この記事では『べき関数\(t^2\)と\(t^n\)』について
- 「べき関数\(t^2\)と\(t^n\)」のラプラス変換の式と導出方法
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
「べき関数\(t^2\)」のラプラス変換
「べき関数\(t^2\)」をラプラス変換すると、次式となります。
\begin{eqnarray}
\displaystyle\mathcal{L}\left[t^2\right]=\frac{2}{s^3}\tag{1}
\end{eqnarray}
上式の記号\(\displaystyle\mathcal{L}\)はラプラス変換を表す記号です。\(\displaystyle\mathcal{L}\left[t^2\right]\)と書くと、「\(t^2\)をラプラス変換する」ということになります。なお、\(\displaystyle\mathcal{L}\)はラプラス(Laplace)の頭文字を筆記体で書いたものです。
(1)式は覚えた方が便利ですが、忘れても、下記の「ラプラス変換の定義式」を用いると、(1)式を導出することができます。
ラプラス変換の定義式
ラプラス変換\(F(s)\)の定義式は次式となっています。
\begin{eqnarray}
F(s)=\displaystyle\mathcal{L}\left[f(t)\right]={\displaystyle\int}_0^{\infty}f(t){\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\tag{2}
\end{eqnarray}
(2)式は時間\(t\)の関数\(f(t)\)に\(e^{-st}\)を掛けたものを\(t=0\)から\({\infty}\)まで積分すると、\(s\)の関数\(F(s)\)にラプラス変換できるということを示しています。
ラプラス変換の定義式については下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。 続きを見るラプラス変換の「定義式」と「公式の導出方法」
では実際に、(2)式のラプラス変換の定義式を用いて、「べき関数\(t^2\)」をラプラス変換してみましょう。
ラプラス変換の定義式((2)式)の\(f(t)\)に\(t^2\)を代入すると、次式になります。
\begin{eqnarray}
F(s)=\displaystyle\mathcal{L}\left[t^2\right]&=&{\displaystyle\int}_0^{\infty}t^2{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\\
\\
&=&{\displaystyle\int}_0^{\infty}t^2{\;}{\cdot}{\;}\left(\frac{1}{-s}e^{-st}\right)'dt\tag{3}
\end{eqnarray}
ここで、部分積分の公式を用いると、次式になります。
\begin{eqnarray}
F(s)=\displaystyle\mathcal{L}\left[t^2\right]&=&{\displaystyle\int}_0^{\infty}t^2{\;}{\cdot}{\;}\left(\frac{1}{-s}e^{-st}\right)'dt\\
\\
&=&\left[t^2{\;}{\cdot}{\;}\left(\frac{1}{-s}e^{-st}\right)\right]_0^{\infty}-{\displaystyle\int}_0^{\infty}(t^2)'{\;}{\cdot}{\;}\left(\frac{1}{-s}e^{-st}\right)dt\\
\\
&=&0+\frac{2}{s}{\displaystyle\int}_0^{\infty}t{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\\
\\
&=&\frac{2}{s}{\displaystyle\int}_0^{\infty}t{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\tag{4}
\end{eqnarray}
ここで、(4)式をよく見てみましょう。(4)式の「\({\displaystyle\int}_0^{\infty}t{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\)」はラプラス変換の定義式((3)式)の\(f(t)\)が\(t\)になっているものなので、次式で表すことができます。
\begin{eqnarray}
{\displaystyle\int}_0^{\infty}t{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt=\displaystyle\mathcal{L}\left[t\right]\tag{5}
\end{eqnarray}
(5)式を(4)式に代入すると、次式となります。
\begin{eqnarray}
F(s)=\displaystyle\mathcal{L}\left[t^2\right]&=&\frac{2}{s}\displaystyle\mathcal{L}\left[t\right]\tag{6}
\end{eqnarray}
ここで、「\(\displaystyle\mathcal{L}\left[t\right]=\displaystyle\frac{1}{s^2}\)」なので、(6)式は次式のようになり、「べき関数\(t^2\)」のラプラス変換\(F(s)\)を導出することができます。
\begin{eqnarray}
F(s)=\displaystyle\mathcal{L}\left[t^2\right]&=&\frac{2}{s}\displaystyle\mathcal{L}\left[t\right]\\
\\
&=&\frac{2}{s}{\;}{\cdot}{\;}\frac{1}{s^2}\\
\\
&=&\frac{2}{s^3}\tag{7}
\end{eqnarray}
あわせて読みたい
「\(\displaystyle\mathcal{L}\left[t\right]=\displaystyle\frac{1}{s^2}\)の導出方法」と「その他の関数のラプラス変換」については下記の記事でまとめています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。 続きを見るラプラス変換の「一覧表・変換表」と「証明」
「べき関数\(t^n\)」のラプラス変換
「べき関数\(t^n\)」をラプラス変換すると、次式となります。
\begin{eqnarray}
\displaystyle\mathcal{L}\left[t^n\right]=\frac{n!}{s^{n+1}}\tag{8}
\end{eqnarray}
(8)式の証明方法についてこれから説明します。
証明方法
「\(\displaystyle\mathcal{L}\left[t^n\right]=\displaystyle\frac{n!}{s^{n+1}}\)」が成り立つことを、数学的帰納法を用いて証明します。
n=0のとき
「\(n=0\)」のとき、ラプラス変換の定義式より、
\begin{eqnarray}
\displaystyle\mathcal{L}\left[t^0\right]&=&{\displaystyle\int}_0^{\infty}t^0{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\\
\\
&=&{\displaystyle\int}_0^{\infty}1{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\\
\\
&=&\frac{1}{s}\\
\\
&=&\frac{0!}{s^{0+1}}\tag{9}
\end{eqnarray}
となります。
n=k(k=0,1,2,…)のとき
「\(n=k(k=0,1,2,…)\)」のとき、
\begin{eqnarray}
\displaystyle\mathcal{L}\left[t^k\right]={\displaystyle\int}_0^{\infty}t^k{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt=\frac{k!}{s^{k+1}}\tag{10}
\end{eqnarray}
が成り立つと仮定します。
すると、「\(n=k+1\)」のとき、ラプラス変換の定義式より、
\begin{eqnarray}
\displaystyle\mathcal{L}\left[t^{k+1}\right]&=&{\displaystyle\int}_0^{\infty}t^{k+1}{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\\
\\
&=&{\displaystyle\int}_0^{\infty}t^{k+1}{\;}{\cdot}{\;}\left(\frac{1}{-s}e^{-st}\right)'dt\tag{11}
\end{eqnarray}
のように変形することができます。ここで、部分積分の公式を用いると、(11)式は次式となります。
\begin{eqnarray}
\displaystyle\mathcal{L}\left[t^{k+1}\right]&=&{\displaystyle\int}_0^{\infty}t^{k+1}{\;}{\cdot}{\;}\left(\frac{1}{-s}e^{-st}\right)'dt\\
\\
&=&\left[t^{k+1}{\;}{\cdot}{\;}\left(\frac{1}{-s}e^{-st}\right)\right]_0^{\infty}-{\displaystyle\int}_0^{\infty}(t^{k+1})'{\;}{\cdot}{\;}\left(\frac{1}{-s}e^{-st}\right)dt\\
\\
&=&0-{\displaystyle\int}_0^{\infty}(k+1)t^k{\;}{\cdot}{\;}\left(\frac{1}{-s}e^{-st}\right)dt\\
\\
&=&\frac{k+1}{s}{\displaystyle\int}_0^{\infty}t^k{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\tag{12}
\end{eqnarray}
ここで、(10)式の「\(\displaystyle\mathcal{L}\left[f(t)\right]=\displaystyle\mathcal{L}\left[t^k\right]={\displaystyle\int}_0^{\infty}t^k{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt=\displaystyle\frac{k!}{s^{k+1}}\)」の仮定を用いると、(12)式は、
\begin{eqnarray}
\displaystyle\mathcal{L}\left[t^{k+1}\right]&=&\frac{k+1}{s}{\displaystyle\int}_0^{\infty}t^k{\;}{\cdot}{\;}e^{-st}dt\\
\\
&=&\frac{k+1}{s}{\;}{\cdot}{\;}\frac{k!}{s^{k+1}}\\
\\
&=&\frac{(k+1)!}{s^{(k+1)+1}}\tag{13}
\end{eqnarray}
となるため、「\(n=k+1\)」のときも成り立ちます。
したがって、数学的帰納法より、「\(n=0,1,2,…\)」のとき、
\begin{eqnarray}
\displaystyle\mathcal{L}\left[t^n\right]=\frac{n!}{s^{n+1}}\tag{14}
\end{eqnarray}
が成り立ちます。
まとめ
この記事では『指数関数\(e^{-at}\)』について、以下の内容を説明しました。
- 「指数関数\(e^{-at}\)」のラプラス変換の式と導出方法
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