【CTRとは?】フォトカプラの電流伝達率について

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フォトカプラの重要なパラメータである『CTR』。

このCTRについて、CTRとはどのようなものか?どのように決まるのか?と基本的なことから、CTRの特徴(ばらつきを持っている、寿命があるなど)について詳しく説明します。

フォトカプラのCTRとは

フォトカプラのCTRとは
フォトカプラのCTRは入力順電流IFに対する出力コレクタ電流ICの比です。
式で表すと

$$ CTR= \frac{I_C}{I_F}×100[\%]$$

となります。単位は%なので「×100」をしています。CTRを見ることで入力順電流IFがどれくらい増幅されて出力コレクタ電流ICとなるかが分かるのです。バイポーラトランジスタの直流電流増幅率(hFE)であるベース電流IBに対するコレクタ電流ICの比と似たパラメータですね。

CTRの”C”と”T”と”R”は、Current Transfer Ratioの頭文字を取っており、日本語では電流伝達率や変換効率と呼ばれています。

CTRはフォトカプラの重要なパラメータであり、回路の設計時には注意すべき項目です。CTRが大きいほど、感度が高いフォトカプラとなります。

CTRの決まり方

CTRの決まり方
フォトカプラのCTRは、主に次の要因によって決定します。

  • 発光ダイオード(LED)の発光効率
  • 発光ダイオード-フォトトランジスタ間の光結合効率
  • フォトトランジスタの受光感度
  • フォトトランジスタの電流増幅率(hFE)
  • →例えば、フォトトランジスタがダーリントン接続されている場合、小さい入力電流でコレクタ電流ICを得ることができます。

CTRの特徴

CTRの値は一定ではなく、様々な条件によって変化します。下記にCTRの特徴を示します。

  1. ばらつきがある
  2. 入力順電流IFの値によって変わる
  3. 周囲温度の影響を受ける
  4. 時間が経つと低下する
  5. AC入力に対応したフォトカプラは正負でCTRが異なる

上記に示すように、フォトカプラのCTRには『ばらつき』があるし、条件によって変化します。そのため、回路設計で使用するのに難しい部品の1つです。上記の特徴を考慮してきちんと回路設計する必要があります。何も考えずに適当に回路を設計すると、十分な出力コレクタ電流ICが流れず、その結果、回路が正常に動作しなくなる場合があります。

特徴1:ばらつきがある

CTRのばらつき
上はエバーライト製フォトカプラ「EL816」のCTRです。

CTRにはばらつきがあります。データシートには入力順電流IFの条件とコレクタエミッタ間電圧VCEの条件によるCTRの最小値と最大値が書いてあります。「IF=5mA,VCE=5V」におけるCTRが記載してあるケースが多いですね。

ここでの注目は、フォトカプラにはばらつき具合によってランクがあることです。

ばらつきが大きいランクのフォトカプラを使用し、そのCTRが最小値だった場合(上図だとCTR=34の時)、入力順電流IFが不足していると、十分な出力コレクタ電流ICが出せず、回路が動作不良になることがあります。そのため、フォトカプラを使用した回路を設計する際には、安定動作をさせるためにデータシートに記載されている推奨の入力順電流IFを流すように設計することをオススメします。 

特徴2:入力順電流IFの値によって変わる

入力順電流IFの値によって変わる
横軸が入力順電流IF(mA)、縦軸がCTR(%)のグラフがデータシートに記載してあります。横軸の入力順電流IF(mA)は対数軸が多いですが、縦軸のCTRはデータシートによって対数軸の場合もあれば、通常の軸の場合もあります。

このグラフで分かることは、入力順電流IFが小さい時(小電流領域)と入力順電流IFが大きい時(大電流領域)でCTRの正負の傾きが異なることです。小電流領域では傾きが正で大電流領域では傾きが負となります。

回路設計で注意するべきことは、小電流領域で使用する場合、入力順電流IFが小さくなると、CTRが低下します。そのため、入力順電流IFが少し小さくなっただけで、出力コレクタ電流ICが大きく減少します。したがって、小電流領域では、入力順電流IFを大きめに設計します。

一方、大電流領域で使用する場合、入力順電流IFを大きくしても、CTRが低下するので、出力コレクタ電流ICがあまり増えません。したがって、大電流領域では、入力順電流IFを小さめに設計します。

特徴3:周囲温度の影響を受ける

周囲温度の影響を受ける
一般的に、入力側のLEDの発光効率は負の温度係数、出力側のフォトトランジスタの電流増幅率は正の温度係数を持っています。そのため、フォトカプラのCTRはこの2つの温度特性が合成された特性となります。
フォトカプラメーカでは、一般的に、LEDとフォトトランジスタの温度係数をうまく調整して、室温(25℃)でCTRが最大となり、使用温度内ではCTRの変動ができる限り小さくなるようにフォトカプラを製造しています。

特徴4:時間が経つと低下する

時間が経つと低下する
フォトカプラのCTRを決める1つの要因「入力側のLEDの発光効率」が低下するため、CTRは時間が経つと低下します。低下具合ですが、一般的に、入力順電流IFが大きいほど、周囲温度が高いほど早く低下します。一般的な半導体と異なり、フォトカプラの寿命は、CTRの低下によって決まります。

特徴5:AC入力に対応したフォトカプラは正負でCTRが異なる

AC入力対応フォトカプラの場合には、入力側に2個の発光ダイオード(LED)があるので、正負同じ大きさの交流電流を入力しても、CTRは入力順電流IFの極性ごとに異なります。
AC入力対応フォトカプラでは、CTRが正負で2つ記載してあるので、きちんと確認しましょう。

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