コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)とは?『VCE(sat)-IC特性』などを解説!

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この記事ではコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)VCE(sat)-IC特性について詳しく説明します。

コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)とは?

コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)とは?
バイポーラトランジスタのパラメータの1つにコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)というものがあります。

コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)とは、トランジスタがオンの状態におけるコレクタエミッタ間の電圧のことを指します。

もう少し詳しく説明すると、バイポーラトランジスタはベース電流IBを流すと、hFE倍のコレクタ電流ICが流れます。

そこで、上図の回路において、ベース電流IB大きくすると、コレクタ電流IC大きくなります。コレクタ電流IC大きくなると、抵抗RCでの電圧降下(RC×IC)が大きくなり、コレクタエミッタ間電圧VCE小さくなります。

すなわち、ベース電流IB大きくすると、コレクタエミッタ間電圧VCE小さくなるということです。

しかし、コレクタエミッタ間電圧VCEは完全には0Vにならず、微妙に電圧が残ってしまいます。この電圧のことをコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)といいます。

補足

  • VCE(sat)の『sat』は『saturation』の略です。つまり飽和の意味となります。
  • コレクタエミッタ間飽和電圧はコレクタ飽和電圧と呼ばれることがあります。
  • コレクタエミッタ間飽和電圧は英語では、『Collector to Emitter Saturation Voltage』と書きます。
  • バイポーラトランジスタをスイッチとして使う場合、オン状態における導通損失PLOSSは「PLOSS=VCE(sat)×IC」となります。そのため、コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)が大きいと、導通損失PLOSSが大きくなります。特に、大電力動作(ICが大きい時の動作)では損失が大きくなり、発熱の要因となるので注意してください。

コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)の値

コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)の値
コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)はバイポーラトランジスタによって変わります。データシートを確認してください。

上図は東芝製バイポーラトランジスタ(2SC1815)の電気的特性です。赤色の箇所がコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)となっています。ベース電流IB=10mAコレクタ電流IC=100mAの時におけるコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)が記載されており、2SC1815は標準0.1V、最大0.25Vとなっています。

コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)の値(ダーリントントランジスタ)

コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)の値(ダーリントントランジスタ)

ダーリントントランジスタでは、2段目のバイポーラトランジスタのベースエミッタ間電圧VBE2が加わるため、コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)が大きくなります。

上図はローム製バイポーラトランジスタ(2SD2142) の電気的特性です。赤色の箇所がコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)となっています。ベース電流IB=0.1mAコレクタ電流IC=100mAの時におけるコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)が記載されており、2SD2142は最大1.5Vとなっています。

バイポーラトランジスタの『VCE(sat)-IC特性』について

『VCE(sat)-IC特性』には、『IC/IBを一定にして、温度をパラメータとしている特性』『温度を一定にして、IC/IBをパラメータとしている特性』があります。各特性について説明します。

温度がパラメータの『VCE(sat)-IC特性』

温度がパラメータの『VCE(sat)-IC特性』
上図に東芝製2SC1815の『VCE(sat)-IC特性』を示しています。

横軸がコレクタ電流IC、縦軸がコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)となっています。ベース電流IBの条件は青色の箇所であり、

  • IC/IB=10
  • ⇔IB=IC/10

となりますので、横軸のコレクタ電流ICの10分の1の電流をベースに流すということになります。

また、周囲温度Taのパラメータが

  • Ta=-25℃
  • Ta=25℃
  • Ta=100℃

の3つあります。

温度が上がるほど、『VCE(sat)-IC特性』が上にシフトしていることが分かります。すなわち、温度が上がるほど、コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)が大きくなるため、導通損失PLOSS(PLOSS=VCE(sat)×IC)が増加します。

IC/IBがパラメータの『VCE(sat)-IC特性』

ベース電流IBがパラメータの『VCE(sat)-IC特性』
上図にローム製の2SCR523の『VCE(sat)-IC特性』を示しています。

横軸がコレクタ電流IC、縦軸がコレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)となっています。温度がの条件はオレンジ色の箇所であり、

  • Ta=-25℃

となっています。

また、IC/IBのパラメータが

  • IC/IB=10/1=20
  • ⇔IB=IC/10

  • IC/IB=20/1=20
  • ⇔IB=IC/20

の2つあります。「IC/IB=10/1」は横軸のコレクタ電流ICの10分の1の電流をベースに流すということ、「IC/IB=20/1」は横軸のコレクタ電流ICの20分の1の電流をベースに流すということを意味しています。

IC/IB=10/1」の方がグラフが下にあることが分かります。すなわち、ベース電流IBが大きい方が、コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)が小さくなるということになります。

まとめ

この記事ではバイポーラトランジスタの『コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)』について、以下の内容を説明しました。

当記事のまとめ

  • バイポーラトランジスタの『コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)』とは
  • バイポーラトランジスタの『コレクタエミッタ間飽和電圧VCE(sat)』の値
  • バイポーラトランジスタの『VCE(sat)-IC特性』について

お読み頂きありがとうございました。

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