レギュレータ(LDOなど)の『ドロップアウト電圧』とは?

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この記事ではレギュレータ(LDOなど)の『ドロップアウト電圧』について

  • ドロップアウト電圧とは
  • 入出力間電圧差がドロップアウト電圧より小さくなった時の動作
  • ドロップアウト電圧が生じる理由と原理

などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。

ドロップアウト電圧とは

ドロップアウト電圧とは

シリーズレギュレータにはドロップアウト電圧\(V_{DO}\)という特性があります。ドロップアウト電圧とは、安定化動作可能な入出力間電圧差(入力電圧\(V_{IN}\)と出力電圧\(V_{OUT}\)の電圧差)の最小値となります。例えば、出力電圧\(V_{OUT}\)が3.3V、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)が2Vの場合、安定化動作可能な入力電圧\(V_{IN}\)は5.3Vまでとなります。

入出力電圧差がドロップアウト電圧\(V_{DO}\)より小さくなると、出力電圧\(V_{OUT}\)は正常な電圧を維持できずドロップしてしまいます。

では次に「入出力間電圧差がドロップアウト電圧\(V_{DO}\)より小さくなった時の動作」について説明します。

補足

  • ドロップアウト電圧の記号は\(V_{DO}\)や\(V_{DROP}\)や\(V_{DIF}\)で表します。
  • ドロップアウト電圧は英語では『Dropout Voltage』と書きます。

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入出力間電圧差がドロップアウト電圧より小さくなった時の動作

入出力間電圧差がドロップアウト電圧より小さくなった時の動作

例えば、入力電圧\(V_{IN}=7{\mathrm{V}}\)、出力電圧\(V_{OUT}=3.3{\mathrm{V}}\)に設定している回路において、上図のように入力電圧\(V_{IN}\)が4Vに低下した場合を考えてみましょう。通常のシリーズレギュレータのドロップアウト電圧\(V_{DO}\)を2Vと仮定します。

通常のシリーズレギュレータでは、入力電圧\(V_{IN}\)は『出力電圧\(V_{OUT}\)+\(V_{DO}\)=3.3V+2V=5.3V』を確保しなければならないため、入力電圧\(V_{IN}\)が4Vに低下すると、出力電圧\(V_{OUT}\)は4Vから\(V_{DO}\)を引いた電圧(2V程度)まで低下してしまいます。

また、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)が低いシリーズレギュレータとして、LDO(Low Drop Out)と呼ばれる回路があります。LDOは制御素子に『PNP型バイポーラトランジスタ』や『Pチャネル型MOSFET』を用いることで、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)を低くすることが可能となっており、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)を0.5V程度にすることが可能になっています。

そのため、LDOでは、入力電圧\(V_{IN}\)は『出力電圧\(V_{OUT}\)+\(V_{DO}\)=3.3V+0.5V=3.8V』を確保すればよいので、入力電圧\(V_{IN}\)が4Vに低下しても、出力電圧\(V_{OUT}\)は3.3Vを維持することができます。すなわち、LDOは入力電圧変動の影響を受けにくい回路となります。

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ドロップアウト電圧が生じる理由と原理

次に、制御素子に『NPNトランジスタを使用した場合』と『PNPトランジスタを使用した場合(LDO)』において、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)が生じる理由と原理について説明します。

NPNトランジスタを使用した場合のドロップアウト電圧

NPNトランジスタを使用した場合のドロップアウト電圧

上図に『NPN型バイポーラトランジスタ(以後NPNトランジスタと書きます)』を使用したシリーズレギュレータを示しています。電流増幅度を稼ぐためにNPNトランジスタ\(Q_1\)と\(Q_2\)でダーリントン接続させています。

例えば、出力電圧\(V_{OUT}\)が3.3Vの場合、NPNトランジスタ\(Q_1\)のエミッタ端子(E1)の電圧\(V_{E1}\)が3.3Vとなります。NPNトランジスタ\(Q_1\)を動作させるためには、ベースエミッタ間電圧\(V_{BE1}\)が約0.7V必要となります。そのため、NPNトランジスタ\(Q_1\)のベース端子(B1)の電圧\(V_{B1}\)には以下の値の電圧を印加する必要があります。

\begin{eqnarray}
V_{B1}&=&V_{E1}+V_{BE1}\\
\\
&=&3.3+0.7\\
\\
&=&4.0{\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}

また、NPNトランジスタ\(Q_1\)のベース端子(B1)の電圧\(V_{B1}\)はNPNトランジスタ\(Q_2\)のエミッタ端子(E2)の電圧\(V_{E2}\)と等しくなります。同様にNPNトランジスタ\(Q_2\)を動作させるためには、ベースエミッタ間電圧\(V_{BE2}\)が約0.7V必要となります。そのため、NPNトランジスタ\(Q_2\)のベース端子(B2)の電圧\(V_{B2}\)には以下の値の電圧を印加する必要があります。

\begin{eqnarray}
V_{B2}&=&V_{E2}+V_{BE2}\\
\\
&=&4.0+0.7\\
\\
&=&4.7{\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}

ここで、NPNトランジスタを制御するエラーアンプ内部の出力段にもトランジスタがあるため、エラーアンプがNPNトランジスタ\(Q_2\)のベース端子(B2)に4.7Vを印加するためには、マージンが必要となります。マージンを0.7Vとすれば、入力電圧\(V_{IN}\)は5.4V必要となります。

つまり、出力電圧\(V_{OUT}\)を3.3Vにするためには、入力電圧\(V_{IN}\)が5.4V以上必要ということです。以上より、『NPN型バイポーラトランジスタ』を使用したシリーズレギュレータの場合、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
V_{DO}&=&V_{IN}-V_{OUT}\\
\\
&=&5.4-3.3\\
\\
&=&2.1{\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}

なお、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)は使用するトランジスタの種類などによって変わります。一般的に、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)は2V~3V程度のものが多いようです。

補足

  • ダーリントン接続することで、電流増幅度を大きくすることができますが、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)が大きくなる原因にもなります。なお、ダーリントン接続の特徴(メリットやデメリットなど)については下記の記事で別途説明しています。
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PNPトランジスタを使用した場合のドロップアウト電圧

PNPトランジスタを使用した場合のドロップアウト電圧

上図に『PNP型バイポーラトランジスタ(以後PNPトランジスタと書きます)』を使用したシリーズレギュレータ(LDO)を示しています。

例えば、入力電圧\(V_{IN}\)が5Vの場合、PNPトランジスタ\(Q_1\)のエミッタ端子(E)の電圧\(V_E\)が5Vとなります。

PNPトランジスタ\(Q_1\)を動作させるためには、ベース端子(B)の電圧\(V_B\)がエミッタ端子(E)の電圧\(V_E\)よりも0.7V程度低くなる必要があります。そのため、PNPトランジスタ\(Q_1\)のベース端子(B)の電圧\(V_B\)には以下の値の電圧を印加する必要があります。

\begin{eqnarray}
V_B&=&V_E-0.7\\
\\
&=&5-0.7\\
\\
&=&4.3{\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}

また、PNPトランジスタ\(Q_1\)はベース電流\(I_B\)を大きくすることで、飽和領域で動作させることができます。飽和領域ではエミッタコレクタ間電圧\(V_{EC}\)を飽和電圧(約0.3V)まで低くすることができます。

したがって、入力電圧\(V_{IN}\)が5Vの場合、出力電圧\(V_{OUT}\)は4.7Vまで出力することができるということになります。以上より、『PNP型バイポーラトランジスタ』を使用したシリーズレギュレータ(LDO)の場合、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)は以下の値となります。

\begin{eqnarray}
V_{DO}&=&V_{IN}-V_{OUT}\\
\\
&=&5-4.7\\
\\
&=&0.3{\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}

これが、LDOのドロップアウト電圧\(V_{DO}\)が低い理由です。なお、ドロップアウト電圧\(V_{DO}\)は使用するPNPトランジスタの種類などによって変わります。一般的にはLDOのドロップアウト電圧\(V_{DO}\)は0.3V~1.2V程度のものが多いようです。

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まとめ

この記事ではレギュレータ(LDOなど)の『ドロップアウト電圧』について、以下の内容を説明しました。

  • ドロップアウト電圧とは
  • 入出力間電圧差がドロップアウト電圧より小さくなった時の動作
  • ドロップアウト電圧が生じる理由と原理

お読み頂きありがとうございました。

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