トランジスタやダイオード等の半導体には温度特性が存在します。LTspiceの『.temp』コマンドを使用すると、温度が変化した時の特性変化を観測することができます。
構文
『.temp』コマンドの構文は
となっています。
上記の構文は
.step temp list <温度1> <温度2>…
と同等になります。
例えば、温度が25℃と50℃の時の特性の変化を調べたい時には
と記入します。
一方、抵抗の抵抗値を{R}と記入してパラメータ化し、そのパラメータをステップさせるときには、
と『.step』コマンドを記入する必要があります。温度の場合は『.step』コマンドを記入する必要はなく、『temp』だけで良いのです。
ポイント
LTspiceで『.temp』コマンドを使用してみる
では実際に『.temp』コマンドを使用して、温度特性を観測してみましょう。今回はローム製トランジスタの『2SC4081』の『コレクタ電流IC-ベースエミッタ間電圧VBE』の特性を観測してみます。
まず、『2SC4081』のデータシートを見てみると、『IC-VBE』特性は以下のようになっています。温度パラメータは『-40,25,75,125℃』となっており、温度が変化すると特性が変化しています。温度が-40℃から125℃になると、ベースエミッタ間電圧VBEは約0.2度変化するトランジスタのようです。
また、『IC-VBE』特性はコレクタエミッタ間電圧VCE=6Vが測定条件となっています。
この『IC-VBE』特性をシミュレーションで再現するためには、以下のように回路を描きます。データシートと同じくコレクタエミッタ間電圧VCEを6Vにしています。
温度変化を表すコマンドとして
と記入しています。このコマンドは
.step temp list -40 25 75 125
と記入しても同じシミュレーション結果となります。
シミュレーション結果を見てみると、データシートと同じく、温度が変化することで特性が変化していることが分かります。また、データシートと同様の特性になっています。
上記のシミュレーションでは横軸がベースエミッタ間電圧VBEになっています。LTspiceで横軸を変更する方法は以下の記事で公開しています。
LTspiceでグラフの横軸を変更する方法
注意点ですが、『.temp』コマンドによる温度解析を利用できるのは、温度特性を持つモデルのみです、抵抗、インダクタ、コンデンサ等温度特性がないモデルに『.temp』コマンドを使用しても何も特性が変わりません。
ポイント
その他
『.temp』コマンド』は『.step param temp list』と同等なので、tempをパラメータとして使用することもできます。例えば、抵抗やコンデンサ等の素子値に{temp}と記入することができます、ただ、特殊な例なのであまりこの機能を使うことはないと思います。