ダイオードやトランジスタ等の半導体デバイスのデータシートや仕様書には絶対最大定格という項目があります。
この記事では「絶対最大定格」の意味、絶対最大定格を超えるとどうなるのか?、推奨動作条件との違いなどを説明します。
絶対最大定格とは?
絶対最大定格とは、その名の通り、デバイスが許容できる絶対的な最大の定格のことです。データシートに記載されてある絶対最大定格の項目に対して、一瞬でも超えてはならない値となっています。
そのため、絶対最大定格に対して十分なマージンを考慮して動作させるのがベストです(例えば、”絶対最大定格の80%以下で使用する”など)。
例えば、ダイオード(ルネサス製、型番:1S2076A)のデータシートでは、絶対最大定格は以下のように記載されています。
このダイオードを使用する際、ダイオードに流れる電流は、平均整流電流IOが150mAを一瞬でも超えないこと、せん頭順電流IFMが450mAを一瞬でも超えないことが必要となります。同様に、ダイオードにかかる電圧はせん頭逆電圧VRMが70Vを一瞬でも超えないこと、逆電圧VRが60Vを一瞬でも超えないことが必要となります。
補足
- 絶対最大定格は簡略化して「最大定格」と書かれていることがあります。
- 絶対最大定格は英語では「Absolute Maximum Ratings」と書きます。「Absolute」が省略され「Maximum Ratings」と書かれていることもあります。
- 絶対最大定格は規格で定義されています。JIS C 7032では絶対最大定格は「瞬時たりとも超過してはならない限界値で、また二つの項目も同時に達してはならない限界値」と記されています。
- 回路を設計するときには、設計に余裕を持たせて、いかなる条件においても絶対最大定格を超えないように注意して設計をしてください。絶対最大定格に近づく場合には、外部の回路を変更して絶対最大定格に近づけないようにするか、絶対最大定格のより大きなデバイスに変更する必要があります。
- 絶対最大定格の表に記載された値で動作させるという意味ではありません。絶対に越えてはならない値です(時々間違える方がいます)。
- 絶対最大定格の表に記載してある「Ta=25℃」のTaは周囲温度のことを指しています。半導体の絶対最大定格や特性は「Ta=25℃」を基準にしてデータを表示するという一般的な約束があります。この最大最大定格のデータは周囲温度がTa=25℃」の時のものなので、周囲温度が高い場合や低い場合には条件が変わります。25℃は日本の間隔では低い寒い気温ですが、これは冷涼な欧米を基準に定められたためです。
絶対最大定格を超えるとどうなるの?
デバイスの絶対最大定格を一瞬でも超えた場合には、デバイスの性能が劣化したり破壊したりする可能性があります。最悪の場合、破裂したり燃焼したりする可能性もあります。
また、絶対最大定格を超えて使用しても、デバイスの外観は何も変化なく、正常に動作していることがあります。ただし、デバイスは何かしらダメージを受けており劣化しています。このダメージによって、特性が少し変化したり、デバイスの寿命を縮めたり、時間が経過してから故障する「原因不明の故障」を引き起こしたりします。
すなわち、絶対最大定格を一瞬でも超えると、デバイスの信頼性に影響を与えてしまうのです。
絶対最大定格と推奨動作条件の違い
IC等のデータシートでは、絶対最大定格の他に推奨動作条件というものが記載されています。
推奨動作条件とは、データシートや仕様書に記載されている性能をデバイスが発揮できることができる動作条件になります。すなわち、デバイスが正常動作を保証する条件です。通常、この推奨動作条件の範囲内で使用します。推奨動作条件の各項目の内、どれか1つでも越えた場合、ICの動作保証が出来なくなります。
推奨動作条件は簡略化して「動作条件」と書かれていることがあります。また、「推奨動作保証条件」と書かれている場合もあります。
まとめ
この記事では絶対最大定格について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- 絶対最大定格はデータシートに記載してある
- 絶対最大定格は絶対に一瞬でも超えてはならない値のこと
- 絶対最大定格を超えるとデバイスが劣化したり破壊したりする
- 絶対最大定格を超えて正常に動作していてもダメージを負っており、特性が少し変化したりする
- 絶対最大定格と推奨動作条件の違い
お読み頂きありがとうございました。
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