この記事では静電気対策に最適な表面抵抗率(表面抵抗値)について説明します。
静電気対策に最適な表面抵抗率(表面抵抗値)
静電気対策品には、表面抵抗率ρSまたは表面抵抗値RSが記載されています。
表面抵抗率ρSは『IEC 61350-5-1』によって、以下のように分類されています。
- 静電気導電性材料
- 静電気絶縁性材料
- 静電気拡散性材料
・表面抵抗率ρS:1×102~1×105[Ω/sq.]
・表面抵抗率ρSが低いので、帯電した物体が接触した際には激しいESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)が発生する可能性があります。
・表面抵抗率ρS:1×1011[Ω/sq.]以上
・表面抵抗率ρSが高いので、帯電しやすい。
・表面抵抗率ρS:1×105~1×1011[Ω/sq.]
・静電気導電性材料と静電気絶縁性材料の中間の材料であり、帯電しにくく、かつ静電気を比較的速やかに消散することができる材料です。
そのため、静電気対策に最適な表面抵抗率ρSは静電気拡散性材料の1×105~1×1011[Ω/sq.]となります。
このように、『IEC 61350-5-1』上では表面抵抗率ρSの値で材料の分類がされていますが、国内のサイトや海外のサイトを参考にすると、各材料の表面抵抗率ρSの値がバラバラになっています。また、上記の材料名以外にも帯電防止などの用語も使用されています。まとめると下図のようになり、重なりが生じている部分が多くあることが分かります。そのため、迷った場合には『IEC 61350-5-1』で分類されている表面抵抗率ρSを参考にするのが良いと思います。
補足
- 表面抵抗値は英語では「Surface Resistance」と書きます。
- 表面抵抗率は英語では「Surface Resistivity」と書きます。
- IECとは国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)のことです。電気工学や電子工学分野の国際規格の作成を行う国際的な標準化機関です。
静電気導電性材料
静電気導電性材料のメリットとデメリットは以下のようになっています。
メリット
- 摩擦や剥離などによって帯電しにくいため、静電気の発生源にはなりにくい。
- 帯電しにくいため、ほこりが付着しにくい。
デメリット
- 表面抵抗率ρSが低いので、帯電した物体が接触する際には、電荷の移動速度が大きく、激しいESD(静電気放電)が起きる場合がある。
静電気絶縁性材料
静電気絶縁性材料のメリットとデメリットは以下のようになっています。
メリット
- 表面抵抗率ρSが高いため、帯電した物体が接触しても、電荷の移動速度は小さく、ESD(静電気放電)が生じない。
デメリット
- 摩擦や剥離などによって容易に帯電するため、静電気の発生源となる。
静電気拡散性材料
ESD対策材料として推奨される静電気拡散性材料のメリットとデメリットは以下のようになっています。
メリット
- 帯電した物体が接触しても、激しいESD(静電気放電)が生じない。
- 帯電しても比較的速やかに消散させることができる。
- 帯電しにくい。
デメリット
- 静電場を遮蔽できるほどの導電性は持たない。
静電気導電性材料を使用する際の注意点
静電気を撲滅するためには、表面抵抗率ρSの低い導電性のものを使用した方が良いです。しかし、導電性のものを使用するときには以下の注意が必要となります。
- 表面抵抗率ρSが低いため、帯電した物体との接触時にESD(静電気放電)のリスクが高くなる。
- バッテリーを実装した回路においては、短絡することによって漏電するリスクがある。
- 高電圧部分に触れた場合、感電のリスクがある。
まとめ
この記事では静電気対策に最適な『表面抵抗率』について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- 静電気対策に最適な『表面抵抗率(表面抵抗値)』
- 『静電気導電性材料』について
- 『静電気絶縁性材料』について
- 『静電気拡散性材料』について
お読み頂きありがとうございました。
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