この記事ではロードスイッチに流れる突入電流の計算や問題点などを図を用いて詳しく説明しています。
ロードスイッチとは
ロードスイッチとは、負荷(モータ等)に電力を供給するラインに対して、ON/OFFを行うスイッチのことです。
スイッチがONの時に負荷に電力を供給し、スイッチがOFFの時に負荷への電力供給を遮断します。
ロードスイッチの基本的な内容(回路構成や動作)については以下の記事で説明していますので、参考にしてください。
【ロードスイッチとは】回路と原理について分かりやすく解説!
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ロードスイッチに流れる突入電流の計算
上図はロードスイッチにPチャネル型MOFFETを用いた時の回路です。
出力電圧VOUTがゼロに近い時(すなわち、負荷の容量COUTに蓄えられている電荷がほぼゼロの時)に、ロードスイッチQ1をオンすると、負荷の容量を充電するために突入電流が流れます。
この突入電流のピーク値IPEAKの大きさは入力電圧VIN、MOSFETのオン抵抗RDS(ON)、負荷の出力容量にある等価直列抵抗RESR、出力電圧VOUTによって決まります。
突入電流のピーク値IPEAKは以下のように計算します。
突入電流の計算方法
突入電流が流れる時、負荷の容量COUTのインピーダンスはゼロと見なせます。
また、等価直列抵抗RESRは負荷抵抗ROUTよりかなり小さく、負荷抵抗ROUTを無視すると、突入電流のピーク値IPEAKは次式で表されます。
\begin{eqnarray}
I_{PEAK}=\frac{V_{IN}-V_{OUT}}{R_{DS(ON)}+R_{ESR}}
\end{eqnarray}
なお、負荷抵抗ROUTを無視しない場合には、次式となります。
\begin{eqnarray}
I_{PEAK}=\frac{V_{IN}-V_{OUT}}{R_{DS(ON)}+\displaystyle\frac{R_{ESR}R_{OUT}}{R_{ESR}++R_{OUT}}}
\end{eqnarray}
上式より、入力電圧VINが高いほど、オン抵抗RDS(ON)・等価直列抵抗RESR・出力電圧VOUTが小さいほど突入電流IPEAKが大きくなることが分かります。
ロードスイッチに流れる突入電流の問題点
突入電流が大きい場合には以下の問題が発生する可能性があります。
- 部品を破壊する可能性がある
- 基板や束線を破壊する可能性がある
- 保護がかかってしまう場合がある
- 突入電流によって入力電圧が低下する可能性がある
突入電流が大きいと、ロードスイッチに用いられているトランジスタの定格電流を超えたり、安全動作領域(SOA)を超えたりする可能性があります。また、負荷側の機器を突入電流で破壊させる可能性もあります。
基板のパターンや束線も電流定格があります。この電流定格を超える場合、基板や束線が破壊する可能性があります。突入電流の大きさを想定して基板や束線を設計する場合、基板のパターンが太くなったり、束線が太くなったりします。また、耐久性の高いコネクタを使用しなければならなくなり、サイズとコストが増加してしまいます。すなわち、突入電流を小さくすることができれば、小型、低コストで回路を設計することができます。
入力電圧や負荷に過電流保護などがある場合には保護がかかってしまい、停止する可能性があります。
一般的に入力電圧源にはコンデンサが接続されています。この入力電圧源にあるコンデンサを充電する電流量よりも、突入電流の方が大きい場合、入力電圧が低下してしまいます。
これらの問題点を防止するためには、突入電流を小さくする必要があります。
突入電流を小さくするためには、MOSFETのオン抵抗を徐々に下げることが重要です。
以下のようにMOSFETのゲートソース間抵抗と並列にコンデンサを追加し、このコンデンサによってゆっくりとゲートソース間電圧を下げることで、オン抵抗をゆっくり下げることが可能になります。その結果、突入電流を防止することができます。
MOSFETのゲートソース間抵抗と並列に接続しているコンデンサについては以下の記事に詳しく説明していますので参考にしてください。
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【ロードスイッチとは】回路と原理について分かりやすく解説!
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まとめ
この記事ではロードスイッチの突入電流について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- ロードスイッチに流れる突入電流の計算
- ロードスイッチに流れる突入電流の問題点
お読み頂きありがとうございました。
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