開されているlibファイルをダウンロードするか、メモ帳などのテキストエディタでlibファイル(subファイルでも可能)を作成します。メモ帳でファイルを作成すると拡張子が.txtとなりますが、その拡張子を.libか.subに変更することで、libファイルやsubファイルを作成することができます。今回は、例として2SC1815test.libというlibファイルを作成しました。
modelの後に書いてある「2SC1815」がトランジスタのSPICEモデル名となっています(ファイル名は「2SC1815test.lib」です)。また、Spiceでは、改行する場合、先頭に+を記述する必要があります。
2.libファイル or subファイルを格納する
libファイル(subファイルを作成した場合はsubファイル)をDocuments\LTSpiceXVII\lib\subに格納します。または、subフォルダ内にmylibフォルダなどを作成している場合、その中にlibファイルを格納してもOKです。今回は、例として2SC1815test.libを置いています。
3.LTspice上にトランジスタを配置する
今回はバイポーラトランジスタのSPICEモデルを読み込むため、LTspice上にバイポーラトランジスタを配置します。LTspiceを開き、ツールバーからSelect Component Symbolを開きます。そこで、npnを選択し、OKボタンを押します。すると、NPNトランジスタが配置されます。
4.libファイル or subファイルを読み込む準備をする
SHIFTを押しながらトランジスタを右クリックを押して、Component Attribute Editorを開いてValueにトランジスタのSPICEモデル名(今回は”2SC1815”)を記入してOKを押します。または、NPNと書いてある箇所を右クリックして、Enter new Value for Q1を開いてトランジスタのSPICEモデル名を記入します。
5.libファイル or subファイルを読み込むコマンドを入力する
.libあるいは.includeコマンドを用いてlibファイルかsubファイルを読み込む設定を記述します。この例では、
.include 2SC1815test.lib
と記述しています。subファイルを読み込む場合には、.libを.subに変えます。
ここに入力するのは、トランジスタのSPICEモデル名ではなく、ファイル名です。そのため、今回はトランジスタのSPICEモデル名である「2SC1815」ではなく、「2SC1815test.lib」と記入しています。
★注意点
フォルダの格納場所によって、入力するコマンドがことなります。
Documents\LTSpiceXVII\lib\sub にlibファイルに入れている場合orシミュレーション回路図があるフォルダに直接格納している場合
.include 2SC1815test.lib
を記入します。
Subフォルダの中にmylibフォルダなどを作成し、mylibフォルダにlibファイルに入れている場合orシミュレーション回路図があるフォルダにmylibフォルダなどを作成し、そのmylibフォルダに格納している場合
.include mylib/2SC1815test.lib
と、「mylib/」を追加する必要があります。
上のところ以外に格納する場合
フルパスで記入します。
6.シミュレーションを実行する
これが、『.libコマンド』か『.includeコマンド』でSPICEモデルを読み込む方法です。次に『standard.bjtにSPICEモデルを追加する方法』を説明します。
方法2:『standard.bjt』にSPICEモデルを追加する方法
LTspice独自の方法ですが、やり方が簡単です。他の設計者とデータのやり取りがしにくいため、時間がある場合には「1『.libコマンド』か『.includeコマンド』でSPICEモデルを読み込む」の方法をオススメします。
モデル追加方法
1.LTspiceを開く
LTspiceを開いた後に、「File→Open」をクリックする。
2.standard.bjtを開く
『Open an existing file』が開くので、そこで「Documents\LTSpiceXVII\lib\cmp」のフォルダにある「standard.bjt」というファイルを選択し、開くボタンを押す(バイポーラトランジスタのモデルを追加する場合には場合には「standard.bjt」ですが、MOSFETのモデルを追加する場合には「standard.mos」となります。今回はバイポーラトランジスタのモデルを追加するので、「standard.bjt」を開いています)。
3.standard.bjtにSPICEモデルをコピーする
「standard.bjt」の中を見ると「.model 2N2222 NPN(IS=1E-14 VAF=100・・・」と.model で始まる文章が並んでいます。最後の行に、「2SC1815test.lib」の中身をコピーします(キーボードのEnterキーを使い、改行して、適当なスペースを作り、そのスペースにコピーしてもOKです)。「2SC1815test.lib」の中身には改行する際に必要な”+”がありますが、今回は1行にするため、その”+”を削除しています。なお、「Documents\LTSpiceXVII\lib\cmp」のフォルダにある「standard.bjt」はテキスト形式で書かれています。そのため、メモ帳などのテキストエディタで編集してもOKです。
4.standard.bjtを上書き保存する
「standard.bjt」のファイルを上書き保存して終了。これで、2SC1815のSPICEモデルが追加されました。
5.LTspice上にトランジスタを配置する
今回はバイポーラトランジスタのSPICEモデルを読み込むため、LTspice上にバイポーラトランジスタを配置します。LTspiceを開き、ツールバーからSelect Component Symbolを開きます。そこで、npnを選択し、OKボタンを押します。すると、NPNトランジスタが配置されます。
6.配置したNPNトランジスタをSPICEモデルに変える
トランジスタを右クリックを押した後に、Pick New Transitorをクリックします。すると、『Select Bipolar Transistor』が開きます。そこにstandard.bjtで入力したSPICEモデルが追加されています。
7.シミュレーションを実行する
これが、『standard.bjt』にSPICEモデルを追加する方法です。次に最も簡単なモデル追加方法を紹介します。
方法3:spice directiveに直接SPICEモデルを記入する
素早くシミュレーションを実行したい場合には、spice directiveに直接SPICEモデルを記入する方法が簡単です。この方法だと、メーカーなどで公開されているlibファイルの中身を記入するだけでシミュレーションを実行することができます。