ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)とは?『VBE(sat)-IC特性』などを解説!

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この記事ではベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)VBE(sat)-IC特性について詳しく説明します。

ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)とは?

ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)とは?
バイポーラトランジスタのパラメータの1つにベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)というものがあります。

ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)とは、バイポーラトランジスタがオンの状態(飽和状態)におけるベースエミッタ間の電圧のことを指します。

もう少し詳しく!

ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)のデータシート
もう少し詳しく説明すると、バイポーラトランジスタが完全にオンの状態の動作条件となるように、ベース電流IBコレクタ電流ICを流します。

上図は東芝製バイポーラトランジスタ(2SC1815)の電気的特性です。赤色の箇所がベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)となっています。ベース電流IB=10mAコレクタ電流IC=100mAの時におけるベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)が記載されており、2SC1815は最大1.0Vとなっています。

上記の測定条件は、ベース電流IB=10mAコレクタ電流IC=100mAとなっており、コレクタ電流ICの1/10のベース電流IBを流しています。このベース電流IBの値は半導体メーカによって異なりますが、コレクタ電流ICの1/10または1/20を流しているものが多いです。

また、直流電流増幅率hFEは通常、数十~数百なので、このベース電流IBは過剰な電流となります。例えば、直流電流増幅率hFEが100の場合を考えてみると、ベース電流IBが10mAならコレクタ電流ICはそのhFE倍で1000mA流せることになります。逆に、コレクタ電流ICを100mA流すのに必要なベース電流IBはその1/hFE倍で1mAということになります。

繰り返しになりますが、ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)は、バイポーラトランジスタをスイッチとして使用した時において、オンの状態におけるベースエミッタ間電圧VBEとなります。

そのため、コレクタ電流ICを100mA流すためには、ベース電流IBはその1/hFE倍で1mAが必要となりますが、バイポーラトランジスタをしっかりオンするためには、1mAより多くの電流を流す必要があります。このように必要以上にベース電流IBを流すことをオーバードライブと言います。

したがって、ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)の測定においては、必要以上のベース電流IBを流しているのです。

補足

  • VBE(sat)の『sat』は『saturation』の略です。つまり飽和の意味となります。
  • ベースエミッタ間飽和電圧は英語では、『Base to Emitter Saturation Voltage』と書きます。
  • ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)は小さいほど、電力損失が少なくなります。そのため、ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)はどちらかといえば小さい方が良いです。
  • オーバードライブの度合いは、オーバードライブ係数KOV(KOVIC/IB)で定義されます。コレクタ電流ICを100mA流すときにベース電流IBを10mA流せば、オーバードライブ係数KOVは10となります。

ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)は設計上いつ用いるのか?

ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)は設計上いつ用いるのか?
ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)はベース電流の設計をする際に必要となります。

例えば、上図の回路において、コレクタ電流IC=100mAを流す場合を考えてみます。オーバードライブ係数KOVを10とすると、必要なベース電流IBは10mAとなります。

ここで、駆動電源VBBを5Vとすると、必要なベース抵抗RBの値は
\begin{eqnarray}
R_{B}=\frac{V_{BB}-V_{BE(sat)}}{I_B}=\frac{5{\mathrm{[V]}}-1{\mathrm{[V]}}}{10{\mathrm{[mA]}}}=400Ω
\end{eqnarray}
と求めることができます。このベース抵抗RBより小さい値にすることで、ベース電流IBは10mA以上流れるようになります。

バイポーラトランジスタの『VBE(sat)-IC特性』について

バイポーラトランジスタの『VBE(sat)-IC特性』について
上図に東芝製2SC1815の『VBE(sat)-IC特性』を示しています。

横軸がコレクタ電流IC、縦軸がベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)となっています。ベース電流IBの条件は青色の箇所であり、

  • IC/IB=10
  • ⇔IB=IC/10

となりますので、横軸のコレクタ電流ICの10分の1の電流をベースに流すということになります。

また、周囲温度Taのパラメータの条件はオレンジ色の箇所であり、

  • Ta=25℃

となっています。

VBE(sat)-IC特性』より、コレクタ電流ICが大きくなると、ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)が大きくなることが分かります。

また、上図の東芝製2SC1815の『VBE(sat)-IC特性』にはないのですが、例えば、下図のように温度がパラメータとなっている『VBE(sat)-IC特性』もあります。温度が上がるほど、『VBE(sat)-IC特性』が下にシフトしていることが分かります。すなわち、温度が上がるほど、ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)が小さくなります。

バイポーラトランジスタの『VBE(sat)-IC特性』について(温度がパラメータ)

まとめ

この記事ではバイポーラトランジスタの『ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)』について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • バイポーラトランジスタの『ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)』とは
  • バイポーラトランジスタの『ベースエミッタ間飽和電圧VBE(sat)』の値
  • バイポーラトランジスタの『VBE(sat)-IC特性』について

お読み頂きありがとうございました。

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