【トランスのコア材の種類】アモルファス・けい素鋼板・フェライトなどの特徴!

スポンサーリンク

トランスやインダクタのコア材にはアモルファス合金けい素鋼板フェライトなどの軟磁性材料(ソフト磁性材料)が使われます。
この記事ではコア材の種類と特徴について説明します。

アモルファスコア

トランスのコア材の種類
アモルファスコアとはトランスの鉄心に、アモルファス合金を使用したものです。

一般的な金属は原子が周期的に配列した結晶構造となっていますが、アモルファス(Amorphous)合金は原子が規則性を持たずランダムに配置された結晶構造のない非結晶構造となっています。

アモルファス合金は優れた磁気特性(高い飽和磁束密度、高い透磁率、低い鉄損)を持っているのが特徴です。

アモルファス合金の特徴

  • 高周波特性に優れている
  • 高周波領域のおける鉄損が小さいため、高周波回路での使用に最適です。そのため、主に高周波用トランスに利用されています。けい素鋼板を使用した同容量の変圧器に比べて、鉄損が大幅に小さくなっています。

  • けい素鋼板を使用した同容量の変圧器に比べると、飽和磁束密度を高くすることができない
  • そのため、けい素鋼板を使用した同容量の変圧器と比較すると鉄心サイズが大きくなり、大型化・重量化となります。

  • 比較的高価である
  • 高硬度なので、加工性があまり良くない

補足

  • 強磁性元素(Fe,Ni,Coなど)を主成分とするアモルファス(Amorphous)合金には、Fe-Si-B系アモルファス合金(鉄系アモルファス合金)やコバルト系アモルファスなどがあります。コバルト系アモルファスはFe(鉄)の代わりに高価なCo(コバルト)を主原料としたアモルファスとなっています。
  • アモルファスとは英語で非結晶(非晶質)という意味です。

けい素鋼板を使用したコア

トランスの鉄心にけい素鋼板(珪素鋼板、ケイ素鋼板)を使用したものです。けい素鋼板は、電気鉄板,電磁鋼板とも呼ばれます。

けい素鋼板は低周波領域を得意とする材料であり、商用周波数帯(50/60Hz)において電源トランスチョークコイルなどに使用されています。

軟磁性材料といえば、軟鉄(炭素を減らして純鉄に近づけた鉄)が主流でしたが、1900年にイギリスで軟鉄の約2倍の透磁率を持つけい素鋼板が発明されました。けい素鋼板はFe(鉄)にSi(けい素、シリコン)を混入したFe(鉄)とSi(けい素、シリコン)の合金です。Si(けい素、シリコン)の含有量が多いほど磁気的性質は良くなりますが、多くしすぎると、機械的にもろくなるため、含有比率には限界があります。代表的な組成としては、Fe-3%SiやFe-6.5%Siがあります。

けい素鋼板は圧延と熱処理により板状に加工することが可能です。厚さ0.05~0.5mm程度の板状にしてE型やI型に打ち抜き、数十枚重ねて使用します。鉄心の表面は渦電流損を抑えるために、一枚一枚絶縁されています。高周波用のものほど厚さの薄いものを使用します。

けい素鋼板の特徴

  • 固有抵抗が大きい
  • Fe(鉄)にSi(けい素、シリコン)を混入することによって、固有抵抗が大きくなるため、渦電流損が小さくなります。その結果、鉄損が小さくなります(鉄損は主にヒステリシス損と渦電流損から成る)。

  • 透磁率が大きくなり、経年劣化も少ない
  • Fe(鉄)にSi(けい素、シリコン)を混入することによって、透磁率が大きくなり、経年劣化も少なくなります。

  • 比較的安価である
  • けい素鋼板はFe(鉄)とSi(けい素、シリコン)という安価な原料のみで構成されています。

  • アモルファスコアと比較すると、鉄損が大きい
  • 鉄損が大きいため、高周波の場合に温度上昇が大きくなります。


合金系ダストコア

合金系ダストコアには、パーマロイ(ハイフラックスとも呼ばれることがある)、センダスト、MPP(モリブデンパーマロイ)があります。

パーマロイは『Ni-Fe合金』、センダスト(Sendust)は『Fe-Si-Al合金』、MPP(モリブデンパーマロイ,Moly Permalloy Powder)は『Ni-Fe-Mo合金』の金属粉末を材料とし、これら磁性金属粉末にセラミック絶縁体をコーティングして絶縁した後、加圧成形と熱処理を施した鉄心です。

パーマロイ等の金属磁性材料はフェライトと比較すると、飽和磁束密度が高いが、固有抵抗が小さいため渦電流損が大きくなります。

パーマロイダストコア・ハイフラックスコア

パーマロイダストコア(ハイフラックスコア)とは、Ni(ニッケル)-Fe(鉄)合金の金属粉末を材料とし、これら磁性金属粉末にセラミック絶縁体をコーティングして絶縁した後、加圧成形と熱処理を施した鉄心です。

圧粉鉄心のためギャップが磁路に均一に入るため漏洩磁束が小さくなります。低周波信号用のトランスやチョークコイルなどに使われます。

パーマロイ(Permalloy)とはNi-Fe合金のことを指します。Ni(ニッケル)の含有量を変えることによって、透磁率や飽和磁束密度が変わります。

ニッケルの含有比率が40~50%のFe-40~50%Ni(PBパーマロイと呼ばれている)は、パーマロイ系としては最も飽和磁束密度が大きいため、磁気増幅器などに用いられています。ニッケルの含有比率が70~80%のFe-70~80%Ni(PCパーマロイと呼ばれている)は、パーマロイ系の中でも特に高い透磁率を示すため、電磁鉄心用途として広く使用されています。PCパーマロイの中でも、Fe-79%Ni-5%Moはスーパーマロイと呼ばれており、透磁率の大きい磁性材料として知られています。

補足

  • パーマロイとは透磁率(Permeability)にすぐれた合金(Alloy)という意味からの命名です。
  • パーマロイはMo(モリブデン)、Cu(銅)、Cr(クロム)などを添加することで磁気特性の調整が可能となっています。
  • パーマロイは1920年代にアメリカで発明されました。けい素鋼板よりも透磁率の高い材料ですが、高価なニッケルと使うのが難点です。そこで、Fe-Si-Al合金であるセンダストという材料が1937年に東北大学で発明されました。仙台の粉から「センダスト」と命名されています。

センダストコア

センダストコアとは、Fe(鉄)-Si(シリコン,けい素)-Al(アルミ)合金の金属粉末を材料とし、これら磁性金属粉末にセラミック絶縁体をコーティングして絶縁した後、加圧成形と熱処理を施した鉄心です。

圧粉鉄心のためギャップが磁路に均一に入るため漏洩磁束が小さくなります。パーマロイダストコアと比較すると、コアロスが小さく、高価なニッケルと使わないため安価となります。

MPP(モリブデンパーマロイ,Moly Permalloy Powder)コア

MPP(モリブデンパーマロイ,Moly Permalloy Powder)コアとは、Ni(ニッケル)-Fe(鉄)-Mo(モリブデン)合金の金属粉末を材料とし、これら磁性金属粉末にセラミック絶縁体をコーティングして絶縁した後、加圧成形と熱処理を施した鉄心です。

けい素鋼板と比較すると、磁気抵抗が大きいため、渦電流損が小さくなります。電源のラインフィルタやスイッチング電源の高周波平滑コイルなどに使用されています。透磁率が低いのが欠点です。

フェライトコア

フェライトコアとは、主成分であるFe2O3(酸化鉄)にMo(マンガン)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)などの金属を混合した粉末を加圧成形し、高温粘結させた鉄心です。

フェライトはけい素鋼板やパーマロイ等の金属磁性材料の鉄心と比較すると、高い固有抵抗(体積抵抗)を持っているため、コア内に渦電流が発生しにくく、高周波での損失が非常に少ないのが特徴です。また、高い周波数でも高透磁率を示す磁性材料となっています。そのため、高周波製品用のコア材やコモンモードフィルタコイルの鉄心として広く使用されています。パーマロイ等の金属磁性材料よりも飽和磁束密度は小さくなります。

トランスに使用される代表的なフェライトには大きく分けてMn-Zn(マンガンジンク)系Ni-Zn(ニッケルジンク)系があります。

Mn-Zn(マンガンジンク)系

Ni-Zn系と比較すると、初透磁率と飽和磁束密度が高く、コアロスが低いため、電源やカレントトランスなどのパワートランスに使われています。

しかし、Ni-Zn系よりも固有抵抗(体積抵抗)が低いため、コアに直接コイルを巻くことが出来ず、絶縁性のあるボビンやケースを介した構造となっています。したがって、ボビンやケースの分、形状的に大きくなってしまいます。コア形状は用途に応じて多種多様なものが生産されています。

Ni-Zn(ニッケルジンク)系

初透磁率、飽和磁束密度、コアロスはMn-Zn系よりも劣るが、固有抵抗(体積抵抗)が高く絶縁体をみなせます(Mn-Zn系よりも5桁以上固有抵抗が大きい)。そのため、コアに直接コイルを巻くことができ、小型製品に適しています。また、Mn-Zn系よりも高周波での使用に適しています。そのため、整合トランスやパルストランスなどの信号用トランスやチップインダクタに使われています。ノイズ対策用途ではビーズやクランプフィルタなどに使用されています。

パーメンジュール

パーメンジュール(Permendur)とはFe(鉄)とCo(コバルト)を1:1となるように合金化させた軟磁性材です。

最も高い磁束密度を得られることが最大の特徴となっています。

ファインメット

アモルファスを素材とした日立金属のオリジナル磁性材料です。

世界初のナノ結晶軟磁性材料で、飽和磁束密度と透磁率の両方が高く、トランスやインダクタの小型・軽量化が可能となっています。

まとめ

この記事ではコア材の種類について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • アモルファス、けい素鋼板、ダスト、フェライトの特徴

お読み頂きありがとうございました。

当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧には以下のボタンから移動することができます。

全記事一覧

スポンサーリンク