【LTspice】ノイズの周波数特性を観測する『.noise解析』の方法と応用について

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この記事では.noise解析の方法と応用について詳しく説明します。

『.noise解析』とは

.noise解析とはアナログ回路の「ノイズの周波数特性」をシミュレーションするコマンドです。この解析は、周波数領域で行われます。プロットされるグラフは、単位帯域幅(1Hz)あたりのノイズ電圧密度であり、一般的に単位は\([nV/\sqrt{Hz}]\)で表されます。

メニューバーの[Simulate]から[Edit Simulation Cmd]を左クリックすると、[Edit Simulation Command]ダイアログボックスが表示されます。このダイアログボックス内の[Noise]タブが『.noise解析』の設定画面となっています。
【LTspice】『.noise解析』とは

『.noise解析』を使用すると、下図のようなオペアンプのノイズ電圧密度を観測することができます(下図のシミュレーション方法についてはこの記事の後半に記載しています)。
【LTspice】『.noise解析』のシミュレーション

これから、『.noise解析』において

  • 『.noise解析』の構文とダイアログボックスでの設定項目
  • シミュレーション例(オペアンプのノイズ電圧密度の観測)

を説明します。

補足

  • 『.noise解析』は雑音解析とも呼ばれています。
  • ノイズ電圧密度は入力換算ノイズ電圧密度入力換算雑音電圧密度とも呼ばれています。
  • ノイズ電圧密度はオペアンプのデータシートなどに記載されている特性です。

『.noise解析』の構文とダイアログボックスでの設定項目

『.noise解析』の構文は以下のようになっています。

構文

.noise V(<out>[,<ref>]) <src> <Nsteps> <StartFreq> <EndFreq>

この構文ですが、[Edit Simulation Command]ダイアログボックスの設定画面の各項目を選択または入力すると、自動的に構文が作成されます。各項目は以下のようになっています。Type of sweepから先は『.ac解析』で設定する項目と同じになります。
【LTspice】『.noise解析』の構文とダイアログボックス

Output

(全出力)ノイズを観測するノード名を入力します。ここで入力した内容は自動的に構文のV(<out>[,<ref>])の箇所に反映されます。GND基準でノードOUTのノイズを観測するならV(OUT)のように記述し、2つのノード(例えばN1とN2)間のノイズを観測するならV(N1,N2)のように記述します。

Input

基準となる入力ノイズの信号源の名前を入力します。ここで入力した内容は自動的に構文の<src>の箇所に反映されます。<src>はノイズのない入力信号となります。

Type of sweep

信号源の周波数をスイープする間隔を選択します。以下に選択できる項目を示します。

  • Octave:2倍間隔
  • Decade:10倍間隔
  • Linear:等間隔(*ほぼ使用しない)
  • List:リストで指定した周波数のみ解析

通常、『.noise解析』で解析する周波数範囲は広い範囲であり、グラフの横軸は一般的には対数目盛となります。そのため、LinearとListを選択することはほとんどありません。次に入力するNumber of pointsではステップ数を決めます。例えば、Type of sweepでDecadeを選択し、ステップ数を100にすると、周波数が10倍(例えば、10Hzから100Hz)となるまでのステップ数が100回ということになります。ここで選択した内容は自動的に構文の<oct,dec,lin>の箇所に反映されます。

Number of points

「Type of sweep」でOctaveを選択した場合、1オクターブ(2倍)当たりのステップ数、Decadeを選択した場合、1ディケード(10倍)当たりのステップ数となります。以下に推奨の数値を示します。

  • Octave:20~40程度
  • Decade:30~100程度

数値が大きいほど細かい計算を行うことができますが、シミュレーション時間が長くなります。シミュレーション回路の特性に応じて最適な値を選択してください。ここで入力した内容は自動的に構文の<Nsteps>の箇所に反映されます。

補足

Linearの場合には、全体(計測開始の周波数~計測終了の周波数)の間の等間隔ステップ数となります。

Start frequency

計測開始の(下限)周波数[Hz]を入力します。ここで入力した内容は自動的に構文の<StartFreq>の箇所に反映されます。

Stop frequency

計測終了の(上限)周波数[Hz]を入力します。「Start frequency」よりも大きい値を入力してください。ここで入力した内容は自動的に構文の<EndFreq>の箇所に反映されます。

SPICE Directiveからでもコマンドを入力可能

[Edit Simulation Command]ダイアログボックスではなく、「SPICE Directive」からでも『.dcコマンド』を入力できます。ツールバーの.opをクリックすると(ショートカットキーは”s”)、[Edit Text on the Schematic]ダイアログボックスが表示されます。「SPICE Directive」が選択されていることを確認して『.noiseコマンド』を入力します。
【LTspice】『.noise解析』をSPICE Directiveで記述

『.noise解析』のコマンド例

  • .noise V(OUT) VIN dec 1000 10 100k
  • →電圧源VINを基準としてノードOUTのノイズを観測する。周波数は10Hz~100kHzであり、1ディケード(10倍)当たりのステップ数を1000とする。

シミュレーション例(オペアンプのノイズ電圧密度の観測)

『シミュレーション回路』と『コマンド』について

【LTspice】『.noise解析』のシミュレーション回路
上図はLT6230というオペアンプに対して、ボルテージフォロワを構成した回路図です。
『.noise解析』のコマンドは

.noise V(OUT) VIN dec 1000 10 100k

となっています。

シミュレーション結果

【LTspice】『.noise解析』のシミュレーション結果
上図にシミュレーション結果(ノードOUTのノイズ電圧密度)とLT6230のデータシートに記載されているノイズ電圧密度を示します。シミュレーション結果とデータシートでグラフがほぼ一致していることが確認できます。

基本のおさらい(グラフの表示方法)

ノードOUTのグラフ表示方法について説明します(基本的な内容なのですでに知っている方は飛ばしてください)。シミュレーション中(またはシミュレーション実行後)に、回路図ウィンドウをアクティブにして、カーソルをノードOUTに近づけると、カーソルが電圧プローブの形に変わります。その状態で左クリックすると、波形ウィンドウにグラフが表示されます。

まとめ

この記事では『.noise解析』について構文、[Edit Simulation Command]ダイアログボックスの設定画面、シミュレーション例を説明しました。『.noise解析』は主にジョンソンノイズ(半導体を含む抵抗全般に発生する白色雑音。熱雑音とも呼ばれる)、ショットノイズ(pn接合、金属/半導体接合などに発生する白色雑音)、フリッカノイズ(主にFETで発生する1/f雑音)によるノイズを計算する際に使用する解析となります。

なお、LTspiceに関する記事は以下にまとめてあるのでぜひ参考にしてください。

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