この記事では、バイポーラトランジスタの絶対最大定格に記載されているコレクタ損失PCについて説明します。
バイポーラトランジスタの『コレクタ損失PC』について!
コレクタ損失は、コレクタ電流ICとコレクタエミッタ間電圧VCEによる損失です。絶対最大定格に記載されているコレクタ損失PCは、そのトランジスタが許容できるコレクタ損失の最大値となります。
最大コレクタ損失PCは、周囲温度Ta=25℃を基準にしているため、Ta=25℃よりも高温の場合は値が低下します。データシートにはそれを示す「PC-Ta特性(電力軽減曲線)」が記載されています。
上図は東芝製バイポーラトランジスタ(2SC1815)の絶対最大定格と「PC-Ta特性」です。周囲温度Taが25℃の時の最大コレクタ損失PCは400mWですが、25℃よりも高温になると、最大コレクタ損失PCが低下していることが確認できます。例えば、周囲温度が75℃の場合には、最大コレクタ損失PCが200mWと半分になってしまいます。
そのため、周囲温度Taに合わせて、最大コレクタ損失PCを軽減する必要があります。
なお、絶対最大定格は以下の記事に記載していますので参考にしてください。
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補足
- 絶対最大定格に記載されているコレクタ損失は、最大コレクタ損失、コレクタ許容損失、許容コレクタ損失などと呼ばれることがあります。
- トランジスタの損失は、コレクタ電流ICとコレクタエミッタ間電圧VCEによる損失の他にベース電流IBとベースエミッタ間電圧VBEによる損失があります。ベース電流IBはコレクタ電流ICと比べると非常に小さいため、ベース電流IBとベースエミッタ間電圧VBEによる損失は通常、無視しています。
放熱器がある場合の『コレクタ損失PC』について!
上図は東芝製バイポーラトランジスタ(TTC3710B)の絶対最大定格と「PC-Ta特性(電力軽減曲線)」です。
中電力や大電力用のトランジスタは、放熱器(ヒートシンク)を付けて使うことが一般的であり、規定の放熱器を取り付けた場合の最大コレクタ損失(Tc=25℃:ケース温度が25℃ということ)と放熱器を取り付けない場合の最大コレクタ損失(Ta=25℃:周囲温度が25℃)の2つが規定されていることが多いです。
上記の規定の放熱器は、通常、無限大放熱板(放熱能力を無限大と考えることができる放熱器)を考えています。そのため、ケース温度Tcが周囲温度Taと等しくなり、「Tc=25℃」と記載されています。
しかし、放熱能力が無限大の放熱器などは存在しないため、実際はケース温度Tcは25℃を超えてしまいます。そのため、規定の放熱器(無限大放熱板)を取り付けた場合の最大コレクタ損失PCまで使用することはできないので注意してください。
まとめ
この記事ではバイポーラトランジスタの絶対最大定格に記載されているコレクタ損失について、以下の内容を説明しました。
当記事のまとめ
- バイポーラトランジスタの『コレクタ損失』とは
- バイポーラトランジスタの放熱器がある場合の『コレクタ損失』について
お読み頂きありがとうございました。
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