フィルムコンデンサの定格電圧について(温度特性や周波数特性など)

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フィルムコンデンサの定格電圧には、直流定格電圧(DC定格電圧)交流定格電圧(AC定格電圧)があります。
この記事ではこの定格電圧の特徴や温度特性や周波数特性などを詳しく説明します。

フィルムコンデンサの直流定格電圧(DC定格電圧)

フィルムコンデンサの直流定格電圧(DC定格電圧)
直流定格電圧とは、コンデンサに印加できる尖頭電圧(直流電圧と交流電圧の尖頭値の和)の最大電圧のことです。

電圧にサージやリプル等が含まれる場合には、その尖頭値が直流定格電圧を超えないようにしてください。通常、電子機器用のコンデンサの定格電圧は直流定格電圧で示してあります。

フィルムコンデンサの交流定格電圧(AC定格電圧)

交流定格電圧とは、コンデンサの端子に連続的に印加できる指定周波数(通常50Hzか60Hz)の最大電圧(実効値)のことです。

定格電圧を交流定格電圧で示しているフィルムコンデンサは交流のみを扱う回路(例えば雑音端子用コンデンサ)で使用されることを前提としているコンデンサであり、電源の一次側で使用します。フィルムコンデンサを交流で使用する場合、ある一定以上の電圧が印加されると、コロナ放電が発生するため、絶縁破壊の原因になったりします。

直流定格電圧のものを交流回路(AC回路)で使用する場合

定格電圧を直流定格電圧で示しているフィルムコンデンサでも交流回路(AC回路)で使用できます。ただし、電源の一次側では使用することができません。

また、フィルムコンデンサを交流回路で使用すると、コンデンサの等価直列抵抗と流れる電流によって、コンデンサが自己発熱します。そのため、交流回路で使用できる電圧は直流定格電圧よりも低くなります。

データシートや仕様書等には下表のような「直流定格電圧品の交流使用電圧」を示した一覧表が一般的には記載されています。直流定格電圧のものを交流回路(AC回路)で使用する場合には、コンデンサの品種毎に定められている交流使用電圧の実効値以内で使用します。例えば、下表の場合、直流定格電圧が50Vのフィルムコンデンサ(品種C)の交流使用電圧の実効値は30Vということになります(ただし、50Hz/60Hzにおいて)。
【フィルムコンデンサ】直流定格電圧のものを交流回路(AC回路)で使用する場合

定格電圧の周波数特性(フィルムコンデンサを高周波で使用する場合)

フィルムコンデンサを交流回路(特に高周波回路)で使用した場合、コンデンサの等価直列抵抗と流れる電流によって、コンデンサが自己発熱します。自己発熱が大きいと、コンデンサの寿命が低下したり、発火や発煙の恐れがあります。また、周波数が高いほどフィルムコンデンサに流れる電流は大きくなるため、周波数が高ければ高いほど、印加できる電圧が小さくなります。

そこで、高周波で使用する場合には、データシートや仕様書等に記載してある以下のような周波数特性の表やグラフを用いて、使用可能電圧を低減します。例えば、左の表の場合、交流使用電圧の実効値が100Vのフィルムコンデンサ(品種A)を5kHzで使用する場合、100Vに55%を掛けた55Vしか使用することができないことを示します。右のグラフの場合、フィルムコンデンサは200kHzにおいては交流電圧の実効値を40Vしか印加できなくなることを示します。
定格電圧の周波数特性(フィルムコンデンサを高周波で使用する場合)

また、高周波で使用する場合、自己発熱による耐圧劣化から破壊や、発火や発煙の恐れがあるため、実際の使用条件における自己温度上昇値(室温、無風環境で測定)が、品種毎に定められている規定値以内になることが必要となります。自己温度上昇値はデータシートや仕様書等に以下のような表などが記載されています。
【フィルムコンデンサ】自己温度上昇

フィルムコンデンサを正弦波以外の特殊波形で使用する場合

正弦波以外の特殊波形で使用する場合、波形によって実効値が異なります。また、特殊波形がDCバイアス分を含む場合、DC定格電圧からバイアス電圧を引いた電圧を許容値とし、この許容値を周波数により軽減して使用します。
以下に各特殊波形とその実効値の一覧を示します。
フィルムコンデンサを正弦波以外の特殊波形で使用する場合

正弦波以外の特殊波形で使用する場合には、使用可能かどうかをメーカーに問い合わせすることをおすすめします。

定格電圧の温度特性

フィルムコンデンサは、誘電体の種類によって使用できる上限温度(カテゴリ上限温度TMAX)が決められています。定格温度TRを超えてフィルムコンデンサを使用する場合、ディレーティング係数を適用して、最大使用電圧を軽減させる必要があります。

  • 定格温度TR以下の温度
  • コンデンサの最大使用電圧は、コンデンサの定格電圧と等しくなる。

  • 定格温度TRとカテゴリ上限温度TMAXの間の温度
  • コンデンサの最大使用電圧は、コンデンサの定格電圧にディレーティング係数を適用する(通常、PET及びPPの場合は1.25%/℃、PENの場合は0.8%/℃)。

そのため、データシートや仕様書等には、下図のようなグラフがデータシートや仕様書等に記載しています。
【フィルムコンデンサ】定格電圧の温度特性

カテゴリ上限温度TMAXを超えた状態で使用すると、誘電正接(tanδ)が大きくなり、自己温度上昇値が許容値を超えて、誘電体フィルムが劣化しショート不良となり発火・発煙に至る可能性があります。

補足

温度は周囲温度だけでなく、フィルムコンデンサの自己温度上昇を含めた温度(コンデンサの表面温度=周囲温度+コンデンサの自己温度上昇値)で考えます。例えば、周囲温度が85度で自己温度上昇が7度だった場合、温度は92度となります。また、フィルムコンデンサの周りに高温になる部品(半導体や抵抗など)があると、輻射熱によってフィルムコンデンサが局部的に加熱される可能性があります。そのため、コンデンサの表面温度を測定する場合には、熱源側から測定します。

【補足】フィルムコンデンサの使用可能電圧と許容電流の詳細

フィルムコンデンサの使用可能電圧と許容電流の詳細
フィルムコンデンサの使用可能電圧は3つの要因によって決まっています。また、上図で分かるようにコンデンサの許容電流値(実効値)は静電容量によって異なります。

  • 領域1
  • コンデンサ内でコロナ放電が発生し始めるしきい値電圧VCDによって使用可能電圧が決まっています。

  • 領域2
  • コンデンサで生成される電力PCとコンデンサの表面で消費できる電力PDISSによって決まります。コンデンサで生成される電力PCをコンデンサの表面で消費できる電力PDISS未満に保つために、周波数が上がると使用可能電圧を減らす必要があります。

  • 領域3
  • 流れる電流とコンデンサの等価直列抵抗によって生じる昇温によって制限されています。

まとめ

この記事ではフィルムコンデンサの定格電圧について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • フィルムコンデンサの定格電圧には、直流定格電圧(DC定格電圧)交流定格電圧(AC定格電圧)があること
  • 直流定格電圧のものを交流回路(AC回路)で使用することができるが、交流回路で使用できる電圧は直流定格電圧よりも低くなること
  • 定格温度TRを超えてフィルムコンデンサを使用する場合、ディレーティング係数を適用して、最大使用電圧を軽減させる必要があること。

お読み頂きありがとうございました。

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