【コンデンサの直列接続】静電容量の『計算』と『証明』について!

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この記事では『コンデンサの直列接続』について

  • 直列接続されたコンデンサの合成静電容量の『計算方法』・『証明』・『例題』

などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。

【コンデンサの直列接続】静電容量の『計算』

【コンデンサの直列接続】静電容量の『計算』

コンデンサ\(C_1\)とコンデンサ\(C_2\)を直列に接続することを「コンデンサの直列接続」といいます。

「静電容量が\(C_1{\mathrm{[F]}}\)のコンデンサ」と「静電容量が\(C_2{\mathrm{[F]}}\)のコンデンサ」が直列接続されている時、合成静電容量\(C\)の逆数\(\displaystyle\frac{1}{C}\)は各コンデンサの静電容量の逆数の和で計算することができ、次式で表されます。

\begin{eqnarray}
\frac{1}{C}=\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}\tag{1}
\end{eqnarray}

したがって、(1)式を変形すると、合成静電容量\(C\)は次式で表されます。

\begin{eqnarray}
C=\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{C_1}+\displaystyle\frac{1}{C_2}}=\frac{C_1×C_2}{C_1+C_2}{\mathrm{[F]}}\tag{2}
\end{eqnarray}

直列接続は「和分の積」で合成静電容量を求められる

直列接続されている2つのコンデンサの合成静電容量を求める時、次式で示すような「和分の積」で求めることができます。

\begin{eqnarray}
C=\frac{\mbox{2つの静電容量の積(かけ算)}}{\mbox{2つの静電容量の和(足し算)}}=\frac{C_1×C_2}{C_1+C_2}{\mathrm{[F]}}\tag{3}
\end{eqnarray}

(3)式は分母が、分子がになっているので、和分の積と呼ばれています。

ただし、注意があります。

和分の積が使えるのは、2つのコンデンサが直列接続されている時のみ!」です。

3つ以上のコンデンサが直列接続されている時」には「和分の積」は使えません。

合成静電容量とは?

複数のコンデンサをまとめて1つのコンデンサとした時の静電容量を合成静電容量と呼びます。

合成静電容量は「合成容量」や「合成コンデンサの静電容量」などとも呼ばれています。

Nつのコンデンサが直列接続されている時

Nつのコンデンサが直列接続されている時

(1)式はコンデンサが3つ以上直列接続されている時にも成り立ちます。

上図に示しているのは、Nつのコンデンサ(各コンデンサの静電容量を\(C_1{\mathrm{[F]}}\),\(C_2{\mathrm{[F]}}\),・・・,\(C_N{\mathrm{[F]}}\)とする)が直列接続されている回路です。

この回路においても、合成静電容量\(C\)の逆数\(\displaystyle\frac{1}{C}\)は各コンデンサの静電容量の逆数の和で計算することができ、次式で表されます。

\begin{eqnarray}
\frac{1}{C}=\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}+{\cdots}+\frac{1}{C_N}\tag{4}
\end{eqnarray}

したがって、(4)式を変形すると、合成静電容量\(C\)は次式で表されます。

\begin{eqnarray}
C=\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{C_1}+\displaystyle\frac{1}{C_2}+{\cdots}+\displaystyle\frac{1}{C_N}}{\mathrm{[F]}}\tag{5}
\end{eqnarray}

例えば、3つのコンデンサ(各コンデンサの静電容量を\(C_1{\mathrm{[F]}}\),\(C_2{\mathrm{[F]}}\),\(C_3{\mathrm{[F]}}\)とする)が直列接続されている時の合成静電容量\(C\)は次式となります。

\begin{eqnarray}
C=\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{C_1}+\displaystyle\frac{1}{C_2}+\displaystyle\frac{1}{C_3}}{\mathrm{[F]}}\tag{6}
\end{eqnarray}

注意点

3つのコンデンサが直列接続されている時に「和分の積」を用いて、合成静電容量\(C\)を

\begin{eqnarray}
C=\frac{\mbox{3つの静電容量の積(かけ算)}}{\mbox{3つの静電容量の和(足し算)}}=\frac{C_1×C_2×C_3}{C_1+C_2+C_3}{\mathrm{[F]}}\tag{7}
\end{eqnarray}

としないように気を付けてください。繰り返しになりますが、和分の積が使えるのは「2つのコンデンサが直列接続されている時のみ!」です。

【コンデンサの直列接続】静電容量の『証明』

【コンデンサの直列接続】静電容量の『証明』

上図に示すように、「静電容量が\(C_1{\mathrm{[F]}}\)のコンデンサ」と「静電容量が\(C_2{\mathrm{[F]}}\)のコンデンサ」を直列接続した後、電源電圧\(V{\mathrm{[V]}}\)を印加して、2つのコンデンサを充電します。

この時、各コンデンサの電極板に蓄えられている電荷が下記であるとします。

  • コンデンサ\(C_1\)の電極板\(L_1\)に蓄えられている電荷:\(+Q_1{\mathrm{[C]}}\)
  • コンデンサ\(C_1\)の電極板\(M_1\)に蓄えられている電荷:\(-Q_1{\mathrm{[C]}}\)
  • コンデンサ\(C_2\)の電極板\(L_2\)に蓄えられている電荷:\(+Q_2{\mathrm{[C]}}\)
  • コンデンサ\(C_2\)の電極板\(M_2\)に蓄えられている電荷:\(-Q_2{\mathrm{[C]}}\)

電源電圧\(V{\mathrm{[V]}}\)を印加する前、閉じている回路(コンデンサ\(C_1\)の電極板\(M_1\)とコンデンサ\(C_2\)の電極板\(L_2\))に蓄えられている電荷の合計は\(0{\mathrm{[C]}}\)なので次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
0&=&-Q_1+Q_2\\
\\
{\Leftrightarrow}Q_1&=&Q_2\tag{8}
\end{eqnarray}

上式に示すように、「コンデンサ\(C_1\)に蓄えられている電荷の大きさ\(Q_1{\mathrm{[C]}}\)」と「コンデンサ\(C_2\)に蓄えられている電荷\(Q_2{\mathrm{[C]}}\)」が等しくなります。したがって、各コンデンサに蓄えられている電荷の大きさを\(Q{\mathrm{[C]}}\)とすると次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
Q=Q_1=Q_2\tag{9}
\end{eqnarray}

ポイント

(8)式および(9)式から分かるように、コンデンサを直列接続した場合、静電容量の大きさに関わらず、各コンデンサに蓄えられている電荷が同じとなります。

一方、「コンデンサ\(C_1\)にかかる電圧\(V_1\)」と「コンデンサ\(C_2\)にかかる電圧\(V_2\)」は「\(Q=CV\)」の公式より次式で表されます。

    • コンデンサ\(C_1\)にかかる電圧\(V_1\)

\begin{eqnarray}
Q&=&C_1V_1\\
\\
{\Leftrightarrow}V_1&=&\frac{Q}{C_1}{\mathrm{[V]}}\tag{10}
\end{eqnarray}

    • コンデンサ\(C_2\)にかかる電圧\(V_2\)

\begin{eqnarray}
Q&=&C_2V_2\\
\\
{\Leftrightarrow}V_2&=&\frac{Q}{C_2}{\mathrm{[V]}}\tag{11}
\end{eqnarray}

また、電源電圧\(V{\mathrm{[V]}}\)は各コンデンサにかかる電圧の和となるので、次式が成り立ちます。

\begin{eqnarray}
V=V_1+V_2\tag{12}
\end{eqnarray}

ここで、コンデンサ\(C_1\)と\(C_2\)の合成静電容量を\(C{\mathrm{[F]}}\)とすると、次式が成り立ちます。
\begin{eqnarray}
Q&=&CV\\
\\
{\Leftrightarrow}V&=&\frac{Q}{C}{\mathrm{[V]}}\tag{13}
\end{eqnarray}

(10)式と(11)式と(13)式を(12)式に代入すると、次式のようになり、合成静電容量\(C\)の逆数\(\displaystyle\frac{1}{C}\)は各コンデンサの静電容量の逆数の和で計算できることが分かります。

\begin{eqnarray}
V&=&V_1+V_2\\
\\
{\Leftrightarrow}\frac{Q}{C}&=&\frac{Q}{C_1}+\frac{Q}{C_2}\\
\\
{\Leftrightarrow}\frac{1}{C}&=&\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}\tag{14}
\end{eqnarray}

【コンデンサの直列接続】静電容量を求める例題

例題

【コンデンサの直列接続】静電容量を求める例題

上図に示した回路において、コンデンサ\(C_1\)が\(6{\mathrm{[μF]}}\)、コンデンサ\(C_2\)が\(2{\mathrm{[μF]}}\)の時、コンデンサ\(C_1\)と\(C_2\)の合成静電容量\(C\)は何\({\mathrm{μF}}\)でしょうか。

解答

各コンデンサの静電容量は「\(C_1=6{\mathrm{[μF]}}\)」と「\(C_2=2{\mathrm{[μF]}}\)」となっているので、まず単位を\({\mathrm{[μF]}}\)から\({\mathrm{[F]}}\)に変換します。

「\({\mathrm{μ}}\)(マイクロ)」は「\(10^{-6}\)」を表しているので、単位変換すると各コンデンサの静電容量は下記となります。

\begin{eqnarray}
C_1&=&6{\mathrm{[μF]}}=6×10^{-6}{\mathrm{[F]}}\tag{15}\\
\\
C_2&=&2{\mathrm{[μF]}}=2×10^{-6}{\mathrm{[F]}}\tag{16}
\end{eqnarray}

(15)式と(16)式を(2)式に代入すると、コンデンサ\(C_1\)と\(C_2\)の合成静電容量\(C\)を求めることができ、下記の値となります。

\begin{eqnarray}
C&=&\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{C_1}+\displaystyle\frac{1}{C_2}}{\mathrm{[F]}}\\
\\
&=&\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{6×10^{-6}}+\displaystyle\frac{1}{2×10^{-6}}}{\mathrm{[F]}}\\
\\
&=&1.5×10^{-6}{\mathrm{[F]}}\\
\\
&=&1.5{\mathrm{[μF]}}\tag{17}
\end{eqnarray}

あわせて読みたい

「\({\mathrm{μF}}\)(マイクロファラド)」の「\({\mathrm{μ}}\)(マイクロ)」は「\(10^{-6}\)」を表しています。

「\({\mathrm{μ}}\)(マイクロ)」はSI接頭語(大きな桁や小さな桁を表すために、単位の前に付けられている接頭語)です。その他には距離を表す単位の「\({\mathrm{mm}}\)(ミリメートル)」の「\({\mathrm{m}}\)(ミリ)」、「\({\mathrm{cm}}\)(センチメートル)」の「\({\mathrm{c}}\)(センチ)」、「\({\mathrm{km}}\)(キロメートル)」の「\({\mathrm{k}}\)(キロ)」などがSI接頭語となります。

SI接頭語については下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。

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コンデンサを直列接続すると合成静電容量が小さくなる理由

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コンデンサの直列接続についてもう少し深堀してみましょう。

コンデンサを直列接続した場合、合成静電容量\(C\)は各コンデンサの静電容量よりも小さくなります。これはなぜででしょうか。

面積\(S{\mathrm{[m^2]}}\)の2つの電極板を距離\(d{\mathrm{[m]}}\)離して平行においたコンデンサの静電容量\(C{\mathrm{[F]}}\)は面積\(S\)に比例し、距離\(d\)に反比例します。ここで誘電率を\({\varepsilon}\)とすると、コンデンサの静電容量\(C\)は次式で表されます。

\begin{eqnarray}
C={\varepsilon}\frac{S}{d}{\mathrm{[F]}}\tag{18}
\end{eqnarray}

また、コンデンサ\(C_1\)の電極板の距離を\(d_1{\mathrm{[m]}}\)、コンデンサ\(C_2\)の電極板の距離を\(d_2{\mathrm{[m]}}\)とすると、コンデンサ\(C_1\)と\(C_2\)の静電容量は次式で表されます(各コンデンサの誘電率\({\varepsilon}\)と面積\(S\)が等しいとします)。

\begin{eqnarray}
C_1&=&{\varepsilon}\frac{S}{d_1}{\mathrm{[F]}}\tag{19}\\
\\
C_1&=&{\varepsilon}\frac{S}{d_2}{\mathrm{[F]}}\tag{20}
\end{eqnarray}

(19)式と(20)式を(1)式に代入すると次式となります。

\begin{eqnarray}
\frac{1}{C}&=&\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}\\
\\
&=&\frac{d_1}{{\varepsilon}S}+\frac{d_2}{{\varepsilon}S}\\
\\
&=&\frac{d_1+d_2}{{\varepsilon}S}\\
\\
{\Leftrightarrow}C&=&{\varepsilon}\frac{S}{d_1+d_2}{\mathrm{[F]}}\tag{21}
\end{eqnarray}

上式より、コンデンサ\(C_1\)と\(C_2\)の誘電率\({\varepsilon}\)と面積\(S\)が同じ場合、コンデンサを直列接続すると、合成静電容量\(C\)は電極板の距離が長くなった(\(d_1+d_2\))のと等価になります。電極板の距離が長くなれば、(18)式より静電容量\(C\)が小さくなることはイメージできると思います。

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まとめ

この記事では、『コンデンサの直列接続』について、以下の内容を説明しました。

  • 直列接続されたコンデンサの合成静電容量の『計算方法』・『証明』・『例題』

お読み頂きありがとうございました。

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