MOSFETにはゲートに抵抗を接続して使用するのが一般的です。
今回はそのゲート抵抗の設計方法について説明します。
設計方法としては大きく2つあります。
- ゲート入力電荷量Qgからゲート抵抗を設計する
- ダイナミック入出力特性からゲート抵抗を設計する
です。
ではこれから上の2つの方法について説明します。
ゲート入力電荷量からゲート抵抗を設計する
以下の条件においてゲート抵抗最適なゲート抵抗を求めます。
・ゲート駆動回路(IC等)の出力電圧:10V
手順1:データシートの電気的特性を見る
MOSFETのデータシートには電気的特性の項目があります。
その電気的特性を見ると、下図のようにゲート入力電荷量Qgというものが記載されています。
ゲート入力電荷量Qgとは、ゲートソース間電圧VGSがゼロから指定された電圧となるまでの総電荷量です。
下図のデータシートでは、ゲートソース間電圧VGSが10Vになるまでにゲートには38nCの電荷量が必要ということになります。
手順2:ゲート抵抗を設計する
ではこのデータシートの値を用いてゲート抵抗を設計します。
ゲートソース間電圧VGSが10Vになる時間をtONとします。時間tONでは、ゲートソース間電圧VGSが10Vなので、ゲートに蓄えられた電荷量はゲート入力電荷量Qg(=38nC)となります。
ここで電流と電荷量の公式を利用します。
電流iを時間で積分tしたものが電荷量Qなので、
Q=\displaystyle \int i dt
\end{eqnarray}
となります。
今回は、ゲート電流iGが時間tON流れることでゲートに蓄えられた電荷量がゲート入力電荷量Qg(=38nC)になるため、
\begin{eqnarray}
Qg=\displaystyle \int_{0}^{t_{ON}} I_G dt= I_G\left[t\right]_{0}^{t_{ON}}=I_Gt_{ON}
\end{eqnarray}
が成り立ちます。
(上式では、ゲート電流iGを一定値IGとして計算しています。)
ゲート駆動電圧が10Vになる時間tONを100ns(任意に設定)とすると、
\begin{eqnarray}
i_G=\displaystyle\frac{Qg}{t_{ON}}=\displaystyle\frac{38[nC]}{100[ns]}=0.38[A]
\end{eqnarray}
となります。
今回、ゲート駆動回路(IC等)の出力電圧VOUTは10Vなので、今回の必要なゲート抵抗RGの値は
\begin{eqnarray}
R_G=\displaystyle\frac{V_{OUT}}{I_G}=\displaystyle\frac{10[V]}{0.38[A]}=26.3[\Omega]
\end{eqnarray}
となります。
ダイナミック入出力特性からゲート抵抗を設計する
先ほどはデータシートの電気的特性からゲート抵抗RGを算出しました(「手順1:データシートの電気的特性を見る」の箇所です)。
厳密に計算する場合にはデータシートのダイナミック入出力特性を使用します。ゲートソース間電圧VGSに対応したゲート入力電荷量Qgを読み取り、その値を用います。
例えば、ゲートソース間電圧を12Vで設計し、VDDが12Vだった場合、Qgは35nCとなります。
「手順2:ゲート抵抗を設計する」は先ほど説明した内容と同じになります。
補足
ゲート入力電荷量Qgは『ゲートソース間電圧VGSが、ゼロから指定された電圧になるまでの総電荷量』であると言いましたが、ネットや参考書によっては、『ON/OFFに必要な電荷量がゲート入力電荷量Qg』と書いてある場合もあります。その場合は、データシートに記載してあるゲートソース間電圧VGSは確実にMOSFETがONできる電圧の目安と考えましょう。
MOSFETのON/OFFの電圧のパラメータとしてはゲートしきい値電圧Vthもあります。
なお、ゲートしきい値電圧Vthはドレイン電流IDが流れだすギリギリのVGSであり、十分なドレイン電流IDを流すためにはゲートしきい値電圧Vthの2倍以上のゲートソース間電圧VGSが必要になります。今回のデータシートの場合はゲートしきい値電圧Vthが2Vですが、確実にONするゲートソース間電圧VGSは10Vということになります。