電気設計で用いる電線(ケーブル)。この電線には太さを表す単位があるのをご存知でしょうか。
日本ではSQという単位を用いており、アメリカではAWGという単位が用いられています。
普段何気なく使っているSQとAWGですが、詳しく知らなかったので、海外のサイトなどあらゆる情報源を調べて分かったことをまとめました。
この記事では「AWGとSQの一覧表」,「SQとAWGの違い」など電線の単位に関する情報を詳しく紹介します。
電線の導体部分の太さ・AWG・SQの一覧表
まず最初にAWGとSQの一覧表を下に示します。
後ほどAWGとSQについて詳しく説明しますが、例えば、24行目の箇所にある20AWGは、電線の導体部分の太さが0.0320[inch](=0.8118[mm])であり、断面積が0.5176[mm^2](≒0.5SQ)ということを示しています。
【AWG】アメリカで用いられる電線の導体の太さの単位
AWGとはアメリカで用いられる電線部分の導体の太さの単位です。
American Wire Gauge(米国標準ワイヤゲージ)の頭文字を取って、AWGと呼ばれています。
AWGは電線の導体部分の直径を特定の割合で刻んで、番号をつけています(例えば、"24AWG"など)。「電線の導体部分の直径」とAWGの番号」の関係ですが、少し複雑です。導体部分の直径が0.4600[inch](=11.68[mm])のものを4/0AWG(0000AWG)、導体部分の直径が0.0050[inch](=0.1270[mm])のものを36AWGとし、その間を等比数列的に分割しています。等比数列の倍率ですが、各番号間は約1.12倍となっています。
また、AWGは数字が小さいほど電線の導体部分が太くなります。20AWGは0.0320[inch](=0.8118[mm])であり、1AWGは0.2893[inch](=7.343[mm])となっていますね。1AWGより太い電線については、0の個数で番号を示しています。例えば、3/0AWG(000AWG)は0.4096[inch](=10.40[mm])、4/0AWG(0000AWG)は0.4600[inch](=11.68[mm])となります。
なお、AWGはUL規格(Underwriters Laboratories Inc.)として認定されています。
補足
- AWGは数字が小さいほど電線の導体部分が太くなる理由ですが、導体部分(銅線)の製造工程では穴から銅線を引き出して細くしていきます。AWGはこの工程のステップ数を表しており、AWGの番号が大きいほど、このステップを多く繰り返しているので、銅線が細くなります。
- AWGはゲージと呼ばれることが多いです。
- 電線をよーく見てみると、以下のような感じで24AWGとか14AWGなど書いてあります。また、"AWG #24"の形式で書かれている場合もあります。
【SQ】日本で用いられる電線部分の導体の太さの単位
SQとは日本で用いられる電線部分の導体の太さの単位です。
SQは電線の断面積(mm2:平方ミリメートル)の単位を意味しています。「mm2」は英語では「Square mm: スクエア ミリメートル」と読みます。SQはこの「Square mm」が語源となっています。
一般的には0.2SQと0.5SQの2種類が定番となっています。なお、0.2SQだからといって電線の断面積が完全に0.2[mm2]というわけではありません。約0.2[mm2]であるということです。
AWGとSQの関係ですが、例えば、24AWGは導体部分の直径が0.201[inch](=0.5106[mm])となるので、断面積は0.205[mm2](≒0.2SQ)となります。そのため、「24AWG」は0.2SQに対応しています。また、20AWGは導体部分の直径が0.320[inch](=0.8118[mm])となるので、断面積は0.5174[mm2](≒0.5SQ)となります。そのため、「20AWG」は0.5SQに対応しています。
また、SQはスケアやスケと呼ばれています。SQは断面積を表すので数字が大きいほど太くなり、太くなるほど流せる電流の量が大きくなります。
なお、SQはJIS規格(Japanese Industrial Standards)として認定されています。
AWGとSQの違い
冒頭に示した表からも分かると思いますが、一番の違いはAWGは数値が大きくなればなるほど細くなり、SQは数値が大きくなればなるほど太くなる点です。
許容電流量の求め方
電線が太いほど多くの電流を流すことができます。しかし許容電流量は、電線の太さだけで決まっているのではなく、電線の種類によっても変わります。詳しい内容は今後追加します。
AWGからinch・mmの変換方法
AWGをinchやmmに変換するには以下の式を使います。
inch=0.005×92^{\left(\displaystyle\frac{36-AWG}{39}\right)}\\
mm=0.127×92^{\left(\displaystyle\frac{36-AWG}{39}\right)}
\end{eqnarray}
例えば、"20AWG"をinchやmmに変換したい場合には、上の式のAWGに20を代入すると求めることができます。試しに、AWGに20を代入すると、
\begin{eqnarray}
inch=0.005×92^{\left(\displaystyle\frac{36-20}{39}\right)}=0.3196[inch]
\end{eqnarray}
のようになり、約0.320[inch]となっていることが確認できます。
なお、AWGをinchに変換するときの式の乗数が0.005で、mmに変換するときの式の乗数が0.127になっているのは、単純に1[inch]が25.4[mm]だからです。0.05[inch]に25.4を掛けると0.127[mm]となりますね。
ここで、AWGをinch・mmに変換する式に2/0(00)、3/0(000)、4/0(0000)を代入することができないのでは?と思う方がいるかもしれませんが、「2/0では”-1”、3/0では”-2”、4/0では”-3”」を代入してみてください。そうすれば変換することができます。
電線の太さと抵抗の関係式
では次に、電線の導体抵抗 (resistance) を求めてみましょう。高校で習う以下の式から導出することが可能です。
R=\rho×\frac{l}{S}
\end{eqnarray}
- \({\rho}\):抵抗率
- \(l\):導体の長さ(m)
- \(S\):導体断面積(mm2)
上式を少し変形させます。JIS 3001-0981(電気用銅材の電気抵抗)より、標準軟銅は20℃において体積抵抗率(体積固有抵抗)は1/58と決まっています。そのため、上の式を少し変形させると、以下の式となります。
R&=&\rho×\frac{l}{S}
&=&\rho×\frac{4×l}{\pi×d^2}
&=&\frac{4×l}{58×\sigma×\pi×d^2}
\end{eqnarray}
- \(R\):20℃における導体抵抗(Ω)
- \(d\):電線の導体部分の直径(mm2)
- \({\sigma}\):導体の導電率 (軟銅の場合は”1.0”)
ここで、20AWGの1m当たりの抵抗値[Ω/m]を求めてみましょう。20AWGの直径は0.8118[mm]なので、使用している導体部分の材料が軟銅(導電率\({\sigma}\):1.0)の場合、抵抗値[Ω/m]は以下のようになります。
\begin{eqnarray}
R=\frac{4×l}{58×\sigma×\pi×d^2}=\frac{4×1}{58×1.0×\pi×0.8118^2}=0.3331[Ω/m]
\end{eqnarray}
この記事の冒頭に示した表の抵抗値[Ω/m]を見ると、20AWGの抵抗値は0.3331[Ω/m]になっていることが確認できますね。
また、電線の導体部分のほとんどは軟銅となっています。そのため、電線の導体抵抗を計算する際においては、軟銅の導電率を1.0として考えるのが一般的です。その他の材料に対する導電率は軟銅の導電率を1.0とすると、以下の表のようになります。
材料 | 導電率 | 材料 | 導電率 |
軟銅 | 1.0 | 硬銅 | 0.97 |
錫 | 0.15 | 鉛 | 0.078 |
銀 | 1.05 | アルミニウム | 0.61 |
鉄 | 0.17 |
電線で生じる電圧降下に注意
回路設計においては、電線の導体抵抗による電圧降下を考慮して設計することが重要です。
例えば、5Vを出力する電源と負荷の間に20AWGの電線が1mあるとします。この条件において、負荷に流れる電流が5Aの場合、
\begin{eqnarray}
5×0.3331=0.166[V]
\end{eqnarray}
の電圧降下が電線の導体抵抗で生じるため、負荷にかかる電圧は5.00-0.166=4.834[V]となってしまいます。電源が安定した電圧を出力しているのに、導線の長さと負荷に流れる電流量によって、負荷にかかる電圧が変わってしまうのです。この電圧降下を考慮して回路を設計する必要性があります。
まとめ
この記事では電線(ケーブル)の導体部分の太さを表す単位であるAWGとSQについて説明しました。
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