積層セラミックコンデンサを実装している基板から「ジー」という音(音鳴き)が聞こえることがあります。
なぜ、積層セラミックコンデンサから音鳴きが発生するのでしょうか。
この記事では、積層セラミックコンデンサの音鳴きの『原因』・『原理』・『対策』などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
積層セラミックコンデンサの音鳴き
高誘電率系の積層セラミックコンデンサは、電圧が印加されると誘電体が変形する(歪む)という特性を持っています。そのため、交流電圧を印加すると、誘電体が伸び縮みします。
この特性によって、積層セラミックコンデンサに交流電圧を印加すると、「ジー」・「キー」・「ピー」といった音(音鳴き)が聞こえる可能性があります。
音鳴きが発生する原理は下記となります。
音鳴きが発生する原理
- 積層セラミックコンデンサに交流電圧を印加すると、積層セラミックコンデンサが伸び縮みする。
- 積層セラミックコンデンサの伸び縮みによって、実装している基板が振動する。
- 基板の振動周波数が人間の可聴周波数帯域(20Hz~20kHz)の時、音鳴きが発生する。
音鳴きの読み方
音鳴きの読み方は「おとなき」と「ねなき」どちらでも構いません。電気業界では「おとなき」と呼んでいる方が多いと思います。
補足
- 基板の振幅は1pm~1nm程度と非常に小さいですが、音としては十分な大きさに聞こえます。
- コンデンサ単体では音はほとんど聞こえません。コンデンサを基板に実装することによって、基板に振動が伝達し、増幅されて音が大きくなり、聞こえるようになります。
- 積層セラミックコンデンサの伸縮によって、電極部で半田クラックが発生する可能性があります。
音鳴きによる信頼性の影響
高誘電率系の積層セラミックコンデンサは、「電圧が印加されると誘電体が変形する特性がある」と説明しました。この特性は『圧電効果』と逆の現象であり、逆圧電効果とも呼ばれています。
積層セラミックコンデンサの振動は1pm~1nm程度の非常に小さな振動です。これに対して、圧電ブザーや圧電スピーカ等の圧電効果を利用している製品では、その何十倍もの振動を利用しています。そのため、積層セラミックコンデンサの振動は信頼性上の問題はないものと考えられています。
音鳴きの対策
積層セラミックコンデンサの音鳴きの対策方法をいくつか説明します。
メタルフレームタイプの積層セラミックコンデンサを用いる
チップの電極に金属端子が接合されているメタルフレームタイプの積層セラミックコンデンサを用いることで、音鳴きを改善することができます。メタルフレームが積層セラミックコンデンサの振動を吸収しています。
電極間の長さが短い積層セラミックコンデンサを用いる
通常、積層セラミックコンデンサは長さLが幅Wよりも長くなっています。そこで、電極間の長さLが短い積層セラミックコンデンサを用いることで、交流電圧印可時の変形量を低減し、基板への振動を抑えることができます。
インターポーザ付の積層セラミックコンデンサを用いる
インターポーザとは「部品のサイズに合わせて成型されたプリント基板の一種」です。インターポーザ付き積層セラミックコンデンサを用いることで、音鳴きを低減させることができます。
積層セラミックコンデンサを上下対称に配置する
積層セラミックコンデンサを上下対称に配置すると、コンデンサに交流電圧が印加された時に生じる振動を互いに打ち消し合います。そのため、振動が緩和され、音鳴きを低減させることができます。
補足
その他の対策としては、「そもそも変形量が少ない誘電体を用いた積層セラミックコンデンサを採用する」等があります。
まとめ
この記事では『セラミックコンデンサの音鳴き』について、以下の内容を説明しました。
- セラミックコンデンサの音鳴きの『原因』・『原理』・『対策』
お読み頂きありがとうございました。
当サイトでは電気に関する様々な情報を記載しています。当サイトの全記事一覧は以下のボタンから移動することができます。