この記事では、バイポーラトランジスタについて
- バイポーラトランジスタの回路記号・特徴・駆動方法・等価回路・構造・動作原理・使い方
などを図を用いて分かりやすく説明します。
バイポーラトランジスタの『回路記号』
バイポーラトランジスタとは、トランジスタの一種であり、N型半導体とP型半導体がサンドイッチの構造をしている素子です。
薄いP型半導体をN型半導体でサンドイッチしたものをNPNトランジスタ、薄いN型半導体をP型半導体でサンドイッチしたものをPNPトランジスタといいます。
バイポーラトランジスタは3端子の素子であり、それぞれベース(B)、コレクタ(C)、エミッタ(E)といいます。
ベース(B)-コレクタ(C)間にPN接合、ベース(B)-エミッタ(E)間にPN接合があるため、バイポーラトランジスタは2つのPN接合を持っています。
バイポーラトランジスタの回路記号にはベース(B)-エミッタ(E)間に矢印が付いています。この矢印の方向はP型→N型の向き(電流が流れる向き)となっています。
補足
バイポーラトランジスタの『特徴』
バイポーラトランジスタのベース(B)に流れる電流をベース電流IB、コレクタ(C)に流れる電流をコレクタ電流ICといいます。
バイポーラトランジスタはベース(B)に小さなベース電流IBが流れると、その数十~数百倍のコレクタ電流ICが流れる特徴を持っており、この特徴を用いて増幅作用を行います。
なお、ベース電流IBとコレクタ電流ICの比率のことを直流電流増幅率hFEで表し、以下の式で表されます。
\begin{eqnarray}
h_{FE}=\frac{I_C}{I_B}
\end{eqnarray}
また、バイポーラトランジスタは他のトランジスタ(MOSFETやIGBT)を比較すると高耐圧でもオン抵抗が低いという特徴があります。
各トランジスタの『種類』と『特徴』については以下の記事にまとめていますので参考にしてください。
あわせて読みたい
バイポーラトランジスタの『駆動方法』
バイポーラトランジスタは電流制御素子となっています。ベース(B)に流れるベース電流IBによって、コレクタ(C)に流れるコレクタ電流ICを制御します。
- NPNトランジスタの場合
- PNPトランジスタの場合
ベース(B)-エミッタ(E)間に順バイアスの電圧、ベース(B)-コレクタ(C)間に逆バイアスの電圧を印加します。すなわち、ベース(B)を基準として、エミッタ(E)がマイナス、コレクタ(C)がプラスになるように電圧を印加します。その結果、ベース(B)にベース電流IBが流れ、コレクタ(C)に大きなコレクタ電流ICが流れるようになります。
ベース(B)-エミッタ(E)間に順バイアスの電圧、ベース(B)-コレクタ(C)間に逆バイアスの電圧を印加します。すなわち、ベース(B)を基準として、エミッタ(E)がプラス、コレクタ(C)がマイナスになるように電圧を印加します。その結果、ベース(B)にベース電流IBが流れ、コレクタ(C)に大きなコレクタ電流ICが流れるようになります。
補足
- 順バイアス(順方向バイアス)とは、P型半導体にプラス、N型半導体のマイナスの電圧を印加することを指します。すなわち、電流が流れる方向に電圧を加えることです。
- 逆バイアス(逆方向バイアス)とは、P型半導体にマイナス、N型半導体のプラスの電圧を印加することを指します。すなわち、電流が流れない方向に電圧を加えることです。
バイポーラトランジスタの『等価回路』
バイポーラトランジスタは2つのPN接合を持っているため、等価回路は2つのダイオードを組み合わせたものとなっています。
なお、ベース電流IBのhFE倍の電流がコレクタICとなるため、ベース(B)-コレクタ(C)間に電流源hFEIBを追加している等価回路もあります。
バイポーラトランジスタの『構造』
バイポーラトランジスタは上図のような構造をしています。
エミッタ(E)とコレクタ(C)は同じN型半導体ですが、不純物濃度が異なり、エミッタ(E)はコレクタ(C)よりも不純物濃度が高くなっています。
そのため、エミッタ(E)とコレクタ(C)は同じN型半導体なので、ひっくり返して接続しても大丈夫のように感じますが、不純物濃度の違いにより、ひっくり返して接続した場合は、正常に動作しなくなります。
また、よく見かける構造は上図の赤の点線方向を横から見た時のモデル図となっています。
なお、以下の記事に『エミッタ(E)とコレクタ(C)をひっくり返して逆接続した場合にどうのようになるのか』について説明していますので参考にしてください。
バイポーラトランジスタの『動作原理』
上図にバイポーラトランジスタの動作原理を示しています。上図はエミッタ接地回路となっていますが、トランジスタの動作原理は他の接地回路(ベース接地回路、コレクタ接地回路)でも同じです。
ベース(B)-エミッタ(E)間に順バイアスの電圧、ベース(B)-コレクタ(C)間に逆バイアスの電圧がかかるように電圧を印加します。
ベースエミッタ間電圧VBEを印加していない場合
コレクタエミッタ間電圧VCEを印加しても、ベース(B)-コレクタ(C)間が逆バイアスになっている(P型半導体のベースがマイナス、N型半導体のコレクタがプラス)ため、コレクタ電流ICが流れません。
ベースエミッタ間電圧VBEを印加した場合
- ベースエミッタ間電圧VBE(ベースにプラス、エミッタにマイナス)を印加すると、エミッタ(E)に存在する電子がベースに移動し、一部の電子がベース内の正孔と結合します。これが、ベース電流IBとなります。
- しかし、ベース(B)のP型半導体の部分は構造的に薄く作られているので、P型半導体のベース(B)に流入してきた電子の多くがコレクタ(C)に抜け出してしまいます。その後、コレクタ-エミッタ間電圧VCEによって電子が誘導されてコレクタ方向に移動します。これがコレクタ電流ICとなります。
- すなわち、小さなベース電流IBを流すことによって、大きなコレクタ電流ICを制御しています。
補足
- バイポーラは英語では「Bipolar」と書きます。「Bi」は「2 つの」を意味する接頭辞、「polar」は「極性の」を意味する単語です。この「極性」は電気ではプラスとマイナスのことを指します。バイポーラトランジスタは動作原理から分かるように、プラスのキャリアである正孔とマイナスのキャリアである電子の両方を使用してます。そのため、バイポーラトランジスタと呼ばれています。一方、MOSFETはどちらか1種類のキャリアのみを用いるため、ユニポーラトランジスタとなります。
- エミッタは英語で「Emitter」と書きます。意味は「放出するもの」という意味です。NPNトランジスタにおいて、エミッタ(E)は電子を放出している箇所となっています。
- コレクタは英語で「Collector」と書きます。意味は「収集」という意味です。NPNトランジスタにおいて、コレクタ(C)は電子を収集している箇所となっています。
バイポーラトランジスタの『使い方』
バイポーラトランジスタは使い方によって3種類の接地方式があります。
エミッタ接地回路、コレクタ接地回路、ベース接地回路です。この中だと、エミッタ接地回路が最も用いられています。各接地方式については、以下の記事に説明していますので参考にしてください。
あわせて読みたい
まとめ
この記事では『バイポーラトランジスタ』について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- バイポーラトランジスタの『回路記号』
- バイポーラトランジスタの『特徴』
- バイポーラトランジスタの『駆動方法』
- バイポーラトランジスタの『等価回路』
- バイポーラトランジスタの『構造』
- バイポーラトランジスタの『動作原理』
- バイポーラトランジスタの『使い方』
お読み頂きありがとうございました。
当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧には以下のボタンから移動することができます。